多様な運動を組合わせた「カクテル運動」で健康に 忙しくて運動の時間がないという人も大丈夫
さまざまな運動や身体活動を組み合わせた「カクテル運動」は、活動が軽めのものであっても、健康上のベネフィットをもたらすという研究を、米コロンビア大学医療センターなどが発表した。
体に負担をあまりかけない軽めの身体活動であっても、健康増進にもたらす影響は、考えられていた以上に大きいことが示された。
「忙しい」「体に負担がかかる」などの理由で、激しいスポーツ・運動をする時間をとれない人も、軽めの身体活動も取り入れた「カクテル運動」により、死亡リスクは最大で30%減少するという。
「誰にでも勧められる共通した運動の方法はありません。運動のやり方にも個別化と多様性をもたせ、やりやすい方法を選択することが大切です」と、研究者は述べている。
「健康増進のために、1日30分以上の活発な運動を週5日行うことが勧められていますが、これを実行できている人は少数です」と、米コロンビア大学行動医学部および行動心臓血管健康センターのキース ディアス氏は言う。
「最近の研究では、30分のしっかりとした活発な運動ができない人でも、1日に軽めの身体活動を意識的に数多く行うことで、同等の効果を得られることが分かってきました」。
近年の研究では、安価で性能の良い身体活動量計を使えるようになり、それを参加者が身につけて、24時間のすべての身体活動を記録できるようになっている。それまでは、運動の効果を調べた研究では、種類の異なる身体活動を個別に検討する傾向があった。
「健康寿命を延ばすための、運動や身体活動のベストの組み合わせ、いわば"カクテル運動"ともいうべきものを考える必要があります」と、ディアス氏は指摘する。
一方で、研究では気になることも分かった。「たとえ1日30分の運動をする習慣のある人でも、それ以外の時間に体を動かしていなければ、運動の効果を十分に得られないことも分かりました。30分はあなたの1日の生活のたった2%に相当します。それ以外の時間をどう過ごすかも重要なのです」としている。
研究グループは、英国・米国・スウェーデンの13万人以上の成人を対象とした6件の研究のデータを使い、組成解析と呼ばれる手法で、▼中強度〜激しい運動(活発なウォーキング、ランニング、水泳など、心拍数を上げる運動)、▼軽めの身体活動(家事、カジュアルなウォーキング、ガーデニングなど)、▼座りがちな行動を含む、さまざまな活動の組み合わせと死亡リスクとの関連を調べた。
その結果、体に負担をあまりかけない軽めの身体活動であっても、健康増進にもたらす影響は、考えられていた以上に重要であることが示された。さまざまな運動や身体活動を組み合わせて行う「カクテル運動」により、死亡リスクは最大で30%減少することが示された。
ランニングなどの中強度から激しい運動を1日に数分しか行わない人でも、ウォーキングや家事などの軽めの身体活動を1日に6時間行っていると、早期に死亡するリスクは減少した。
「あなたが幼い子供をもつ親であったら、スポーツジムやフィットネスクラブに通って運動をする時間をなかなかもてないかもしれません。でも、諦める必要はありません」と、ディアス氏は言う。
「子供や家族の世話や家事は、けっこうな運動量があります。そうした身体活動を活発に行い、1日を通じてなるべく動き回り、たくさん体を使っていれば、健康的な運動プロファイルを維持できます」としている。
「2分間の中強度から激しい運動は、4〜12分の軽めの運動に相当します。どちらのアクティビティにも価値はありますが、必ずランニングなどの激しい運動が必要になるというわけではありません」。
運動不足におちいらないようにするため、目安となるのは、座ったまま過ごす時間をなるべく減らすことだという。
「座っていることは、喫煙ほどではないにしても、やはり健康に悪いことなのです。現代人の生活スタイルは、座位時間が長いことが特徴です。重要なのは、座りがちな時間と身体活動の適切なバランスをみつけることです」と、ディアス氏は言う。
研究では、1日に30分の中強度〜激しい身体活動をしている人は、座位行動が1日に7時間未満であれば、死亡リスクが最大で80%減少した。しかし、座位時間が11〜12時間に増えると、死亡リスクは減少する効果は失われることも示された。
また、「中強度〜激しい運動」と「軽めの身体活動」を、1対3の比率で行うと、効果を得やすいことが分かった。
この公式を使用して、さまざまな運動や身体活動を組み合わせる「カクテル運動」を行い、座ったまま過ごす時間を減らすことで、2型糖尿病や脂質異常症などの慢性疾患や早期死亡のリスクを減少できるという。
この公式をあてはめると、たとえば次のようなパターンが考えられる。
- 55分の中強度の運動 + 4時間の軽めの身体活動 + 11時間の座位活動
- 13分の中強度の運動 + 5.5時間の軽めの身体活動 + 10.3時間の座位活動
- 3分間の中強度の運動 + 6時間の軽めの身体活動 + 9.7時間の座位活動
「健康的な生活スタイルを選択することは、今日は運動をしたから、残りの時間はもう運動をやらなくても良いだろうといった、チェックボックスにチェックを入れるような簡単なことではありません」と、スコットランドのグラスゴー カレドニアン大学健康行動学部のセバスチャン・チャスティン教授は言う。
「1日に30分、あるいは1週間に150分の運動・身体活動を行っている人でも、座っている時間が長いと、すべての良い行動が打ち消されてしまう可能性があります。健康な運動プロファイルには、運動を習慣として行うことに加え、座ったままの時間を減らすことも必要です」としている。
「誰にでも勧められる共通した運動の方法はありません。身体活動のあり方にも個別化と多様性をもたせ、ご自分のやりやすい方法を選択することが大切です。市販されている活動量計やスマホの運動アプリなどを利用し、ご自分の1日の活動パターンを確認すると、新たな発見があるかもしれません」。
「この公式により、中強度から激しい運動をする時間と、座ったまま過ごす時間の適切なバランスをとることが大切です。座ったままの時間をなるべく減らし、その時間を体を動かす行動に置き換え、夜はぐっすり眠り休養をとるといった生活スタイルをお勧めします」。
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Joint association between accelerometry-measured daily combination of time spent in physical activity, sedentary behaviour and sleep and all-cause mortality: a pooled analysis of six prospective cohorts using compositional analysis (British Journal of Sports Medicine 2021年5月18日)