厚労省「身体活動基準2023(仮称)」案で「座位行動」推奨値を提示 「健康づくりのための身体活動基準・指針の改訂に関する検討会」より
厚生労働省は、今年6月に「健康づくりのための身体活動基準・指針の改訂に関する検討会」を設置し、平成25(2013)年に策定した「健康づくりのための身体活動基準・指針2013(アクティブガイド)」の改訂に着手。
このほど開催された検討会で「身体活動基準2023(仮称)」が公表され、ライフステージ別の身体活動・運動の推奨値や「働く人が職場で活動的に過ごすためのポイント(案)」が示された。
今後、議論を重ね、基準・指針を決定して年度内に公表し、来年度からスタートする健康日本21(第三次)のアクションプランに反映させる方針となっている。
健康づくりのための身体活動・運動に関しては、平成18(2006)年に「運動基準」と「運動指針(エクササイズガイド)」を策定。平成25(2013)年には「身体活動基準」と「身体活動指針(アクティブガイド)」を策定し、健康づくりの運動基準・指針として生活習慣改善などの一翼を担ってきた。
身体活動量を評価するにあたり、2006年から身体活動の強さを表す単位として「メッツ=METs(metabolic equivalents)」を用いることとなった。座って安静にしている状態が1メッツ、普通歩行が3メッツに相当する。
身体活動の量については、メッツに活動時間(時)をかけた「メッツ・時」とし、「エクササイズ(exercise/Ex)」という単位を使用することとなった。
現在使用されている2013年度版では、身体活動基準を「18歳未満」「18〜64歳」「65歳以上」に分けて示している。
18歳から64歳の身体活動(生活活動・運動)の基準は、強度が3メッツ以上の身体活動を週23メッツ・時行うこととなっている。歩数に換算すると1日当たり約8,000〜10,000歩になる。
しかし、働き盛り世代であってもデスクワークをしている人たちにとって、「1日8,000歩」のハードルはなかなか高い。そこで厚労省では「健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)」を提唱し、年齢に関係なく、今よりも10分多く毎日体を動かすことを「プラス10(テン)」という言葉で呼びかけ、少しでも身体を動かすための具体的な方法を示して身体活動量を高めようと推し進めてきた。
しかしながら健康日本21(第二次)の最終評価をみると、1日の歩数は横ばい、もしくは減少傾向にあり、C評価の「変わらない」だった。
厚労省研究班の調査によると、エクササイズガイドおよびアクティブガイドの認知度は、当初は10%前後で、現在も15%程度であることがわかった。
特定保健指導などで働く人々を支援する産業保健スタッフからも、身体活動の指導時は「メッツといってもなかなかビンとこないので、『まずは今より10分多く歩いたり、動いたりすることから始めてみてください』とプラス10を使ってアドバイスをしている」という声も聞く。
身体活動基準・指針改訂にあたって、いかに認知度を上げ、普及啓発していくかも今後の大きな課題となっている。
検討会では、国民の身体活動や運動状況とこれまでの研究成果を踏まえ、「身体活動基準2023(仮称)」の改訂案を提示した。
今回の改訂では、ライフステージ別(①成人、②こども、③高齢者)の身体活動・運動の推奨値について、メタ解析等で一定のエビデンスがある情報を記載し、推奨値を示している。
特に2013年版からの大きな変更点は、「座位行動」を取り上げていることだ。
システマティック・レビューで、総座位時間の増加に伴い死亡リスクが増加すると報告されていること。30分以上連続する座位行動をできる限り頻繁に中断(ブレイク)することが心血管代謝疾患のリスクを低下させるとの報告があること。さらに2020年に公表されたWHO(世界保健機関)の「身体活動および座位行動に関するガイドライン」(2020年)でも、各年代における座位時間の減少や身体活動への置き換えを推奨しており、これらのエビデンスを集積して今回の改訂案では「座位行動」の推奨値を設定した。
今回の改訂案では、ライフステージ別の身体活動・運動の推奨値を提示したが、今後は働く人や生活習慣病を有する人を対象とした推奨値についても検討が予定されている。
また、「身体活動・運動に係る参考情報(案)として」下記8項目を整理して記載するとしている。この中には「働く人が職場で活動的に過ごすためのポイント」なども含まれており、今後の特定保健指導などにも有用な情報が具体的に提示されることを期待したい。
1. 身体活動基準の認知と身体活動
2. 筋力トレーニングについて
3. 働く人が職場で活動的に過ごすためのポイント
4. 身体活動・運動を安全に行うためのポイント
5. 身体活動による疾病等の発症予防・改善のメカニズム
6. 全身持久力(最大酸素摂取量)について
7. 身体活動支援環境について
※今後「8. 身体活動に関する適切な食事摂取について」検討予定
健康づくりのための身体活動基準・指針の改訂に関する検討会(厚生労働省)