子供の肥満傾向は成長してから肥満やメタボのリスクに スマホのスクリーンタイムが長い子供は高リスク

2024年02月27日

 テレビ・パソコン・ゲーム・スマートフォンなどの画面を視ている時間を示す「スクリーンタイム」の長い小・中学生の女子で、肥満が多いことを、新潟大学などが明らかにした。

 とくにスマートフォンのスクリーンタイムが3時間以上で、スマートフォン以外のスクリーンタイムが2時間以上の女子では、どちらにも該当しない女子に比べて、肥満リスクが7倍に上昇した。

 一方で、スクリーンタイムが長くとも、一定以上の身体活動や睡眠時間を確保できている子供は、肥満リスクを軽減できていることも示された。

 「運動・食事・睡眠時間などの生活習慣を同時に調査することで、十分な身体活動や睡眠時間を確保することで、肥満の可能性を低減できる可能性が示されました」と、研究者は述べている。

小児期に肥満傾向だった人は成人すると肥満やメタボに移行しやすい

 小児期に肥満傾向だった人は、成長して成人すると肥満に移行しやすく、2型糖尿病や高血圧などのリスクを高めることが知られている。小児期の食事・運動・睡眠などの生活スタイルは非常に重要となる。

 しかし、日本では小・中学生に対して、生活習慣調査を含めた詳細な健康診断が十分行われていない現状がある。

 そこで新潟大学は、新潟県阿賀野市と三条市との共同研究プロジェクトで、小・中学生を対象とした、身体活動や睡眠、食事などの生活スタイルの実態調査や、血液検査・血圧測定を含む健康診断を実施した。

 その結果、テレビ・パソコン・ゲーム・スマートフォンなどの画面を視ている時間を示す「スクリーンタイム」が長時間に及ぶと、とくに小学5年生〜中学2年生(10〜14歳)の女子で、小児肥満が増えることを明らかにした。

 スマートフォンのスクリーンタイムが3時間以上で、スマートフォン以外のスクリーンタイムが2時間以上の女子では、どちらにも該当しない女子に比べて、肥満を有するリスクが7倍に上昇することが判明した。

 一方で、一定以上の身体活動や睡眠時間を確保することで、肥満リスクを軽減できる可能性も示唆された。

 「子供の運動・食事・睡眠時間などの生活習慣を同時に調査することにより、十分な身体活動や睡眠時間を確保することで、肥満のリスクを低減できる可能性が示されました」と、研究者は述べている。

 研究は、新潟大学大学院医歯学総合研究科血液・内分泌・代謝内科分野研究室(主任:曽根博仁教授)によるもの。同大学大学院医歯学総合研究科の池田和泉氏、藤原和哉特任准教授らが最新の解析を行い、研究成果は国際学術誌「Endocrine Journal」にオンライン掲載された。

子供の肥満リスクは十分な身体活動や睡眠時間により軽減

 調査では、男子の14.5%、女子の9.9%が肥満と判定された。とくに女子では、各スクリーンタイムの最低カテゴリに比べ、▼全スクリーンタイム4時間以上5時間未満、▼スマートフォン3時間以上4時間未満、▼スマートフォン以外2時間以上のそれぞれの群で、肥満に3倍関連していた。

 さらに、スマートフォンとスマートフォン以外のスクリーンタイムを組み合わせた分析でも、女子では、両スクリーンタイムは相加的に肥満と関連するという結果になった。

 具体的には、▼スマートフォン3時間未満、かつ▼スマートフォン以外2時間未満群に比べて、▼スマートフォン3時間以上、あるいは▼スマートフォン以外2時間以上のいずれか片方、あるいは両方が該当すると、肥満のリスクは、それぞれ3倍、7倍に有意に増加した。

 さらに女子では、▼スクリーンタイム全体あるいはスマートフォンのスクリーンタイムが長いことと、▼身体活動が少ないか、睡眠時間の不足が重なると、肥満のリスクがさらに高まった。

 一方で、▼全スクリーンタイムが4時間以上5時間未満あるいはスマートフォンのスクリーンタイム2時間以上の場合は、1日の身体活動(運動や日常生活で身体を動かす時間)が60分以上あるいは睡眠時間が8.5時間以上を確保できていれば、肥満のリスクは上昇しなかった。

女子ではスクリーンタイムが長いと肥満リスクが上昇

スクリーンタイムが長い女子でも、身体活動が多かったり、睡眠時間が十分であると、肥満リスクは抑えられた

出典:新潟大学、2024年

新潟県の小学5年生〜中学2年生2,242人を調査

 これまでも、テレビ視聴やパソコン、ビデオゲームに費やす時間が長いことは、小児肥満と関連することが報告されているが、子供にも爆発的に普及しているスマートフォンに関する研究は少なかった。

 さらに日本では、小・中学生を対象とした、生活スタイルの調査を含む詳細な健康診断は行われておらず、スマートフォンなどのスクリーンタイムが小児肥満と関連しているかは十分に分かっていなかった。

 そこで研究グループは今回、2018〜2019年に新潟県阿賀野市および三条市の小中学校に通っていた小学5年生〜中学2年生2,242人(女子1,278人)を対象に、スマートフォンおよびスマートフォン以外のスクリーンタイムが肥満と関連するかを横断的に検討した。

 スクリーンタイム、睡眠時間などの生活習慣はアンケートで調査し、健康診断の身長と体重から、国際肥満タスクフォースの性別・月齢別カットオフ値を用い肥満傾向を判定した。

 身体活動量は国際標準化身体活動質問票(IPAQ)、食事摂取量は簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)15yにより、それぞれ調査した。

運動・食事・睡眠時間などの生活習慣を同時に調査

 「新潟大学の研究室と新潟県阿賀野市、三条市は、市民の健康寿命延伸を目的とした共同研究プロジェクトの一環として小中学生生活習慣病予防事業を実施しており、小学5年生〜中学2年生に対して、血液検査や血圧測定を含む健康診断や、身体活動や睡眠、食事などの生活習慣実態調査を実施してきました」と、研究者は述べている。

 「今回、スクリーンタイムと肥満に関する分析を行い、女子でスマートフォン、スマートフォン以外のいずれについても長時間のスクリーンタイムが肥満と関連することが判明しました。また、スマートフォンのスクリーンタイム3時間以上かつスマートフォン以外のスクリーンタイム2時間以上の女子では、どちらにも該当しない女子に比べ、肥満を有するリスクが約7倍高かったことが判明しました」。

 「しかし同時に、一定以上の身体活動や睡眠時間を確保することで、肥満リスクを軽減できる可能性も示唆されました。運動・食事・睡眠時間などの生活習慣を同時に調査することにより、十分な身体活動や睡眠時間を確保することで、肥満の可能性を低減できる可能性が示されました。これらの研究成果を、広く児童生徒の生活指導に活かしていく予定です」としている。

新潟大学大学院医歯学総合研究科 血液・内分泌・代謝内科分野研究室
Association between screen time, including that for smartphones, and overweight/obesity among children in Japan: NICE EVIDENCE Study 4 (Endocrine journal 2024年1月11日)


[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所