【職場の保健指導】生活改善プログラムでは職場の雰囲気を変えることも必要 健康支援も個別化を

2023年02月01日

 従業員の生活スタイルをより健康にするために、職場で行える支援として効果的なのは、職場の雰囲気づくりにも取組み、食事や運動などの介入プログラムは無理なく続けられるよう個別化することだという研究結果が発表された。

 また、健康増進を牽引する役割をする「健康づくりリーダー」とも言える人が1人いるだけで、職場の雰囲気はかなり違ってくるという。

 ロールモデル(お手本)となる同僚がいて、たがいに励ましあえる環境が職場にあると、働いている従業員は健康的な行動をとりやすくなる。

なぜ職場で実施する生活改善プログラムはうまくいかないのか?

 従業員の生活スタイルをより健康にするために、職場で行える支援として効果的なのは、職場の雰囲気づくりにも取組み、食事や運動などの介入プログラムは無理なく続けられるよう個別化することだという研究結果を、米国肥満学会が発表した。

 これまで、企業などで働く従業員を対象に提供されてきた、生活スタイル介入を中心とした健康増進プログラムの多くで、減量目標を達成したり維持するのが難しく、脱落率も高いことが課題になっている。

 その理由は大きく2つあり、▼食事や運動などを毎日記録するのは個人にとって負担が大きいので、できる人は限られる、▼不健康な生活スタイルがすでに職場で定着してしまっているおそれがある、とうことだという。

職場で健康増進を促進 求められる2つの対策

 タフツ大学などは、「健康的な体重を維持するための生活改善」(HWL)と呼ばれる新しいプログラムを策定し、12の職場で働く、肥満や過体重のある平均年齢48歳の従業員260人に提供する研究を行った。

 このプログラムは、体重管理のために生活スタイル介入を中心として、職場での健康増進を促進するためのものだが、従来と違うのは、▼肥満・メタボの解消のために、個人だけでなく、職場全体の雰囲気も変え、より健康志向を高めることを行う、▼減量に取組む従業員へのサポートを個別化し、無理のない範囲で行え、継続しやすい内容に調整する、オンラインでのサポートも提供することだという。

 プログラムは、食事の生物学的な側面(食欲の亢進、空腹、食事の好みなど)や、参加者の行動変容を促すために、内因的な動機に働きかけることも重視して作られている。

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より効果的で実行しやすい健康増進プログラムが必要

 その結果、介入前の参加者の体格指数(BMI)の平均は33だったが、6ヵ月の介入で体重減少に成功した参加者は、新しい生活改善プログラムでは8.8%に上り、従来のプログラムの8.0%よりも高かった。

 ドロップアウト率が低かった。とくに5%を超える体重減少に成功した人の多くは、18ヵ月の時点でも健康的な体重を維持できていた。健康・活力・睡眠が改善される傾向もみられたという。

 「すべての人にとって効果的な解決策はないにしても、より効果的で実行しやすい健康増進プログラムを提供することは、保健指導を携わる専門職の責任だと言えます」と、同大学栄養科学政策大学院のサイ クルパ ダス教授は述べている。

 「職場で働く人の身体・精神・感情を含めた健康を改善することは、生産性を高め、結束も高め、医療費を削減し、従業員の定着率を高めるのにも役立ちます」としている。

職場に「健康づくりリーダー」がいると他の従業員にも良い影響が

 食事や運動などの生活スタイルが健康的な人が職場にいることで、他の従業員にも影響し、職場全体の健康度を高められる可能性があるという別の研究を、ドイツのケルン大学などが発表した。

 健康増進を牽引する役割をする「健康づくりリーダー」とも言える人が1人いるだけで、職場の雰囲気はかなり違ってくるという。

 健康的な食事や運動をする習慣は、個人だけの選択ではなく、家族・友人・隣人などの影響も受けている。食事や運動など、健康志向の高い生活スタイルをもっている人が職場にいると、同僚の健康行動にも影響しやすい。

 研究グループは、ドイツの113の組織の402の職場で働いている4,345人の従業員を対象に調査を行った。

職場に健康増進を文化として定着させる必要が

 その結果、職場に、全粒粉の穀類、野菜や果物などをよく食べる健康的な食事スタイルをもつ人がいると、同僚も影響を受け、食事がより健康的になりやすいことが示された。

 運動についても、体を積極的に動かしている人が職場にいると、同僚がそれを模倣することはないにしても、1日の歩数が増えるなどの好ましい影響がみられたという。

 ただし、ウォーキングなどの運動や身体活動は、通常は勤務時間外に行われることが多く、運動を習慣として行っている人がいても、同僚にはそれがほとんど見えていない。職場での運動習慣の影響は、食事に比べると限定的とみられる。

 「ロールモデル(お手本)となる同僚がいて、たがいに励ましあえる環境が職場にあると、働いている従業員は健康的な行動をとりやすくなることが示されました」と、ケルン大学社会学部および社会心理学研究所(ISS)のリー エルワード教授は言う。

 「職場に健康増進を文化として創造し定着させると、すべての従業員が健康的な選択することをサポートしやすくなると考えられます」としている。

Novel workplace lifestyle intervention leads to meaningful weight-loss, maintenance (米国肥満学会 2023年1月25日)
Randomized controlled trial of a novel lifestyle intervention used with or without meal replacements in work sites (Obesity 2023年1月25日)
Co-workers can influence healthy eating choices (ケルン大学 2022年11月16日)
Employees' healthy eating and physical activity: the role of colleague encouragement and behaviour (BMC Public Health 2022年11月1日)


[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所