肥満やメタボになりやすい生活習慣は子供のうちに身についている 子供の頃から保健指導が必要
子供の頃にテレビの視聴時間が長かった人は、成人すると、メタボリックシンドロームや肥満のリスクが高く、過食や運動不足の傾向もあることが、1,000人以上の小児を50年追跡して調査しているニュージーランドの研究で明らかになった。
「子供の頃の生活スタイルは、大人になっても引き継がれることが多いと考えられます。子供の頃から、食事や運動など、健康的な生活スタイルを身につけるべきです」と、研究者は指摘している。
子供の運動不足や食べすぎが増え、肥満になりやすくなっている原因は、テレビのコマーシャルにもあるという研究も発表されている。
海外では、午後9時以降は、栄養価の低い高カロリーのジャンクフードや清涼飲料のコマーシャルをテレビに流すのを制限することも検討されている。
子供の頃にテレビを見ている時間が長かった人は、成人してから肥満やメタボリックシンドロームになる可能性が高いことが、ニュージーランドのオタゴ大学の研究で明らかになった。
肥満やメタボは糖尿病、心臓病や脳卒中のリスクを高めることが知られている。
「子供の頃にテレビの視聴時間が長かった人は、成人してから、過体重や肥満のリスクが高く、心肺機能の低下しており、体力が低下している傾向もみられました」と、同大学の予防社会医学部のボブ ハンコックス教授は言う。
「子供や若者に、テレビの視聴時間を減らし、体を活発に動かすための介入を行えば、生涯にわたり健康増進の効果をえられる可能性があります」としている。
研究グループは、1972年〜1973年に生まれた1,000人以上の小児を50年追跡して調査している「ダニーデン研究」に参加した男女870人のデータを解析した。
その結果、5歳〜15歳のときにテレビをよく見ていた人は、45歳になった時点で、ウエスト周囲径が大きく、血糖値・中性脂肪値・コレステロールが高めで、メタボリックシンドロームのリスクが1.3倍に上昇することが明らかになった。
研究グループは、子供のテレビの視聴時間について、5歳・7歳・9歳・11歳・13歳・15歳の時点で調査した。平均すると平日は1日に2時間強、テレビを視聴していた。
テレビの長時間の視聴により、運動や身体活動の習慣化が妨げられ、過食が増え、睡眠の質も低下しやすくなるとみられている。
「テレビを視聴しているときは、体を動かさず、座ったり寝そべったままであることが多く、体のエネルギー消費量が少ないだけでなく、スナック菓子などの糖質や脂肪の多いジャンクフードを食べすぎて、エネルギー摂取量も多くなりがちです」と、ハンコックス教授は説明する。
「子供の頃の生活スタイルは、大人になっても引き継がれることが多いと考えられます。子供の頃から、食事や運動など、健康的な生活スタイルを身につけるべきです」としている。
現在の子供たちは、スマホやタブレット、スマートテレビ、パソコンなどのデジタルデバイスの普及により、エンターテイメントによりアクセスしやすくなっている。
「現在の子供たちは、スマホやテレビなどに見入っているスクリーンタイムがより長くなり、座って過ごす時間がより長くなっています」と、ハンコックス教授は指摘する。
「子供や十代の若者が、娯楽のためにスクリーンタイムを長くするのを抑制する対策が必要です」としている。
子供の運動不足や食べすぎが増え、肥満になりやすくなっている原因は、テレビのコマーシャルにもあるという英国の研究も発表されている。
テレビでは、脂肪・糖質・塩分を多く含む高カロリーのジャンクフードや清涼飲料のコマーシャルが垂れ流されている。そうしたテレビ広告を制限することで、小児の肥満を減少できる可能性があるとしている。
「テレビで不健康な食品や、高カロリーの食品の広告を流すのを、午後9時以降は制限すると、子供たちの将来の健康を守るのに貢献できる可能性があります」と、英ケンブリッジ大学でポピュレーション健康を研究しているオリバー ミットン氏は言う。
研究グループが、英国の370万人の子供を対象にシミュレートしたとこ、栄養価の低い高カロリーのジャンクフードや清涼飲料のコマーシャルをテレビに流すのを、子供がテレビを見ている時間帯に中止すると、5歳〜17歳の子供の肥満は4.6%減り、過体重の子供は3.6%減ることが示された。
これにより、1.3兆円(74億ポンド)の経済的負担を減らすことができるという。
「子供たちは現在、オンラインやオンデマンドのサービスなど、さまざまなメディアを利用しており、情報源は豊富にあります」と、ミットン氏は指摘する。
「すべての子供たちに健康に成長する機会を与えるために、健康増進に向けた行動変容を促す情報を増やす必要もあります。社会全体で取り組むべきことです」としている。
子供の肥満の増加は世界的な課題になっており、英国政府も2030年までに小児肥満を半減させるという目標を立てている。
英国政府は対策の一環として、午後9時から午前5時30分まで、栄養価の低い高カロリーのジャンクフードや清涼飲料のコマーシャルをテレビに流すのを制限することを検討しているという。
Link found between childhood television watching and adulthood metabolic syndrome (オタゴ大学 2023年7月24日)
Childhood and Adolescent Television Viewing and Metabolic Syndrome in Mid-Adulthood (Pediatrics 2023年7月24日)
Television advertising limits can reduce childhood obesity, study concludes (PLOS 2020年10月13日)
The potential health impact of restricting less-healthy food and beverage advertising on UK television between 05.30 and 21.00 hours: A modelling study (PLOS Medicine 2020年10月13日)