ウォーキングの歩数を増やす方法は考えているよりも簡単 8000歩に増やすと肥満や高血圧は改善
運動する時間を増やし、運動不足を解消するための方法は、考えているよりもずっと簡単だという研究を、米国のブリガムヤング大学が発表した。ただ歩数計を持ち歩くだけで、たとえその画面を見なくても、以前よりもたくさん歩くようになるという。
運動量を増やしたいと思っている人は、まずは歩数計や活動量計を持ち歩く習慣を身に付けることが重要だとしている。
毎日の歩数などをカウントし、少しずつでも運動の量と強度を高めていくと、糖尿病・高血圧・肥満・睡眠時無呼吸症候群など、多くの慢性疾患のリスクを減らせる。
「多くのスマートフォンに歩数計の機能が組みこまれていて、Apple WatchやFitbitなど、より多機能なデバイスも出ています。活動量計で測った運動データの記録ができるクラウド型サービスも、さまざまなものがあります」と、米国のブリガムヤング大学ビジネススクールでインセンティブ報酬などのヘルスケア研究をしているビル テイラー教授は言う。
「現在は、歩数をカウントすることは、私たちにとってより身近なものになっています。運動をすることを勧められているけど、なかなか取り組めないという人も、目標を設定したり、特別な取り組みをしなくとも、簡単に身体活動量を増やせる方法があります」としている。
研究では、運動目標や、運動することで得られるメリットを意識していなくとも、ただ歩数計を持ち歩くだけで、1日の平均歩数を増やせることが示された。
「運動や身体活動の量を増やすために、目標やインセンティブを設定しないと、効果を得られないと考えがちです。しかし、行動を記録し追跡するだけでも、変化を得られるのではないかと、今回の研究では考えました」と、テイラー教授は説明する。
研究グループは、90人の若者を対象に2週間の実験を行った。参加者に研究の開始前に、歩数などの身体活動レベルを記録し追跡するアプリをダウンロードするように求めたが、その目的は知らせなかった。このアプリは、デバイスの画面を見ただけでは歩数が分からないよう工夫されていた。
次に、参加者を次の3つのグループにランダムに割り付けた。(1) 歩数の測定を知っているだけで、歩数などのデータを見ないグループ、(2) 測定について知っていて、歩数などもチェックするグループ、(3) そもそも歩数が測定されていることを知らないグループ(対照群)。
その結果、歩数の測定を知っていてデータをチェックしたグループは、1日の歩数を増やしたが、測定された歩数のデータを見なかったグループでも、1日の歩数を平均して388歩増やしていた。
「多くの人は、自分の行動が測定され監視されていると感じると、それに反応する傾向があります。測定されていることを重要と感じやすいからです」と、テイラー教授は指摘する。
「身体活動量を適度に増加することには累積的なベネフィットがあるため、今回の研究は、公衆衛生の分野に取り組んでいる医療関係者や企業にも役立つ可能性があります」
「米国の成人のほぼ半数は、運動ガイドラインで推奨されている身体活動量を満たしていません。医療機関や企業などで、人々の運動量を増やし、運動不足を解消することに取り組んでいる医療関係者や企業人は、全員に歩数計を配布し、ただ持ち歩いてもらうだけでも、努力をしないでも効果を得られる可能性があります」としている。
米国のヴァンダービルト大学医療センターによる別の研究でも、歩数計や活動量計を利用し、毎日の歩数などをカウントし、少しずつでも運動の量と強度を高めていくと、糖尿病・高血圧・肥満・睡眠時無呼吸症候群など、多くの慢性疾患のリスクを減らせることが示されている。
「歩数計や活動量計を測定・記録できるウェアラブルデバイスで得たデータを、電子カルテ(EHR)などに統合することは、医師などの医療従事者にとって価値があることかもしれません。医師はそれを使用して、患者の臨床的特徴とリスクの全体像を把握でき、身体活動の調整に役立てることができます」と、同大学心血管臨床研究センターのエヴァン ブリテン氏は言う。
研究グループは、全米の約100万人を対象に、生活スタイルや環境が健康にどのように影響するかを調査している大規模研究「All of Us Research Program」に参加した6,042人の平均4年間のデータを解析した。
参加者は、歩数や活動量などを測定できるFitbitを、1日に10時間以上着用し、EHRへ情報を提供していた。参加者の年齢は41歳?67歳で、体格指数(BMI)の中央値は28.1(過体重)だった。
その結果、1日に8,200歩以上歩くと、肥満、睡眠時無呼吸症候群、胃食道逆流症、うつ病性障害を予防できることが明らかになった。さらに、過体重の人が毎日の歩数を6,000歩から1万1,000歩に増やすと、肥満のリスクを64%減らすことも示された。
糖尿病や高血圧についても、1日の歩数を8,000?9,000歩まで増やすと、それぞれリスクが低下し改善がみられることが分かった。
この研究でも、活動量を測定できるFitbitを持ち歩いた参加者は、平均的な成人よりも、活動的で歩数が多い傾向が示された。
「より多様で代表的な集団でさらに研究を重ねる必要がありますが、今回の調査結果は、歩数などのフィットネスを測定し、追跡できるウェアラブルデバイスにより、多くの人々の身体活動量を増やせる可能性を示しています」と、ブリテン氏は言う。
「1日に座りがちな時間の多い人や、運動不足の人には、まずは歩数計などを持ち歩いて歩数を測定してもらうことが、個別化された運動処方の開発に向けた最初のステップになると考えられます」としている。
BYU study: Wearing a pedometer - even if you don't look at it - may boost step counts (ブリガムヤング大学 2022年9月20日)
The Effect of Wearable Activity Monitor Presence on Step Counts (American Journal of Health Behavior 2022年9月)
Counting steps can reduce disease risk: Study (ヴァンダービルト大学医療センター 2022年10月10日)
Association of step counts over time with the risk of chronic disease in the All of Us Research Program (Nature Medicine 2022年10月10日)