中年期に肥満・メタボがあると認知症リスクが上昇 "隠れメタボ"の人も内臓脂肪が増えすぎないよう対策を
中年期にメタボリックシンドロームがあると、年齢を重ねてから認知症を発症するリスクが高くなるおそれがあることが明らかになった。
体重はそれほど重くなく、"自分は肥満ではない"と思っている人がいるが、そうした人も実は内臓脂肪がたまっている"隠れメタボ"である可能性があるという。
「今回の研究で、そうした"隠れメタボ"の人も、50歳という若さで脳に異常な変化が起きていて、早期から認知機能が低下しやすいことが示されました」と、研究者は述べている。
中年期にメタボリックシンドロームがあると、年齢を重ねてから認知症を発症するリスクが高くなるおそれがあることが、米国のワシントン大学の研究で明らかになった。
内臓脂肪が増えることは、脳の炎症の増加に関連していることが、MRI検査により確かめられた。脳の異常な変化は、50歳と若いうちからすでにはじまっているという。研究は、北米放射線学会(RSNA)の年次総会で発表されたもの。
認知症は、なんらかの原因で脳が障害され、記憶力や判断力などの認知機能が低下することで引き起こされる。
代表的なアルツハイマー病は、初期の症状として記憶喪失があるが、内臓脂肪がたまりすぎると、その15年前から脳に異常な変化があらわれるという。
胃や腸などのまわりに内臓脂肪が多くたまるのが内臓脂肪型肥満。内臓脂肪からは、生理活性作用のある「アディポカイン」という物質が多く分泌される。
内臓脂肪の蓄積量が多くなると、アディポカインの分泌が異常になり、代謝障害や炎症が引き起こされやすくなることが知られている。
そうなると、高血圧・脂質異常・高血糖などが生じ、メタボリックシンドロームと呼ばれる、動脈硬化が進行しやすい状態になるリスクが高まる。
一般的に、男性は内臓脂肪がたまりやすいが、女性も閉経後は次第に内臓脂肪がつきやすくなる。
「体重はそれほど重くなく、"自分は肥満ではない"と思っている人がいますが、そうした人も実は内臓脂肪がたまっている"隠れメタボ"である可能性があります」と、同大学放射線研究所のマーサ ドラシャヒ氏は言う。
「今回の研究で、そうした"隠れメタボ"の人も、50歳という若さで脳に異常な変化が起きていて、早期から認知機能が低下しやすいことが示されました」。
「若いうちから、内臓脂肪が増えすぎないようにし、肥満に対策することが、年齢を重ねてから認知症や脳の炎症を予防するのに役立つ可能性があります」としている。
研究には、体格指数(BMI)の平均が32で肥満と判定された、40歳〜60歳の男女54人が参加した。
研究グループは、参加者の血糖値やインスリン値、耐糖能異常などを検査し、腹部のMRI検査により内臓脂肪と皮下脂肪の体積も測定した。脳のMRI検査により、アルツハイマー病の影響があらわれやすい脳の皮質の厚さなども測定した。
その結果、内臓脂肪が多い人ほど、脳内の炎症が増えやすい傾向が示された。そうした人は、アルツハイマー病の原因になるアミロイドの異常の初期段階に似た変化があらわれていた。
とくに、血糖値を下げるインスリンが働きにくくなったインスリン抵抗性があり、血糖値が上昇しやすくなっている肥満者では、代謝が正常な肥満者に比べて、脳の白質の体積が低くなっていた。
大脳白質が障害され進行すると、「歩行時のふらつき」「物忘れ」「口のもつれ」といった症状が起こりやすくなることが知られている。
3〜6ヵ月で現在の体重を3%減らすのを目標に
内臓脂肪は、体のエネルギーが不足したときに、素早くエネルギーに変換される脂肪で、たまりやすく減りやすい。
日本肥満症学会によると、内臓脂肪型肥満の人にはすぐに減量をはじめることが勧められるが、成功しやすいのは、3〜6ヵ月で現在の体重を3%減らすことを目標とした、ゆるやかな減量だという。
高度な肥満のある人は、5%から10%の体重減少が勧められ、実際に体重の減少が多いほど、高血圧や糖尿病、脂質異常症などのリスクは大きく低下することが示されている。
しかし、減量をはじめて、いったん成功して健康障害の改善がみられても、リバウンドしてふたたび体重が増えてしまう場合が少なくない。
3%の体重減少であれば、成功しやすく、健康的な体重を維持しやすくなる。体重をわずか3%減らしただけでも、血圧・血糖・コレステロールなどの値が改善することが分かっている。
ウォーキングや自転車こぎなど、エネルギーを消費しながら筋肉を増やすことのできる運動も勧められる。
筋肉を増やすと、エネルギーを消費しやすい体になるので、減量後に体重が戻ってしまうリバウンドを防ぎやすくなる。
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