日本の女性はやせ願望が強すぎ 「少食」と「運動不足」は健康リスクを高める 保健指導の個別化・最適化が必要
日本は、先進国のなかでもやせている女性の割合がもっとも高く、とくに若い世代では、20%がBMI(体格指数)が18.5未満のやせ型だ。
若いやせ型の女性は「少食」と「運動不足」により、肥満者と同様に2型糖尿病のリスクが高いことが分かってきた。
「適切な栄養摂取や運動やスポーツの機会をえられるよう考慮し、それぞれの人に最適化した効果的な情報提供を行う必要があります。これらに取り組むことで、女性が年齢を重ねても長く健康で豊かな生活をおくることができると考えられます」と、研究者は述べている。
日本は、先進国のなかでもやせている女性の割合がもっとも高く、とくに若い世代(18〜29歳)では、20%がBMI(体格指数)が18.5未満のやせ型だ。
若いやせ型の女性は、「少食」と「運動不足」により、肥満者と同様に2型糖尿病のリスクが高いことが、順天堂大学の研究で示されている。女性のやせがたもらす健康問題は社会課題になりつつある。
しかし、「若いやせ型の女性が、やせにいたった背景」については、よく分かっていない。若いやせ女性が、将来にわたり健康で豊かな生活をおくることができる社会を実現するためには、やせにいたる背景を解明することが重要になる。
「やせていれば健康」という誤った認識を解消し、健康的な食事や運動などの生活スタイルにより、それぞれの人に適切な体重を取り戻すことが大切になる。
出典:順天堂大学「日本人の若い低体重女性の多面的な背景検証:ダイエット経験に着目して」、2023年
順天堂大学の研究グループは、やせ型の女性の「ダイエット経験の有無」に着目し、18〜29歳の女性5,905人を対象にスクリーニング調査を実施した。うち23.5%が低体重の条件に該当した。
さらに、調査で回答を得られた5,905人のうち、低体重(BMIが18.5未満)と普通体重(BMIが18.5〜25)のそれぞれの女性を対象に、調査を実施。最終的にデータをえられたは589人で、うち低体重は400人、母子手帳をもととした出生時体重の申告があったのは304人だった。
調査項目は、対象者の特性として、▼ダイエット経験、▼身長や体重(BMI)、▼母子手帳をもとにした出生時体重、▼自身のボディイメージ、▼体重への認識、▼小学生から現在までの運動習慣、▼食習慣など。
研究は、順天堂大学スポーツ健康科学部/スポーツ健康科学研究科准教授の室伏由佳氏らによるもの。
[啓発編]日本人の若い低体重女性の多面的な背景検証:ダイエット経験に着目して
その結果、ダイエット経験のある、若いやせた女性は、ストイックにやせにつながる行動をとりやすい傾向があることが示された。
低体重でダイエット経験のある女性は、体重が落ちにくい体質で、理想肥満に対して厳しいイメージがある傾向が示された。
ダイエット経験のあるグループは、肥満だと感じる体重は51.83kgからで、ダイエット未経験の女性よりも2.5kg少なかった。
また、小学生時代から現在までの運動習慣のある割合は55〜62%で、ダイエット経験のない女性の40〜42%よりも多い。
運動習慣をもつ理由としては、「美容や肥満解消のため」が71%と、ダイエット経験のない女性の44%よりも多かった。運動は、身体の満足度としてボディイメージにもたらす影響が大きい。
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さらに、ストレスや疲れを感じたとき食事量が増える傾向がみられ、その一方で、食事量を増加させることや、体重増加に対し、抵抗感をもっていることが分かった。
摂食態度や、メディアによる美についての情報の内在化傾向などを調べたところ、ダイエット経験のある若い女性は、ボディイメージの歪みといった主観的認知への影響が生じやすい可能性が示された。
インターネットを通じ、健康情報の検索や理解、評価、適切に活用する能力を示す「eHealthリテラシー」の得点も高く、「勤勉性」の得点が高いため、責任感が強く、自制心をもち、忠実に行動し、目標達成に向けて努力する傾向がみられた。
このことから、低体重でダイエット経験がある女性は、ストイックにやせにつながる行動をとることが懸念される結果になった。
「メディアの情報の内在化傾向の度合いからも、ボディイメージの歪みといった主観的認知への影響が生じやすい可能性が考えられます。そのため、痩身行動や思考のある、やせた女性に特化した情報提供が必要とみられます」と、研究グループでは述べている。
一方、ダイエット経験のないやせの女性は、出生時体重や過去最高の体重は、ダイエット経験者よりも少ないことが明らかになった。
ダイエット経験のない若いやせた女性は、出生時体重(2894.66g)が、ダイエット経験のあるグループの出生時体重(3053.74g)よりも軽いという結果になった。
ダイエット経験のない女性は、理想の体重(44.64Kg、BMI 17.72)は、現在の体重よりわずかに重い値を申告し、体重を増やすことに対して比較的、抵抗がないことがうかがえる結果になった。
ダイエット経験のない女性では、体重が減りやすいと回答した割合も多かった。ダイエット経験のない女性は、潜在的なやせ体質である可能性が考えられる。
運動習慣(過去1年間に週2回以上、1 回30分以上行っている)のある女性の割合は、ダイエット経験のない女性では、15〜20%少ないことが明らかとなった。
運動習慣をもたないと回答した女性では、「運動嫌い」「これまで実施する機会がなかった」という理由が多かった。
一方で、ダイエット経験のない女性は、食事量を増やすことに対して、抵抗が比較的少なく、運動習慣や食習慣の重要性に対してはポジティブにとらえている傾向もみられた。新しい経験や習慣を好む傾向がみられ、健康行動に対しは積極的とみられる。
その一方で、運動や食事など、健康的な行動に取り組めていない傾向があり、認識と行動とのあいだにギャップがみられた。
「少食で運動不足であると、2型糖尿病など、将来の健康リスクが高くなるとみられており、適切な運動習慣や食習慣をえられるような情報提供が必要です」と、研究グループでは指摘している。
順天堂大学医学研究科代謝内分泌内科学
順天堂大学 スポートロジーセンター
日本人の若い低体重女性の多面的な背景検証:ダイエット経験に着目して (順天堂大学 2023年6月2日)
やせていても「少食で運動不足」はハイリスク。若い女性も気をつけたい糖尿病 (順天堂大学 2021年11月30日)
Multidimensional background examination of young underweight Japanese women: focusing on their dieting experiences (Frontiers in Public Health 2023年6月2日)