【新型コロナ】起床・朝食が遅くなった子供で運動不足や栄養バランスの乱れが 規則正しい食事・睡眠が大切

2022年05月26日

 新型コロナの流行により、日本を含む多くの国で臨時休校が実施された。

 長期に学校が休校になったときに、平時より遅い時刻に起床し、朝食をとっている子供では、運動不足・欠食・栄養バランスの乱れなど、不健康な生活スタイルが多くみられることが、日本の約2万人の小中学生を対象とした調査で明らかになった。

 学校が休校になった場合も、平時と同様の時刻に睡眠と食事をとる習慣を保つことが重要であることが示された。

コロナ禍で臨時休校 子供たちの生活・健康にどう影響?

 研究は、東京大学未来ビジョン研究センターの杉本南特任研究員(研究当時)、東京大学大学院医学系研究科の村上健太郎助教、佐々木敏教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Public Health Nutrition」に掲載された。

 新型コロナの流行により、日本を含む多くの国で臨時休校が実施された。学校は、学齢期の子供たちの睡眠および食習慣に大きく関わる要素であり、長期の休校は、子供たちの睡眠や食習慣を変化させた可能性がある。

 そこで東京大学の研究グループは、臨時休校中の学齢期の子供たちの睡眠と食事の時刻パターンを特定し、それらのパターンと、運動などの生活スタイルおよび食事摂取量との関連を調査した。

 これまでの研究では、長期の休校中での、睡眠と食事を組み合わせた概日リズム、およびその概日リズムと生活スタイルとの関連ついてはよく分かっていなかった。

小中学生2万人の起床・睡眠・食事の時刻を調査

 この横断調査は、2020年6月に、全国14都道府県の48の学校・団体に所属する小中学生1万1,958人を対象に実施したもの。調査では、学校・団体を通して児童・生徒に質問票を配布し、過去1ヵ月(臨時休校中)の睡眠時間と食事時間、生活スタイル、食事摂取量を評価した。

 研究グループは、食事摂取量の評価に、小学生・中学生・高校生のための食事質問票(BDHQ15y)を用いた。解析には、調査票に回答し、必要な情報が揃っている6,220人の子供(8〜15歳)のデータを使用。

 潜在クラス分析を用いて、起床、就寝、食事の時刻にもとづいて、睡眠と食事の時刻パターンを特定。さらに、対象者が、身体活動レベルが低い、朝食欠食の頻度が多いといった、不健康な生活スタイルをもつリスクを、ロジスティック回帰を用いて検証した。また、食品および栄養素の摂取量を、睡眠と食事の時間的パターン間で比較した。

 とくに起床と朝食の時刻が異なる、下記の4つのパターンが、潜在クラス分析により明らかになった。

(1) 非常に早い (6時頃に起床、6〜7時頃に朝食) 20%
(2) 早い (7時頃に起床、7時頃に朝食) 24%
(3) 遅い (7〜8時頃に起床、8時頃に朝食) 30%
(4) 非常に遅い (8〜10時頃に起床、9〜10時頃に朝食) 26%

臨時休校中の子供の生活スタイルを睡眠・食事の時刻により
4つのパターンに分類

出典:東京大学、2022年
起床と朝食が遅いパターンの子供では運動不足・欠食・栄養バランスの乱れが

 分析した結果、起床と朝食の時刻が早いパターンでは、学校のある平時と同様の時刻に起床し朝食をとっているとみられたが、遅いパターンでは、早いパターンと比較して、起床、朝食、昼食の時間帯が1〜2時間以上遅くなっていた。

 起床と朝食の時刻が遅いパターンの子供は、起床と朝食の時刻が早いパターンの子供よりも、▼身体活動が不活発で運動不足、▼ゲームやテレビ、パソコンなどの画面を見ている時間が長い(1日4時間以上)、▼学習時間が短い(1日2時間未満)、▼朝食や昼食を欠食する頻度が多い(週1回以上)、▼夜食を食べる頻度が多い(週1回以上)、▼間食を食べる頻度が多い(1日2回以上)という傾向がみられた。

 さらに、起床と朝食の時刻が遅いパターンの子供は、ビタミン類・ミネラル類・野菜・果物・魚介類・乳製品の摂取量が少なく、砂糖・菓子・清涼飲料類の摂取量が多く、栄養バランスの乱れも多くみられた。

臨時休校の期間中の子供の生活スタイルを、
起床と朝食の時刻の4つのパターンで比較

起床・朝食の時刻が遅い子供で、不健康な生活スタイルが多くみられる

起床・朝食の時刻が遅い子供は、「身体活動レベルが低い」「画面を見て過ごす時間が長い」「学習時間が短い」「朝食や昼食の欠食」「夜食を食べる頻度が多い」という傾向がみられた。


起床・朝食の時刻が遅い子供では、栄養バランスの乱れも多い
起床・朝食の時刻が遅い子供は、野菜・果物・魚介類・乳製品などの、好ましい食品の摂取量が少なく、砂糖・菓子類・清涼飲料類などの、好ましくない食品の摂取量が多い傾向がみられた。

出典:東京大学、2022年
平時と同じ時刻に食事・睡眠をとる習慣が大切

 研究により、長期に学校が休校になった際、平時より著しく遅い時刻に起床し朝食をとっている子供では、不健康な生活スタイルをもつリスクが高いことが示された。

 「将来、感染症や災害等が原因で長期に学校が休校になった際にも、平時と同様の時刻に睡眠と食事をとる習慣を保つことが重要である可能性が示唆されました」と、研究グループは述べている。

東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻
Temporal patterns of sleep and eating among children during school closure in Japan due to COVID-19 pandemic: associations with lifestyle behaviours and dietary intake (Public Health Nutrition 2022年5月16日)


[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所