【新型コロナ】肥満や糖尿病などリスク因子が多いほど新型コロナは重症化 リスク因子を減らすことが重要
その結果、「高齢」「男性」「2型糖尿病」「肥満」といった要因が重複するほど、入院治療や集中治療となる危険性が高まることが明らかになった。
新型コロナの重症化を防ぐために、糖尿病をコントロールし、肥満を解消するなど、リスク因子を減らすことが重要と考えられる。
研究グループは、米国全土の複数医療機関から収集された大規模電子医療記録データベースをもとに、新型コロナのワクチン接種開始前の期間を対象に、新型コロナと診断された患者2万8,095人を解析した。
その結果、患者の背景因子のうち年齢が65歳以上、男性であること、2型糖尿病を有していること、BMI(体格指数)が30以上の肥満であることを、それぞれ1点として加算すると、点数が高い患者ほど、新型コロナが重症化する危険性が高まることを明らかにした。
これまで、小規模な調査により高齢や肥満などが新型コロナの重症化に関係するリスク因子であることは分かっていたが、複数のリスク因子が重積すると、危険性がどのくらい高まるかは明らかにされていなかった。
今回の大規模データの解析結果は、糖尿病をコントロールし、肥満を解消するなど、複数のリスク因子を回避することで、新型コロナの重症化を防ぐことができる可能性を示唆している。
「生活習慣病への意識を高めることや、危険性の高い患者に対して感染予防の重要性や理解を促すことで、感染後の重篤化や医療体制の負荷軽減につながることが期待されます」と、研究グループでは述べている。
研究は、北里大学薬学部の安藤航助教、堀井剛史助教、北里大学メディカルセンター研究部門の植松崇之室長補佐らの研究グループによるもの。研究成果は、総合科学誌「Scientific Reports」に掲載された。
新型コロナは、世界的にもっとも問題となっている感染症であり、男性・肥満・高齢などの患者の特徴は、重症化の危険因子となりうる。また、高血圧、慢性心疾患、肺疾患、2型糖尿病などの合併症も重症化に大きく影響することが報告されている。
とくに米国では、2型糖尿病や肥満が深刻な社会問題となっているが、これらのリスク因子が重積したとき、新型コロナの重症化にどの程度影響しているかは明らかにされていなかった。
そこで研究グループは、米国の大規模電子医療記録データベースを用いて、リスク因子の重積が新型コロナの重症化に与える影響を明らかにした。
米国の新型コロナResearch Databaseに集積されている匿名化された大規模電子医療記録データを用いて、2020年1月1日〜11月30日に新型コロナに感染した患者2万8,095人を対象に調査した。
新型コロナ患者のうち、65歳以上や性別、2型糖尿病、肥満などの背景因子がある場合に、診断日から30日以内に入院治療またはクリティカルケアを受ける危険性を評価した。
それぞれの背景因子ごとに関する解析をしたところ、もっとも入院やクリティカルケアとなりやすい因子は65歳以上の年齢であることだった。その次は2型糖尿病が高い危険性を示したが、メトホルミンやSGLT2阻害薬などの糖尿病治療薬を服用中の患者ではリスクが低下していた。
因子が重なるごとに、どれくらい危険性が高まるかを解析したところ、「年齢が65歳以上」「男性である」「2型糖尿病を有している」「肥満である」を、それぞれ1点として点数を加算すると、1・2・3・4点の患者は、入院する危険性がそれぞれ約3倍、約6.5倍、約16倍、約20倍に高まることが分かった。
さらに、クリティカルケアとなる危険性は2・3・4点の場合はそれぞれ約15倍、約38倍、約55倍と高いことが明らかになった。
糖尿病をコントロールし、肥満を解消するなど、複数のリスク因子を回避することで、新型コロナの重症化を大きく軽減できる可能性がある。
研究グループは、北里大学が主体となって進めている新型コロナ対策北里プロジェクトの一環として、新型コロナ感染症に関する臨床データを解析している。
「米国と日本では、2型糖尿病や肥満の割合や性質は大きく異なります。今後はワクチン接種データを加えた結果や、日本人やアジア人を対象とした解析を進め、種々のリスク因子と新型コロナの病態との関係などを明らかにしていきます」と、研究グループは述べている。
北里大学薬学部 臨床薬学研究・教育センター
Impact of overlapping risks of type 2 diabetes and obesity on coronavirus disease severity in the United States(Scientific Reports 2021年9月9日)