【新型コロナ】社会参加の機会が減り、高齢者のフレイルが進行 フレイルの高齢者は肺炎に1.9倍かかりやすい

2021年08月25日
 65歳以上の高齢者でフレイルがある場合、フレイルがない高齢者と比べて、肺炎に1.9倍かかりやすく、肺炎の重症化(入院措置になりやすい)のリスクも1.8倍に上昇することを、新潟大学が明らかにした。
 また、フレイル予備群の高齢者でも、フレイルなしの高齢者に比べ、肺炎に1.3倍かかりやすいとしている。
 神戸市の調査では、新型コロナの流行前後も継続してスポーツやボラティアなどの社会参加をしていた人や、新たに開始した人は、フレイルの割合が低いことが明らかになった。
フレイルの高齢者は肺炎に1.9倍かかりやすく、1.8倍重症化しやすい

 フレイルとは、加齢や病気による心身の衰えにより、要介護になるリスクが高くなった状態をいう。

 肺炎は日本を含む世界中で高齢者の死因の上位を占める。これまでの研究で、寝たきりなどの要介護状態の高齢者では、誤嚥性肺炎が起こりやすいことが分かっている。しかし、要介護状態ではないがフレイルの高齢者が、肺炎になりやすく重症化しやすいのかについてはよく分かっていなかった。

 そこで新潟大学の研究グループは、日本老年学的評価研究機構(JAGES)が2016年10月〜2017年1月の期間に行った、健康と暮らしについての約18万人対象のアンケート調査のデータを解析した。

 要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者が、過去1年間で肺炎にかかったか、また、肺炎かインフルエンザにかかった後に肺炎で入院したかを調べた。

 フレイルの判定は、厚生労働省が開発した基本チェックリストにより行った。フレイル以外で肺炎に関係する可能性のある年齢、性、教育年数、所得、家族構成、婚姻状況、喫煙、肺炎にかかりやすく重症化しやすくなる病気(糖尿病、呼吸器疾患、心疾患、腎臓疾患)、肺炎球菌予防接種等の影響を統計学的な方法で取り除いた。

フレイル前段階の高齢者でも1.3倍肺炎にかかりやすい

 その結果、フレイルの高齢者は、フレイルではない高齢者に比べ、肺炎に1.9倍かかりやすい可能性があることが明らかになった。また、フレイルの前段階にある高齢者も、フレイルではない高齢者に比べ、肺炎に1.3倍かかりやすいことも分かった。

 フレイルの高齢者は、フレイルではない高齢者と比べ、肺炎で入院しやすい可能性も1.8倍に上昇することも明らかになった。

出典:新潟大学大学院医歯学総合研究科国際保健学分野、2021年

 また、基本チェックリストにより、口腔機能低下またはうつ状態に該当した高齢者は、肺炎にかかりやすく、日常生活動作の低下または閉じこもりに該当する高齢者でも、肺炎で入院しやすいことが分かった。*

 *「閉じこもり」とは、1日のほとんどを家で過ごし、週に1回も外出しないこと。閉じこもりがちな生活が続くと、筋力や食欲が低下し、認知症やうつなどになりやすくなる。

 さらに、運動機能低下または低栄養状態に該当する高齢者も、肺炎になりやすく、かつ肺炎で入院しやすいことが分かった。

フレイルを予防することが、肺炎予防にもつながる

 フレイルを調べることで、高齢者が肺炎にかかりやすいのか、肺炎が重症化しやすいのかが分かる可能性がある。

 「フレイルを予防することが、肺炎予防にもつながる可能性があります。今後は、高齢者で重症化しやすいインフルエンザや新型コロナウイルス感染症にもフレイルが関係しているのかなどを明らかにしていく予定です」と、研究グループは述べている。

 研究は、新潟大学大学院医歯学総合研究科国際保健学分野の齋藤孔良助教、菖蒲川由郷特任教授の研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific reports」に掲載された。


コロナ禍で社会参加の機会が減り、高齢者のフレイルが進行
フレイル対策を生活のなかに取り入れることが重要

 フレイルとは、病気ではないが、年齢とともに筋力や心身の活力が低下し、介護が必要になりやすい、健康と要介護の間の虚弱な状態のこと。フレイルを早期発見し、フレイル対策の3つの柱である「社会参加」(つどいの場への参加、電話やメールでの交流)、「身体活動」、「栄養」(食・口腔)に取り組むことで、改善できると考えられている。

 一方、新型コロナの流行により、介護予防の運動プログラムを行う「通いの場」や「学習・教養サークル」などへの参加や、スポーツ、ボランティア活動の頻度が減少した高齢者が多い。

 コロナ禍の影響で、運動機能が下がったり、気分が沈んでいる傾向の高齢者が増え、フレイルの進行が懸念されている。

 日本老年学的評価研究機構(JAGES)が、2020年1月〜2月と2021年2月〜3月に神戸市の計3,265人の高齢者を対象に実施した調査によると、新型コロナの流行前後も継続して社会参加(趣味、スポーツ、ボラティアなどに月1回以上参加)していた人や、流行後に新たに社会参加を開始した人は、社会参加をしていない人と比べ、フレイルの割合が低いことが分かった。

新型コロナの流行前後も継続して社会参加をしていた高齢者や、流行後に新たに社会参加を開始した高齢者は、フレイルの割合が低かった。

出典:神戸市、2021年

 フレイルの入り口は社会参加の機会の減少とされている。コロナ禍で要介護の状態を予防するためには、社会参加はとくに重要となる。感染予防をしっかり行い、社会参加など、フレイル対策を生活のなかに取り入れることが重要だ。

 神戸市では、フレイル予防の取組みとして、介護施設などで社会参加活動が行うとポイントを貯められる「KOBEシニア元気ポイント」、1回90分の運動プログラムと体力測定などを組合わせ市内12ヵ所で開催している「フレイル改善通所サービス」、体操やフレイル予防などのミニ講座を放送する「元気!いきいき!!体操」などの対策をしている。

新潟大学大学院医歯学総合研究科国際保健学分野
JAGESプロジェクト(日本老年学的評価研究)
Frailty is associated with susceptibility and severity of pneumonia in older adults (A JAGES multilevel cross-sectional study)(Scientific reports 2021年4月12日)
コロナ禍で外出の機会が減ったことにより高齢者のフレイルが進行していることがわかりました(神戸市 2021年8月5日)

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[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所