運動はすべての人にとって有用 短命の遺伝的素因をもつ人も運動で寿命を延ばせる

2022年09月01日

 ウォーキングやテニスなどの運動を、余暇時間に行っている高齢者は、あらゆる原因による死亡リスク、さらには心血管疾患やがんによる死亡のリスクが低いことが、大規模な調査で明らかになった。

 カリフォルニア大学の別の研究では、座ったままの時間を減らし、運動や身体活動を行うことは、どのような遺伝的な体質の人でも、長寿につながることが示された。

 長寿とみられる遺伝子をもっていない人も、運動を習慣として続けていれば、等しく恩恵を受けられ、寿命を延ばすことができる。逆に座ったままの時間が長いほど、死亡リスクが高くなることも明らかになった。

楽しみながら続けられる余暇活動をみつけることは重要

 ウォーキングやジョギング、水泳、テニスなどの運動を、余暇時間に行っている高齢者は、あらゆる原因による死亡リスク、さらには心血管疾患やがんによる死亡のリスクが低いことが、大規模な調査で明らかになった。

 これは、米国国立衛生研究所(NIH)の国立がん研究所(NCI)が、59歳〜82歳の成人27万2,550人を対象に調査したもの。

 「余暇時間に行う運動や身体活動は、どんな種類のものでも、高齢者の死亡リスクの減少と関連していることが示されました。とくに高齢者にとって、楽しみながら続けられる余暇活動をみつけることは重要です」と、同研究所でがん疫学や遺伝学を研究しているエレノア ワッツ氏は言う。

余暇時間に運動をしている高齢者は死亡リスクが減少

 研究グループは、7種類の運動(ウォーキング・ランニング・サイクリング・水泳・その他の有酸素運動・テニスなどのラケットスポーツ・ゴルフ)とレクリエーション活動の影響について調査した。

 その結果、これらの身体活動を任意に組み合わせて毎週行い、推奨されている身体活動量を達成している高齢者は、こうした活動をしていない高齢者に比べ、あらゆる原因による死亡リスクが13%減少することが明らかになった。

 調査したすべての身体活動は、死亡リスクを減少していたが、それぞれの活動について個別に調べたところ、死亡リスクはラケットスポーツをすることで16%減少し、ランニングでは15%減少し、とくに効果が高かった。

 運動の強度が軽めのレクリエーション活動を行っている人は、推奨されている身体活動量を満たしていなかったものの、何も活動していない人に比べ、やはり死亡リスクが5%減少した。

運動と座位時間は長寿の遺伝的素因にどう影響する?

 カリフォルニア大学の別の研究では、座ったままの時間を減らし、運動や身体活動を行うことは、どのような遺伝的な体質の人でも、長寿につながることが示された。

 長生きをする遺伝子をもっている人も、長生きする可能性が低いとみられる人も、運動を習慣として続けていれば、等しく恩恵を受けられるという。

 「運動不足で、座っている時間が長いほど、死亡リスクが高くなることが分かっています」と、同大学公衆衛生学部のアレクサンダー ポシス氏は言う。

 「私たちは、運動や身体活動と座位時間による影響が、長寿の遺伝的素因の違いによりどう変化するかを調査しました」。

長寿の人と短命の人とでは遺伝子がどう違うか

 寿命には、食事や運動、ストレスなどの生活スタイルによる環境的な要因と、体質による遺伝的な要因が大きく関わっていると考えられている。

 最近では、DNAマイクロアレイを用いて、ヒトの遺伝情報をになうDNAの塩基配列の1塩基の違いを示す一塩基多型(SNP)を、ゲノム全域にわたり網羅的に検索する「ゲノムワイド関連研究(GWAS)」が行われるようになっている。

 長寿の人と短命の人とでは遺伝子がどう違うかや、病気へのかかりやすさに関わる遺伝子などを探る研究が行われている。

 研究グループは今回、米国の63歳以上の女性5,446人を対象に、遺伝子検査を受けてもらい、2012年から2020年まで追跡して調査した。参加者は、糖尿病、心血管疾患、脳血管疾患、がん、慢性閉塞性肺疾患、認知障害、うつ病、変形性関節症などをもつ人も含まれた。

 参加者に、活動量計を最大7日間装着してもらい、運動や身体活動の頻度や強度、座りっぱなしの時間などを測定した。

短命の遺伝的素因をもつ人も運動で寿命を延ばせる

 その結果、どのような遺伝的素因をもつ人も共通して、運動や身体活動を活発に行うことは、死亡リスクの低下と関連しており、逆に座ったままの時間が長いほど、死亡リスクが高くなることが明らかになった。

 「遺伝子にもとづき、長生きする可能性が低いとみられる人でも、運動を習慣として行い、座っている時間を減らすなど、生活スタイルを前向きに改善することで、寿命を延ばせることが明らかになりました」と、同学部で公衆衛生や長寿科学を研究しているアラジン シャディヤブ氏は言う。

 「逆に、あなたのたとえ長寿の遺伝的素因をもっているとしても、運動不足を解消し、生活スタイルを改善することは、長寿を達成するために依然として重要です」。

 日本を含め、世界的に成人人口が高齢化し、強度の低い活動に費やす時間が長くなっている。「研究結果は、病気や早死のリスクを減らすために、あらゆる強度の運動や身体活動に参加するチャンスを見逃さないようにすることが大切であることを示しています」と、シャディヤブ氏は述べている。

Many types of leisure time activities may lower risk of death for older adults (米国国立がん研究所 2022年8月24日)
Association of Leisure Time Physical Activity Types and Risks of All-Cause, Cardiovascular, and Cancer Mortality Among Older Adults (JAMA Netw 2022年8月24日)
Physical Activity May Have a Stronger Role Than Genes in Longevity (カリフォルニア大学サンディエゴ校 2022年8月24日)
Associations of Accelerometer-Measured Physical Activity and Sedentary Time With All-Cause Mortality by Genetic Predisposition for Longevity (Journal of Aging and Physical Activity 2022年8月24日)


[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所