「運動」+「減量」で肥満と糖尿病のリスクを減少 2つを実行するとインスリンが2倍効きやすい体に
運動を習慣として行い、同時に体重を減らして肥満を解消すると、血糖値を下げるホルモンであるインスリンに対する体の感受性が2倍以上に高まり、肥満や糖尿病のリスクを減少できることが明らかになった。
「食事療法のみ、あるいは運動療法のみだと、十分な効果を期待できません。両方を行うことで、肥満や糖尿病のリスクを減らす効果をえられやすいことが示されました」と研究者は述べている。
運動を習慣として行うようになり、同時に体重を減らして肥満を解消すると、血糖値を下げるホルモンであるインスリンに対する体の感受性が2倍以上に高まり、血糖値が下がりやすくなり、肥満や糖尿病のリスクを減少できることが、米ワシントン大学医学部の研究で明らかになった。
「肥満のある人は、健康的な食事により体重を10%減らし、それに運動の習慣を組み合わせると、糖尿病の予備群の段階から糖尿病に進展するのを防いだり、遅らせることができます」と、同大学人間栄養センターのサミュエル クライン所長は言う。
「食事療法のみ、あるいは運動療法のみだと、十分な効果を期待できません。両方を行うことで、肥満と糖尿病のリスクを減らす効果をえられやすいことが示されました」としている。
研究グループは、16人のボランティアに参加してもらい実験を行った。参加者の全員が、体格指数(BMI)が30〜49の肥満で、血糖値が高めで、糖尿病予備群と判定された。また、全員でインスリン抵抗性がみられた。
「インスリン抵抗性」は、体内でインスリンは作られているが、肥満や運動不足などを原因に、その効果を十分に発揮できなくなった状態。筋肉・脂肪細胞・肝臓などで、インスリンに対する感受性が低下し、インスリンが働きにくくなった結果、血糖値が上がりやすくなる。
半分の8人には、食事療法のみを行い、体重の10%を減らしてもらった。もう半分の8人には、食事療法とともに、運動トレーナーの指導のもと運動療法にも取り組んでもらった。
その結果、食事療法と運動療法により、体重を10%減らしたグループでは、とくに筋肉でのインスリン感受性が大幅な改善し、2倍に高まった。
一方、食事のカロリー制限のみで体重の10%を減らしたグループは、インスリンの働きには大きな変化はなかった。
「インスリンに対する体の感受性を向上することには、健康上の重要なベネフィットがあります。2型糖尿病や冠状動脈性心疾患のリスクを軽減できると考えられます」と、クライン所長は言う。
「インスリンは、肝臓でのブドウ糖の放出を減らし、筋肉や脂肪細胞などでのブドウ糖の取り込みを増やす働きをしますが、肥満があると、このインスリンの働きが悪くなり、血糖値の上昇につながります」としている。
このインスリン抵抗性は、2型糖尿病、肥満、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、血中脂質の異常を引き起こす原因になる。「今回の研究では、運動と健康的な体重に管理することを組み合わせると、全身のインスリン感受性が顕著に改善され、それにより肥満と糖尿病のリスクが低下することが示されました」と、クライン所長は指摘する。
「肥満のある人は、運動療法と食事療法を同時に行い、体重を減らせば、肥満に関連する代謝性疾患の治療を大幅に改善できる可能性があります」としている。
「これまでの研究で、肥満のある人が運動療法のみを行っても、体重にはほとんど影響をおよぼさないことも示されています」と、同大学医療・栄養科学部のウィリアム ダンフォース教授は言う。
今回の研究では、食事療法のみで体重を10%減らした人と、食事療法と運動トレーニングを同時に行い、同じ量の体重を減らした人を比べ、筋肉と体脂肪の代謝にどのような変化が起きていたかも詳しく調べた。
その結果、食事と運動をともに行った人は、インスリン感受性が大幅な改善したのに加え、エネルギーを産生する細胞小器官であるミトコンドリアの生合成、エネルギー代謝、血管新生に関与する遺伝子の筋肉発現なども改善していた。
「このことは、運動と食事を組み合わせて減量をはかることで、大きなメリットをえられることを示しています」と、ダンフォース教授は言う。
米国の糖尿病有病者の数は3,700万人以上とみられており、その40%以上に肥満があり、糖尿病と診断された人の半数にも肥満が関わっている。
さらに、成人の3人に1人にあたる9,600万人が糖尿病予備群(前糖尿病)で、その多くが肥満とみられている。
「食事療法と運動療法を組合せた減量プログラムを、肥満のある人や糖尿病予備群に提供すれば、代謝上の大きなベネフィットをえられると考えられます」としている。
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