標準体重でも3分の1は実は「肥満」 BMIは健康状態をみる指標として不十分 やせていても安心できない

2023年08月04日

 体重と身長から算出される「体格指数 (BMI)」は、健康状態をみるための指標としては十分ではないという研究が発表された。

 「標準体重」であっても、内臓脂肪や体脂肪がたまっている人は多く、血糖値や、脂肪・コレステロールなどの値が高い傾向がみられるという。

 研究者は、体の体脂肪を簡単に測定できる、家庭用の体重体脂肪計を活用することを勧めている。上に乗るだけで、体脂肪や体組成を推定できるタイプの体脂肪計も出ている。

 「体重のみを量るよりも、体脂肪も同時に測り、その変動に注意を向け、増えている場合は、食事や運動の習慣を見直すことをお勧めします」としている。

BMIは健康状態をみる指標として不十分

 体重と身長から算出される「体格指数 (BMI)」は、肥満度の目安として、健診や診療などで広く利用されている。

 BMIは国際的な指標として用いられているが、日本の成人では、18.5〜25未満を「標準体重」、25以上を「肥満」、18.5未満を「低体重(やせ)」と判定する。

 そのBMIは、体重の増減を知るのに役立つが、健康状態をみるための指標としては十分ではないという研究を、イスラエのテルアビブ大学が発表した。

 「とくに血圧や脂質、血糖などの数値が高くなっている人は、血管や心臓などの健康の状態を全体的に知るために、内臓脂肪や体脂肪率にも注意を向ける必要があります」と、同大学公衆衛生学部のイフタッハ ゲプナー教授は言う。

 研究グループが、3,000人の成人の男女の計測データを解析したところ、およそ3分の1の人は「標準体重」と判定されたが、そのうち男性の27%と女性の39%は、内臓などに脂肪がたまっていて不健康であることが判明した。

標準体重でも内臓などに脂肪がたまっている人が多い

 さらに、「標準体重」であっても、内臓脂肪や体脂肪がたまっている人ほど、血糖値や、脂肪・コレステロールなどの値が高い傾向があることも分かった。

 そうした人は、2型糖尿病・高血圧・脂質異常症のリスクが高い。これらは心筋梗塞などの心血管代謝疾患の主要な危険因子になるとしている。

 「調査結果は予想したよりも深刻なものになりました。標準体重と判定された人のなかに、実は内臓などに脂肪がたまっている肥満タイプの人が多いことが明らかになりました」と、ゲプナー教授は言う。

 「そうした人は、健診などでは肥満と判定されないために、食事や運動などの生活スタイルを改善するための指導を受けられないでいる可能性があります。世界にはそうした健康リスクの高い人が多くいるとみられます」としている。

 内臓脂肪がたまっていることだけが、問題になるわけではない。「皮下脂肪」「内臓脂肪」に続く3番目の脂肪として、「異所性脂肪」が話題になっている。

 異所性脂肪は、膵臓・筋肉・肝臓・心臓(血管周囲)などに脂肪がたまっている状態で、皮下脂肪や内臓脂肪に入りきらなくなった脂肪が蓄積されたもの。

 日本人を対象とした研究でも、やせている若い女性で、血糖を下げるホルモンであるインスリンに対する体の感受性が低下して、効きにくい状態になっている「インスリン抵抗性」が、中年で肥満になっている人と同じくらいみられることが報告されている。

 やせていても、実は体脂肪がたまっていて、体の筋肉量が減少している人は多い。そうした人は、食事量は少なく、運動量も少ないという、「エネルギー低回転タイプ」になっている可能性がある。

アジア系は標準体重でも49%は体脂肪率が高い

 米国内分泌学会も、BMIが正常と判定された成人になかに、実は肥満が多くみられるという調査結果を発表した。詳細は、6月に開催された米国内分泌学会年次総会で公表された。

 研究グループは、「米国国民健康栄養調査(NHANES)」の2011〜2018年のデータを解析し、20〜59歳の男女の全身のDXAスキャンのデータを調べた。

 DXAスキャンは、X線を骨に透過させることで、骨密度を測定する検査法だが、同時に筋肉量や脂肪量を調べることもできる。

 その結果、BMIが正常と判定された白人の成人のうち、44%は体脂肪率が高く、実は肥満であることが判明した。アジア系でも、標準体重の人の49%が実は肥満だった。

 「健診や臨床ではBMIに加えて、体脂肪の測定も定期的に行う必要もあると考えられます。そのために、体脂肪を測定するための便利で使いやすいツールが必要です」と、ニュージャージー医科大学のアーユシュ ヴィサリア氏は言う。

家庭用の体脂肪計で簡単に体脂肪をチェックできる

 ヴィサリア氏らが勧めているのは、体に微弱な電流を流して電気抵抗(インピーダンス)を測定し、脂肪の割合を算定する生体インピーダンス法だ。

 日本でも、生体インピーダンス法により、体の体脂肪を簡単に測定できる、家庭用の体重体脂肪計が普及している。上に乗るだけで、体脂肪や体組成を推定できるタイプの体脂肪計も出ている。

 「家庭用の体脂肪計は、年々精度が向上しており、体脂肪量の目安を簡便に知ることができます。体重のみを量るよりも、体脂肪も同時に測り、その変動に注意を向けることをお勧めします」と、ヴィサリア氏は言う。

 「もしも体重や体脂肪が増えていたら、食事や運動などの生活スタイルを見直すことが、病気や早期死亡を防ぐために役立ちます」としている。

 体重測定に体脂肪測定を加えることは、はるかに信頼できる指標になりえるとして、すべての診療所に体脂肪を正確に測定するための測定機器を装備することをアドバイスしている。

One Third of Normal-Weight Individuals are Obese (テルアビブ大学 2023年7月12日)
The paradox of obesity with normal weight; a cross-sectional study (Frontiers in Nutrition 2023年6月9日)
Prevalence and features of impaired glucose tolerance in young underweight Japanese women(Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism 2021年1月29日)
BMI alone may not be a sufficient indicator of metabolic health (米国内分泌学会 2023年6月16日)


[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所