肥満者へのオンライン生活指導は効果がある 個別化した情報提供と専門家の助言が重要
肥満者に対するウェブベースの生活指導は減量効果があることを、筑波大学が明らかにした。
とくに体重減少の効果があるのは、▼目標達成状況などにもとづき個別化された情報提供、▼専門家の助言だという。
「非対面で行えるウェブベースの生活改善指導は、費用対効果の高い介入手法となり、有効な構成要素を組み合わせることで、より効果の高い減量プログラムの開発につながる可能性があります」と、研究者は述べている。
肥満は、2型糖尿病や心血管疾患など、非感染性疾患の主要なリスク要因であり、世界的な公衆衛生課題となっている。肥満を解消するためのさまざまな対策が検討されるなか、近年、ウェブベースで提供される生活指導による減量介入(ウェブベース介入)に注目が集まっている。
ウェブベース介入の減量効果についての論文は増加しているものの、介入の構成要素は多岐にわたっており、どのような手法が効果的なのかは明らかにされていない。
そこで筑波大学は、ウェブベース介入に関するこれまでの研究論文を、システマティックレビューとメタ解析を用いて分析。肥満者の体重変化に対するウェブベース介入の有効性を検証し、介入の効果的な構成要素についても検討した。
研究は、筑波大学体育系の中田由夫准教授、女子栄養大学栄養学部の津下一代特任教授、十文字学園女子大学人間生活学部の若葉京良氏らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nutrients」に掲載された。
質的分析の結果、ウェブベース介入でもっとも頻繁に使用された構成要素は、▼行動変容のセルフモニタリング(76件)、次いで、▼ソーシャルサポート(63件)だった。
また、それぞれの構成要素のうち、有意な減量効果を示した論文数が多かったのは、▼ソーシャルサポート(24件)、▼行動変容のセルフモニタリング(24件)、▼アウトカム(体重)に対するセルフモニタリング(21件)、▼行動目標設定(17件)、▼情報提供(16件)、▼アウトカムの目標設定(13件)などだった。
量的分析では、対象となる51件の論文のうち、ウェブベース介入の効果をオフラインの対照群と比較した44件について分析。その結果、ウェブベース介入がオフライン介入よりも体重減少に効果的であることが示された(SMD -0.57[-0.75、-0.40])。*
また、ウェブベース介入の構成要素別の効果を検討した結果、▼対象者の基本情報や目標達成状況にもとづき個別化された情報提供(SMD -0.39[-0.73、-0.05])、および、▼専門家の助言(SMD -0.42[-0.75、-0.08])で、それぞれ有効性が認められた。
一方で、オンラインチャットでは有効性はみられなかった(SMD 0.18[-0.09、0.45])。
「本研究により、ウェブベース介入の減量効果が認められ、非対面で利用可能な、費用対効果の高い減量介入手法としてのエビデンスが提供されました。今後、有効な構成要素を組み合わせることで、より効果の高い減量プログラムの開発につながると期待されます」と、研究グループでは述べている。
研究グループは今回、最終の論文検索日を2020年9月30日とし、所定の検索用語を使用して、2つの論文検索データベース(PubMed・医中誌)から、1,465件の論文を抽出。手作業により検索した1件を加えた合計1,466件の論文を、一次スクリーニングの対象とした。タイトルと抄録を参照する一次スクリーニングの結果、「ランダム化比較試験ではない」などの除外条件に該当した1,315件を除外し、151件の論文を二次スクリーニングの対象とした。
二次スクリーニングでは、151件の論文を全文入手し、精読した結果、「体重変化が報告されていない」「ウェブベース介入ではない」などの除外条件に、54件の論文が該当した。最終的に97件の論文を採用し、それぞれの介入で採用されている行動変容技法を把握するために質的分析を実施した。
そのうち、定量的なデータが抽出できた51件を量的分析の対象とし、ウェブベース介入の有効性を検証するとともに、効果的な構成要素について検討した。
筑波大学体育系
女子栄養大学栄養学部
Effectiveness and Components of Web-Based Interventions on Weight Changes in Adults Who Were Overweight and Obese: A Systematic Review with Meta-Analyses (Nutrients 2022年12?30?)