【新型コロナ】ウォーキングなどの運動でうつや不安を解消 座ったままの時間が長いとうつリスクが上昇
座ったままの時間が長い生活を数週間続けていると、メンタル不調になりやすいことが明らかになった。
コロナ禍でアルコールの摂取が増えた人も多い。
ウォーキングなどの運動を少し行うだけでも、メンタルヘルスや気分を改善できる可能性がある。
「運動は最良の薬になります」と、専門家はアドバイスしている。
米アイオワ州立大学の研究によると、座ったままの時間が長い生活を数週間続けていると、メンタルが不調になりやすくなり、うつ病のリスクが上昇する。新型コロナの拡大により行動が制限された人が多く、うつ病はますます深刻な問題になっている。
「座ったまま時間が長いと、明らかに身体と精神に悪い影響がもあらわれます。しかし、そのことに気が付いていない人は多いのです」と、同大学運動学部のジェイコブ マイヤー氏は言う。
マイヤー氏らは、運動・身体活動とウェルビーイング(身体的・精神的・社会的な幸福)の関係について研究している。
今回の研究で、米国の50州とコロンビア地区の3,000人超を対象に、2020年3月に調査を行った結果、多くの人が新型コロナの拡大の影響を受け、運動・身体活動を減らしていることが分かった。
新型コロナの以前に、運動ガイドラインで推奨されている週に2.5〜5時間の活発な運動を行っていた人でも、新型コロナの拡大により運動や身体活動を32%減少させていた。
さらに多くの人は、運動不足により気持ちが落ち込んだり、不安や孤独を感じることが多くなったと回答した。
マイヤー氏らは、2020年4月〜6月に毎週、同様の調査を行った。8週間でコロナ禍に順応しメンタルヘルスが改善した人もみられたが、座っている時間が長いままの人は、うつ症状からに回復が良好でない傾向があることが明らかになった。
「運動やエクササイズにより、心身の健康を増進できる可能性があります。しかし、生活スタイルは一度身についてしまうと、それを変えたり、新しいことを開始するのは難しいものです」と、マイヤー氏は言う。
「運動を少し行っただけでも、メンタルヘルスや気分を改善できることを多くの人に知ってもらい、運動を自分の生活に組みこむ方法をみつけるためにサポートすることが必要です」としている。
マイヤー氏は、リモートワークをしている人にも、座っている時間が長くなったら、ときどき仕事を中断して休憩をとり、体を動かすことを勧めている。
「パソコンから離れてデスクの前を少し歩いたり、自宅の周りを数ブロック歩くといった工夫をするだけでも、運動不足の解消につながります。少しでも運動する機会をみつけて体を動かすことが、身体と精神に利益をもたらします」とアドバイスしている。
ニューヨーク大学の研究によると、不安症やうつ病のリスクのある人は、メンタルヘルスの問題がない人に比べ、新型コロナの拡大の影響を受けて、アルコールを飲む量が増えやすい。
新型コロナは、社会的な隔離と日常生活の混乱を引き起こし、経済的困窮、病気、感染への恐怖など、多くのストレッサーを生み出した。
その結果、不安やうつ病のある高齢者では飲酒量を増やした人が多く、若い世代の人でも飲酒量の増加がみられるという。
「アルコールは適度に飲んで入れれば、ストレス解消やトラウマ的な出来事に対処するのに効果的ですが、飲み過ぎると心身に悪い影響が出てきます」と、同大学社会医学部のアリアドナ カパソ氏は言う。
カパソ氏らは、2020年3月と4月に米国の50州の成人5,850人を対象に、オンライン調査を実施した。
その結果、パンデミック中に29%は飲酒量を増やし、20%は飲酒量を減らし、51%は変化がないとそれぞれ回答した。うつ病のある人は、飲酒量を増やした可能性が64%高く、不安症のある人は41%高かった。
不安やうつ病のある高齢者は、飲酒量が増加した割合が2倍高く、40歳未満の成人でも、40%が飲酒量の増加を報告した。
「不健康な飲酒を続けてしまう人に対するサポートが必要です。とくにメンタルヘルスの問題を抱える人々には積極的な支援を行う必要があります」と、同大学グローバル公衆衛生学部のイェシム トーザン氏は言う。
「また、過度のアルコール摂取のリスクについて、年齢層ごとに公衆衛生のメッセージを効果的に伝えることも重要です」としている。
運動は、慢性的な不安症状を緩和するための効果的な方法となることが、スウェーデンのヨーテボリ大学の研究で明らかになった。
「体力トレーニングを含む12週間の運動により、どんな強度の運動であっても、不安の問題を抱える人々はメンタルを改善ができることが示されました」と、同大学サールグレンスカ アカデミーのマリア・アベルグ氏は言う。
「運動は、薬のような副作用の心配がなく、処方が容易で効果的な治療になります。プライマリケア医は、積極的に運動の指導を行うべきです」としている。
研究グループは、不安症のある286人の患者を対象に、運動プログラムを実施した。参加者は10年以上不安を抱えて暮らしており、平均年齢は39歳で、70%が女性だった。
参加者に、中程度(最大心拍数の60%が目標)の運動、または高強度の運動(同75%が目標)の、それぞれのセッションに12週間取り組んでもらった。
参加者は理学療法士の指導のもと、60分のトレーニングセッションに週3回参加した。セッションは有酸素運動と筋力トレーニングの両方が含まれていた。ウォームアップに続いて、12のステーションで45分間のサークルトレーニングを行い、最後はクールダウンとストレッチを行った。
その結果、運動に取り組んだ人は、運動についてのアドバイスのみを受けた対照群に比べ、不安症状が大幅に軽減された。
運動に参加した人はほとんどが、もとの中程度から高い不安レベルから低い不安レベルに移行した。不安症状の改善は、中強度で運動した人では3.62倍に、高強度の運動をした人では4.88倍に、それぞれ高まった。
「どのような運動でもメンタルヘルスの改善効果を期待できますが、より高い強度で運動すると、不安症状の改善効果はさらに強まるという結果になりました」と、ヨーテボリ大学のマリン ヘンリクソン氏は述べている。
Sitting more linked to increased feelings of depression, anxiety(アイオワ州立大学 2021年11月8日)
High Sitting Time Is a Behavioral Risk Factor for Blunted Improvement in Depression Across 8 Weeks of the COVID-19 Pandemic in April-May 2020(Frontiers in Psychiatry 2021年10月1日)
Drinking during COVID-19 up among people with anxiety and depression(ニューヨーク大学 2021年1月19日)
Increased alcohol use during the COVID-19 pandemic: The effect of mental health and age in a cross-sectional sample of social media users in the U.S.(journal Preventive Medicine 2021年4月)
Anxiety effectively treated with exercise(ヨーテボリ大学 2021年11月9日)
Effects of exercise on symptoms of anxiety in primary care patients: A randomized controlled trial Journal of Affective Disorders(2021年10月10日)