毎日のウォーキングで女性の認知症を予防 活発な運動を1日30分増やすと認知症リスクは21%低下
ウォーキングなどの活発な運動を、1日に31分ずつ追加すると、MCIや認知症を発症するリスクは21%低下するという。
「高齢者の軽度認知障害や認知症のリスクを下げるために、中強度以上の活発な運動を増やす必要があります。保健指導や生活指導では、毎日の歩数をできるだけ増やすよう奨励することが望まれます」と、研究者は述べている。
65歳以上の女性は、ウォーキングなどの活発な運動を、1日に31分ずつ追加すると、MCIや認知症を発症するリスクは21%低下するという。
また、毎日の歩数が1,865歩増えるごとに、MCIや認知症のリスクは33%低下する。
「認知症の発症は、症状があらわれる20年以上前に始まると考えられています。できるだけ早期から介入する必要があります」と、カリフォルニア大学公衆衛生・人間長寿科学部のアンドレア ラクロワ教授は言う。
認知症は、衰弱性の神経疾患であり、いくつかのタイプがあるものの、記憶力・思考力・問題解決力・理性などが失われるのが特徴だ。軽度認知障害(MCI)は、認知症の前段階といえるもので、記憶障害や思考障害などが起こる。
一般的に、女性の方が男性よりも、認知症を発症するリスクは高いとみられている。
「運動や身体活動は、アルツハイマー病などの認知症のリスクを軽減するのにもっとも効果的な方法のひとつとして期待されています」と、ラクロワ教授は言う。
「認知症にはまだ明確な治療法がありません。認知症と診断されると、治療により進行を遅らせたり、元に戻すのは非常に難しくなります。そのため、予防が重要となります」としている。
一方、毎日の運動時間や座位時間を測定して検証した大規模な研究は、これまでほとんど行われておらず、身体活動や座位行動が、認知機能の低下や認知症の発症と関連することを示した研究の多くは、患者の自己報告による情報にもとづいている。
「女性の健康イニシアチブ」は、閉経後の女性の健康問題を解明するために、米国立衛生研究所(NIH)などによって1990年代に開始されたコホート研究。
その結果、平均すると、女性の1日の歩数は3,216歩で、軽度の身体活動にあてた時間は276分、中強度から高強度の身体活動に充てた時間は45.5分、座ってまま過ごした時間は10.5時間だった。
軽い身体活動の例としては、家事・ガーデニング・ウォーキングなどがある。ウォーキングを中強度以上の身体活動にするためには、息が弾むくらいの早歩きをする必要がある。
「高齢者の軽度認知障害や認知症のリスクを下げるために、中強度以上の活発な運動を増やす必要があります。保健指導や生活指導では、毎日の歩数をできるだけ増やすよう奨励することが望まれます」。
「活動量計は、より入手しやすく扱いやすいものが出ており、インターネットにつないで歩数などを記録できるものもあります。歩数計や活動量計を持ち歩くだけでも、歩数を増やすなどの行動変容を期待できるという報告もあります」としている。
また、今回の女性を対象とした研究では、座ったまま過ごす時間が長いことは、MCIや認知症の発症リスクを高めることと関連していないことが示された。
男性を対象としたこれまでの調査では、こうした座位時間の長さは、認知症などの発症リスクの上昇と関連していることが示されている。
「男性を含む大規模で多様な集団を対象に、さらに研究を重ねる必要があります」と、グエン氏は述べている。
More steps, moderate physical activity cuts dementia, cognitive impairment risk (カリフォルニア大学サンディエゴ校 2023年1月25日)
Accelerometer-measured physical activity and sitting with incident mild cognitive impairment or probable dementia among older women (Alzheimer's & Dementia 2023年1月25日)