高血圧リスクはタンパク質を多様な食品から摂ると減少 通勤時のウォーキングで糖尿病リスクも低下

2022年05月31日

 さまざまな食品からタンパク質を摂ることで、高血圧リスクが低下することが、中国の1万2,200人の成人を対象とした研究で明らかになった。

 適切な量のタンパク質を摂り、多様な食品をバランス良く食べることが、高血圧の予防・対策に役立つ可能性がある。

 車を使わず、徒歩で通勤すると、高血圧や2型糖尿病のリスクを低減できるという研究も発表されている。

 通勤時のウォーキングは、簡単にはじめられ、毎日続けられる運動になる。

 筋肉を増やすために、運動とともに、タンパク質を十分に摂ることが重要だ。

タンパク質を多様な食品から摂ると高血圧リスクは減少

 さまざまな食品からタンパク質を摂ることで、高血圧リスクが低下することが、中国の1万2,200人の成人を対象とした研究で明らかになった。適切な量のタンパク質を摂り、多様な食品をバランス良く食べることが、高血圧の予防・対策に役立つ可能性がある。

 米国人のほぼ半数が高血圧をもっており、心血管疾患の原因のひとつとなっている。高血圧を治療しないで放置していると、循環器系に障害があらわれ、脳卒中や心筋梗塞などの発症リスクが上昇する。

 また、筋肉を効率よく増やすためには、運動とともに栄養が重要となる。とくに大切な栄養素が、タンパク質だ。過度の食事制限をしている人や、炭水化物を中心とした食事をしている人では、タンパク質は不足しがちになる。

 「タンパク質は、脂肪と炭水化物と並ぶ、三大栄養素のひとつです。食事は、高血圧と戦うための、簡単にアクセスできる効果的な手段となるかもしれません」と、中国国立腎臓病臨床研究センターのシアンホイ チン氏は言う。

 食事スタイルが不健康であると、心血管疾患などによる死亡リスクが上昇することが報告されている。心臓の血管の健康を改善するために、食事ガイドラインでは、植物性食品や脂肪の少ない動物性食品から、十分な量のタンパク質を摂ることが勧められている。

「食の多様性スコア」の高い人は高血圧リスクが66%減少

 研究グループは、1997年〜2015年に実施された中国健康栄養調査に参加した、中国に住む1万2,200人の成人の健康データを分析した。参加者の平均年齢は41歳で、47%が男性だった。食事調査を24時間に3回連続で実施した。

 タンパク質の供給源として、▼全粒穀物、▼精製穀物、▼加工肉、▼未加工肉、▼鶏肉、▼魚、▼卵、▼乳製品、▼マメ類、▼大豆など、さまざまな食品について調査し、「食の多様性スコア」を作成し、平均6年間追跡して調査し、高血圧との関連を評価した。

 その結果、参加者の35%以上が高血圧を発症した。分析した結果、タンパク質の摂取量について、「食の多様性スコア」がもっとも高い(4点以上)人は、もっとも低い(2点未満)人に比べ、高血圧を発症するリスクは66%低かった。

 また、タンパク質の総摂取量が少な過ぎる人と、多過ぎる人でも高血圧の発症リスクは高かった。

 「タンパク質を、少ない種類の食品からまとめて摂取するよりも、多様な食品からバランス良く摂取した方が、高血圧を防ぐのに役立ち、心臓の健康を改善できる可能性があります」と、チン氏は述べている。

通勤時にしっかり歩くと、高血圧と糖尿病のリスクは低下

通勤時のウォーキングは手軽に取り組める立派な運動

 通勤時のウォーキングは立派な「健康運動」になる。車を使わず、徒歩で通勤すると、高血圧や糖尿病のリスクを低減できることが、英国のインペリアル カレッジ ロンドンで示されている。

 ウォーキング・サイクリング・水泳・ランニング・筋トレ・ダンベル体操といった運動が、高血圧と糖尿病のリスクを低下し、健康増進に役立つことは、多くの人が認知している。

 しかし、一念発起して運動をはじめても、それを習慣として続けていくのは思っている以上に難しいことだ。

 しかし、誰でも簡単にはじめられ、毎日続けられる運動のやり方がある。通勤時のウォーキングだ。▼通勤時に自宅から駅まで歩く、▼駅からオフィスまで歩く、▼休み時間に職場のまわりを歩いてみる、▼帰りはひとつ手前の駅で下車して歩く――こんな手軽なやり方でも、健康改善の効果を得られるという。

徒歩で通勤している人は糖尿病リスクが40%低下

 研究グループは、2万人以上の英国人を対象に、通勤時のウォーキングや自転車での移動と、2型糖尿病や高血圧の発症との関連を調査した。

 その結果、車で通勤している人に比べ、地下鉄やバスを使い徒歩で通勤している人は、肥満が少なく、2型糖尿病や高血圧の発症も少ないことが明らかになった。

 公共交通機関や徒歩、サイクリングなどで通勤している人は、肥満の割合が20%少なく、2型糖尿病が40%少なく、高血圧の発症が17%少なかった。

 参加者の69%が交通機関を利用して通勤し、徒歩での通勤は12%、サイクリングは3%だった。

 「通勤の手段として、なるべく車を使わず、徒歩や自転車などを使うことで、肥満や高血圧、2型糖尿病のリスクを減らせる可能性があります。自家用車で通勤している人は、車を降りて、なるべく歩くようにした方が良いのです」と、同大学公衆衛生学のアンソニー ラバティ氏は言う。

1日30分のウォーキングで体は変わる

 日本人が1日に歩く歩数の平均は、男性で6,793 歩、女性で5,832 歩で、とくに女性では10年間で減少している(2019年度国民健康・栄養調査)。自動車通勤をしていたり、デスクワークの多い人だと、歩数はさらに少なくなり、1日5,000歩前後しか歩いていない人も少なくない。

 「健康日本21」では、歩数の目標を、男性で9,200歩、女性で8,300歩と定められている。1日30分のウォーキングを毎日続ければ、この目標をクリアできる。

 通勤時にしっかり歩くようにすれば、1日30分のウォーキングは、さほど難しい目標ではない。

Eating protein from a greater variety of sources may lower risk of high blood pressure (米国心臓学会 2022年3月10日)
Inverse Association Between Variety of Proteins With Appropriate Quantity From Different Food Sources and New-Onset Hypertension (Hypertension 2022年3月10日)
Walking to work cuts risk of diabetes and high blood pressure (インペリアル カレッジ ロンドン 2013年8月6日)
Active Travel to Work and Cardiovascular Risk Factors in the United Kingdom (American Journal of Preventive Medicine 2013年9月1日)
Working Together to Promote Active Travel: A briefing for local authorities (Public Health England)


[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所