歩数計や活動量計の活用はあらゆる年齢の人に勧められる 高齢者の介護予防にも有用 身体活動が増え座位行動は減る

2024年03月26日

 ウォーキングの歩数や、家事やデスクワークなど、さまざまな身体活動を測定できる活動量計を持ち歩くことは、身体活動量を増やすのに効果的であることが明らかになっている。

 活動量計や歩数計は、リーズナブルな価格で売られており、手軽に入手できる。そうしたデバイスを利用する習慣は、体重を減らし、2型糖尿病や高血圧、脂質異常症を改善し、さらにはうつ病などのメンタルヘルス不調などの予防にも有用であることが示されている。

 日本の要支援高齢者を対象とした研究でも、活動量計を用いたセルフモニタリング介入が、歩数・座位行動・軽強度活動といった身体活動を改善するのに有用であることが確かめられた。

 「歩数計や活動量計を持ち歩き、チェックする習慣は、あらゆる年齢層で長期間にわたり、運動量を増やすのに役立つと期待されます」と、研究者は述べている。

活動量計やスマホで歩数を数える人は増えている

 歩数計や活動量計、スマホなどでウォーキングの歩数を記録している人は増えている。オーストラリアのシドニー大学による調査では、成人の24%が活動量計を利用し、23%がスマートウォッチを利用していることが示された。

 「活動量計などのデバイスを利用すると、たとえば電車に乗るために小走りをしたり、通勤時に歩いたときなどの、短時間の身体活動も記録できます」と、同大学で運動療法について研究しているエマニュエル スタマタキス教授は言う。

 「身体活動量が少ない人は、糖尿病や肥満、心臓病などのリスクが高まります。そうした病気を発症すると、活動的な能力がさらに低下するという悪循環におちいります」。

 「活動量計などを活用することで、運動や身体活動と健康との関係が、より正確に分かるようになります。こうしたウェアラブルデバイスを持ち歩いてもらい、運動ガイドラインについての情報を提供することで、人々が日常で運動をすることを促せると考えられます」としている。

活動量計を持ち歩く習慣は身体活動量を増やすのに効果的

 活動量計やスマートウォッチなどを持ち歩くことは、身体活動量を増やすのに効果的であるという研究を、南オーストラリア大学も発表している。

 研究グループは今回、身体活動を記録できるウェアラブルデバイスを使用した約400件の研究を解析した。世界中の約16万4,000人が対象となった。

 その結果、活動量計を持ち歩くことで、毎日のウォーキングの時間が最大で40分(約1,800歩)増え、その結果、5ヵ月間で体重が平均して1kg減少することが示された。

 活動量計や歩数計などは、利用しやすい価格で売られており、手軽に入手できる。そうしたデバイスを利用することで、身体活動を増やし、体重を減少できるのに加えて、2型糖尿病や高血圧、脂質異常症も改善でき、さらにはうつ病や不安症などのメンタルヘルス不調などの予防にもつながることが示された。

 「世界では、活動量計などの身体活動を記録できるウェアラブルデバイスの出荷量は、2014年?2020年に15倍に増え、2020年の支出額は4,150億円(28億ドル)にも達しました」と、同大学運動・栄養・活動研究センターのタイ ファーガソン氏は言う。

 「今回の研究で、活動量計を持ち歩くことは、あらゆる年齢層で長期間にわたり、運動量を増やすのに役立つことが分かりました」としている。

活動量計を用いたセルフモニタリング介入が
要支援高齢者の身体活動も改善

運動は介護予防に有用で健康関連QOLも高められる

 活動量計は、要介護リスクの高い高齢者の身体活動を高めるのにも有用であることが、日本の新しい研究で示された。

 加速度センサーが組みこまれた活動量計であれば、歩行(通常・ゆっくり・速歩)だけでなく、掃除や洗濯などの家事や、さまざまな身体活動の活動量も測定できる。

 神戸大学は、要支援高齢者を対象に、活動量計を用いたセルフモニタリング介入が、歩数・座位行動・軽強度活動といった身体活動を改善するのに有用であることを明らかにした。

 研究は、神戸大学大学院保健学研究科の北村匡大氏(令和健康科学大学リハビリテーション学部理学療法学科)、井澤和大准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「European Geriatric Medicine」に掲載された。

 「移動能力や活動性が低下している要支援高齢者にとって、セルフモニタリング介入による歩数促進は、理解しやすく、座位行動減少のために役立ち、高い身体機能も必要としません」と、研究者は述べている。

 「要支援」とは、日常の基本的な生活動作は自分で行えるけれど、負担の大きい動作を行うときは多少の支援が必要な状態。

 要支援の高齢者は、「フレイル」のリスクが高い。加齢により心身が老い衰えた状態であるフレイルは、健常な状態と介護が必要な状態の中間にある虚弱の状態をさす。

 運動不足は、2型糖尿病などの生活習慣病の発症や、死亡リスクを高め、心身機能・社会性・栄養の低下がともなうと、フレイルを進行させる。

 高齢化が急速に進む日本で、フレイルを予防し高齢者の自立的な生活を維持することは、社会全体の重要な課題となっている。

活動量計を用いたセルフモニタリングにより要支援高齢者の身体活動が改善
活動量計を用いたセルフモニタリングにより
歩数・軽強度活動が増加し、座位行動は減少

出典:神戸大学、2024年

 とくに身体機能が低下している要支援高齢者では、身体活動が低下することで健康リスクが高くなるため、身体活動の維持・改善に向けた方策は重要な課題となっている。

 そこで研究グループは今回、要支援高齢者を対象に検証をした。セルフモニタリングは、目標設定・自己管理・フィードバックで構成される行動変容技法のひとつであり、身体活動の促進や血糖値の調整に用いられている。

 活動量計を用いたセルフモニタリング介入は、身体活動を改善させる方策のひとつだが、要支援高齢者への有効性を検証した研究は今回がはじめて。

 その結果、セルフモニタリング介入したグループは、介入しなかったグループに比べて、歩数が1367.8歩から1682.7歩に増え、座位行動(分/日)が547.4分から523.3分に減り、軽強度活動(分/日)が276.6分から293.0分に増えるなど、身体活動の改善がみられ、要支援高齢者での有効性が示された。

 介入群(24例)へは5週間のフォローアップにより、(1) 活動量計、パンフレット、カレンダーを渡し、(2) 身体活動の教育を受けてもらい、(3) 歩数と座位行動の目標を設定し、(4) 歩数と座位行動時間をカレンダーに記載してもらい、(5) 週に1回のフィードバックを受けてもらった。

 対照群(23例)へは、(1) 活動量計、パンフレット、カレンダーを渡し、(2) 身体活動の教育を受けてもらったが、カレンダーの記録にもとづくフィードバックは行わなかった。

 「今後、活動量計を用いたセルフモニタリング介入が要支援高齢者の介護予防方略に組み込まれることで、要支援から要介護に移行する高齢者が減少することが期待されます」と、研究者は述べている。

Wearables will transform health, but change brings challenges say researchers (シドニー大学 2023年8月9日)
Potential impact of wearables on physical activity guidelines and interventions: opportunities and challenges (British Journal of Sports Medicine 2023年8月7日)
Wearing your fitness on your sleeve is great for the heart (南オーストラリア大学 2022年7月20日)
Effectiveness of wearable activity trackers to increase physical activity and improve health: a systematic review of systematic reviews and meta-analyses (Lancet Digital Health 2022年8月)

神戸大学大学院保健学研究科
Effects of self-monitoring using an accelerometer on physical activity of older people with long-term care insurance in Japan: a randomized controlled trial (European Geriatric Medicine 2024年2月14日)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所