ウォーキングの歩数を8000歩に増やして肥満や糖尿病に対策 横浜市「ウォーキングポイント事業」の成果を発表
1日に1万歩以上歩いている人は、糖尿病の発症リスクが62%、重症化リスクが67%低いことが、横浜市が実施している「ウォーキングポイント事業」で明らかになった。
「1日の平均歩数が8,000歩を超えるあたりから、2型糖尿病の発症率と重症化率に差が出てきました。現状の歩数よりも、1,000〜2,000歩を多く歩くようにすると、効果を期待できます」と、研究者は述べている。
横浜市は、市民の健康づくりと運動習慣の定着を促すため、「よこはまウォーキングポイント事業」を2014年から展開している。2023年時点で、36万人超が参加登録している。
同事業は、同市に在住・在勤・在学している人を対象に実施している。ウォーキングの歩数に応じてポイントが付与され、それに応じて商品券などが当たるというもの。
専用のスマートフォン向け歩数計アプリも提供している。アプリでは、横浜の魅力あるウォーキングコースを100以上紹介している。毎日の歩数に加えて、血圧・睡眠時間・体重などを記録し、数値をグラフでみることのできるマイページなども提供している。
この「ウォーキングポイント」に参加し、1日に1万歩以上歩いた人は、参加していない人に比べて、糖尿病の発症リスクが62%、重症化リスクが67%低いことが明らかになった。
これは、横浜市・横浜市立大学・日本電信電話・NTTデータ経営研究所が、事業に参加した人を対象に、生活習慣病・医療費・メタボリックシンドロームにどのような影響があらわれたかを分析したもの。
3者はデータ活用で市民生活をより便利にするため、「官民データ活用による超スマート社会の実現に関する包括連携協定」を締結している。
2型糖尿病の新規発症と重症化のリスクが
それぞれ大幅に低下した
調査では、横浜市国民健康保険に加入している人のうち、「ウォーキングポイント」に初年度(2014あるいは2015年度)に参加登録した8万6,171人と、参加登録しなかった100万3,763人を比較した。
主な結果は次の通り――。
■ 「ウォーキングポイント」に参加し、1日の平均歩数が1万歩以上だった群は、5年間の2型糖尿病の新規発症率は0.50%で、参加しなかった群に比べ0.81ポイント低くなった。「ウォーキングポイント」に参加することで、糖尿病の発症率が62%低くなった。
■ 「ウォーキングポイント」に参加し、1日の平均歩数が1万歩以上だった群は、糖尿病の重症化率は0.71%で、参加しなかった群に比べ1.42ポイント低くなった。「ウォーキングポイント」に参加することで、糖尿病の重症化率が67%低くなった。
■ 分析したところ、「ウォーキングポイント」に参加した群は、1日の平均歩数が8,000歩を超えるあたりから、参加しなかった群に比べ、糖尿病の新規発症率と重症化率が低くなることも分かった。
■ 2015年度に「ウォーキングポイント」に参加した群と、参加しなかった群を5年間追跡し、2020年度の医療費を比べたところ、参加者の医療費抑制額は、1人あたり年間に1万5,279円になった。参加群(9,826人)全体の総医療費は、参加しなかった群に比べ、年間に1.5億円低いという結果になった。
横浜市が公開している動画
「ウォーキングポイントに参加した人は、2型糖尿病の新規発症率と重症化率が低いことが分かりました。1日の平均歩数が8,000歩を超えるあたりから、発症率と重症化率に差が出てきました」と、研究者は述べている。
「国民健康・栄養調査によると、日本国民の平均歩数は、男性 6,793歩、女性 5,832歩です。現状の歩数よりも、1,000〜2,000歩を多く歩くようにすると、効果を期待できます」。
「ウォーキングポイントは、医療費の抑制にも一定の貢献をしている可能性もあります」としている。横浜市は、働き盛り世代に向けて、事業所単位の参加も呼びかけている。
横浜市は、「ウォーキングポイント」の参加と継続を促すために、「ENJOY WALKING 2023」キャンペーンを、9月1日〜12月31日に実施している。
まだアプリに参加していない友人や家族などにアプリを紹介すると、横浜中華街の商品券1,000円分が、抽選で25組50人にプレゼントする。1日の歩数を平均8,000歩まで増やした人には、血圧計や減塩レシピ本を抽選でプレゼントする。
アプリで参加している家族や友人、職場の仲間とチームを組んで、チームメンバーで励ましあいながら、1日平均8,000歩を目指すことなども呼びかけている。