肥満やメタボの解消に成功した人が共通して行っていること ダイエットは無駄にはならない 8項目の健康習慣
体重減少や体重管理に成功した人は、共通して行っていることがあることが、2万人以上を対象とした調査で明らかになった。
肥満や過体重のある人が、「減量プログラム」を取り組み、いったん体重を減らしてやせても、その後にリバウンドして、体重を増やしてしまうことが多い。
しかし、減量に取り組んだことは、決して無駄にはならない。減量後に体重が戻るパターンの人も、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクを減少する効果をえられることも示された。
体重減少や体重管理に成功した人は、共通して行っていることがあることが、2万人以上を対象とした調査で明らかになった。
体重減少や体重管理に成功した人に共通してみられることとして、▼食事の質が高い(良質なタンパク質をとっていて、血糖値を早く上げやすい精製された穀類や糖質の摂取は少ない)、▼運動を習慣として行っている、体を活発に動かしている、▼悪玉のLDLコレステロールの値が低い――といったことが挙げられた。
一方、体重管理が難しく肥満を解消できない人では、▼1〜2ヵ月の血糖値の平均を反映するHbA1c値が高め、▼睡眠時間が短いことなどが、とくに障害になっていることが示された。
高度の肥満のある人は、肥満症の治療薬による薬物療法などが必要になることもあるものの、肥満やメタボのある人の多くは、食事療法や運動療法に取り組み、体重を5%減らすことで、2型糖尿病や高血圧を予防・改善でき、心筋梗塞や脳卒中などの予防することが可能としている。
たとえば体重80kgの人では、体重の5%は4kg。わずかな減量で達成可能な目標であり、その効果は大きい。
「体重をわずか5%減らしただけでも、臨床的に有意な改善効果を期待できます。このことは、多くの人に希望をもたらします。5%の減量は、やる気をもって取り組めば、ほとんどの人は達成可能です」と、米オハイオ州立大学で臨床栄養学を研究しているコリーン スピース氏は言う。
研究グループは、米国国民健康栄養調査(NHANES)に参加した2万305人の米国成人のデータを分析した。
健診で血圧・コレステロール・血糖値などを測定するとともに、食事内容、身体活動、毎日の体重、睡眠時間、喫煙習慣、体重の変化についても調査した。
肥満や過体重のある人が、「減量プログラム」を取り組んだ結果、いったん体重を減らしてやせても、その後にリバウンドして、体重をある程度増やしてしまうことが多い。
しかし、減量に取り組んだことは、決して無駄にはならない。こうした減量後に体重が戻るパターンの人であっても、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクを減少する効果をえられることが、別の研究で示されている。
「過体重や肥満の悩みを抱える人々が体重管理に取り組むことは、2型糖尿病や心血管疾患のリスクを軽減するための効果的な方法であることは確かです。減量は無駄にはなりません」と、英オックスフォード大学プライマリケア健康科学科のスーザン ジェブ教授は言う。
体重管理に取り組んでいる患者や、肥満症や糖尿病の治療を行っている医師の多くは、いったん体重を減らしても、その後にリバウンドしてしまうことが多いので、減量の取り組みはあまり意味がないと考えてしまいがちだという。
「しかし、減量プログラムに参加して体重を減らすのに成功した人は、その後数年にわたり心血管疾患のリスクの減少効果を得られることが明らかになりました。体重管理に取り組むことは、長期的には無駄にはなりません」と、ジェブ教授は指摘している。
研究グループは、124件の国際的な科学的研究を評価し、集中的な減量行動プログラムの参加した患者と、プログラムに参加しなかった患者との、心血管疾患と2型糖尿病の危険因子を比較した。
対象となった参加者の数は5万人以上で、平均年齢は51歳で、体格指数(BMI)の平均は33で、多くは肥満と判定されていた。
その結果、プログラムの参加者は平均して体重を2〜5kg減らし、年間に0.12〜0.32kg減らした。
集中的な減量行動プログラムに参加した患者は、参加しなかった患者に比べ、体重をより減らし、心血管疾患や2型糖尿病の危険因子が減少したことが明らかになった。
さらに、プログラムが終了した後も、その効果は数年にわたり続くことも分かった。たとえば、1〜2ヵ月の血糖値の平均が反映されるHbA1c値は、1年後も5年後も0.26%低下していた。
米国心臓学会(AHA)は、健康的な生活スタイルを8項目にまとめた「ライフ エッセンシャル 8」を提唱している。食事や運動、体重管理など、8項目の生活スタイルが、すぐに取り組める生活改善の指南になるとしている。
野菜や果物などの植物性食品を十分に食べ、油の少ない肉、魚、大豆など、体に悪い脂肪が少なく、良質なタンパク質の含まれる食品を食べる。塩分を控え、糖質は全粒穀物からとるようにする。全粒穀物は精製されていない穀物で、食物繊維などが豊富に含まれる。
成人は週に150分以上のウォーキングなどの中強度の運動、あるいは筋トレなども組合わせた週に75分の活発な運動を行うことを推奨している。座ったまま過ごす時間が長引いたときは、それを中断し、立ち上がって体を動かすことも大切。
成人では体格指数(BMI)が18.5〜24.9であると、心血管の健康が良好になりやすい。肥満やメタボのある人は体重を減らすことで心血管疾患や2型糖尿病などのリスクを下げられる。低体重(やせ)にも注意が必要だ。
体格指数(BMI)は、簡単に計算でき、広く利用できる利点があるものの、それだけでは十分ではない。内臓脂肪(へその高さで計る腰回りの大きさ)を減らすことも含めて対策する必要がある。
血中脂質(コレステロールや中性脂肪)を適正にコントロールすることも大切。最近は、総コレステロールだけではなく、non-HDLコレステロール(総コレステロールから善玉のHDLコレステロールを引いたもの)も管理対象となっている。
血圧は、最高(収縮期)血圧は120mmHg未満、最低(拡張期)血圧80mmHg未満が最適。最高血圧130〜139mmHg、最低血圧80〜89mmHgであると、血圧は高めで、これまで通りの生活を続けていると高血圧へと移行しやすい。血圧が高い場合は、食事や運動などの生活習慣を見直す。
血糖値が高い状態が続いても、自覚症状がなかったり気付かない場合があるが、長期間放置していると心臓・腎臓・目・神経などに障害がでてくる。1〜2ヵ月の血糖値の平均を反映するHbA1cの値が目安になる。HbA1cは、長期的な血糖コントロールの指標にもなる。糖尿病のある人は、合併症を予防するために、HbA1c7.0%未満を維持することを目指す。
これまでは、可燃式タバコのみが危険とされていたが、新たに登場した電子タバコも健康にとって有害であることが分かってきた。タバコを吸う習慣のある人は禁煙を。受動喫煙も危険なので、なるべく避けるようにする。
質の良い睡眠をとることも大切。睡眠の質や時間が十分で、休息をとれていると、心筋梗塞や脳卒中のリスクが低下することが報告されている。1日の理想的な睡眠時間は、成人では7〜9時間。
米国心臓学会(AHA)が公開しているビデオ
Lifestyle changes, meds effective to prevent or delay Type 2 diabetes; no change in CVD (米国心臓学会 2022年5月23日)
Effects of Long-term Metformin and Lifestyle Interventions on Cardiovascular Events in the Diabetes Prevention Program and Its Outcome Study (Circulation 2022年5月23日)
Behavior patterns of people who achieve clinically significant weight loss (オハイオ州立大学 2023年5月2日)
Differences in Adherence to American Heart Association's Life's Essential 8, Diet Quality, and Weight Loss Strategies Between Those With and Without Recent Clinically Significant Weight Loss in a Nationally Representative Sample of US Adults (Journal of the American Heart Association 2023年4月7日)
ライフ エッセンシャル 8 (米国心臓学会)
マイ ライフ チェック (米国心臓学会)