フレイルは特定健診だけでは発見できない 65歳の3%に「サルコペニアの疑い」 痩せ・運動不足でリスク増

2021年07月06日
 65歳の神戸市民1,800人を対象にした調査で、約3%にサルコペニアの疑いがあることが、神戸大学の調査で明らかになった。
 サルコペニアが疑われる人は、肥満の合併はほとんどなく、特定健診ではむしろ好ましい検査結果がみられたが、詳しくは調べてみるとフレイルの傾向が強かった。サルコペニアの危険因子は痩せと運動不足であることも示された。
 「サルコペニアには早期からの介入が有効であることを考えると、将来の要介護や寝たきりを減らしていくうえでは、現在の特定健診に加え、サルコペニアを評価できる検査を受けることも必要です」と、研究者は述べている。
特定健診で「異常なし」の人でもサルコペニアの疑いが
フレイルの進行を下腿周囲径や握力で診断
新診断基準を用いた
サルコペニア疑いの診断

特定健診を受診した65歳の神戸市民を
対象に、新しい診断基準にもとづき、
サルコペニア疑いの診断を行った。

出典:神戸大学、2021年

 神戸大学の研究グループは、65歳の神戸市民1,768人の特定健診のデータを解析し、下腿周囲径や握力を調べたところ、少なくとも3%に筋肉の減少(サルコペニア)の疑いがあり、痩せや運動不足の人ほど健康上のリスクが高くなることを明らかにした。

 また、このサルコペニア疑いのある人達は、特定健診のデータに異常がなくても、日常生活での活動度や運動機能の低下、認知機能の低下、閉じこもり傾向など、要介護や寝たきりの前段階とされるフレイルの傾向があることも分かった。

 将来の要介護や寝たきりを防ぐためにも、高齢者の入り口である65歳からは、通常の健診では診断できないサルコペニアを評価するための検査が必要であることが示された。

 社会の高齢化にともない、加齢や痩せによる筋肉の減少(サルコペニア)や、身体機能や認知機能の低下をともなう要介護状態の前段階であるフレイルが、健康寿命を考える上で重要な問題として注目されている。

 しかし、サルコペニアの診断には専用の測定機器が必要であり、一般の医療現場や健診会場での診断が難しく、サルコペニアの有病率や実情は詳しく分かっていなかった。

 そこで、日本サルコペニア・フレイル学会は、新たな診断基準を2019年11月より導入し、比較的簡便にサルコペニアの疑いを診断できるようになった。

 65歳という高齢者の入り口の段階で、サルコペニア疑いの人がどれくらいいて、どのような病態にあるのかを明らかにすることは、高齢者のフレイルや要介護状態を減らすうえで重要だ。

 研究は、神戸大学大学院医学研究科健康創造推進学分野の田守義和特命教授らの研究グループによるもの。研究成果は、医学誌「Geriatrics and Gerontology International」にオンライン掲載された。

肥満でなくともサルコペニアの疑いが 痩せ・運動不足が危険因子

 神戸大学の研究グループは、65歳の神戸市民で、国民健康保険加入者の約1,800人を対象に、日本サルコペニア・フレイル学会が導入した新たな診断基準にそって、下腿周囲径と握力のデータから、サルコペニア疑いの有病率を明らかにした。

 同時に、特定健診の問診結果から、サルコペニア疑いの人たちの日常での身体的機能や認知機能を分析した。

 その結果、サルコペニア疑いの人は約3%いて、ほとんどが肥満を合併しておらず、痩せているほど疑いの頻度が増えることが明らかになった。

 サルコペニア疑いの人は、特定健診の検査結果は、サルコペニア疑いのない人に比較して、むしろ好ましい結果を示したが、心身機能の低下を評価する基本チェックリストを用いた聞きとりでは、日常の活動度、運動機能、栄養状態、閉じこもり、認知機能といった項目で心身の機能が低下していることが分かった。

BMIによるサルコペニア疑いの有病率
サルコペニア疑いは痩せているほど増加し、肥満との合併はほぼみられなかった。

「サルコペニア疑い」群で、フレイルに傾いていることを示唆した質問項目
質問に「はい」と答えた人の割合(%)

出典:神戸大学、2021年
通常の健診に加え、筋力や筋量を測定する検査も必要

 今回の研究で、日本の代表的な大都市のひとつである神戸で、65歳という若年高齢者であっても、少なくとも約3%の人にはサルコペニア疑いがあり、生活習慣病の予防を目的とした特定健診では異常がなくても、日常生活の広い範囲で心身の機能が低下していることが初めて証明された。

 「肥満や内臓脂肪の増加にともうメタボリックシンドロームの弊害はよく知られ、特定健診や特定保健指導など対策も進んでいます。一方で、超高齢化社会を迎え、加齢に伴うサルコペニアやフレイルはその重要性が増しているにもかかわらず、現状の解明は進んでいません」と、田守義和特命教授は述べている。

 「今回の研究で、65歳の人でも3%がサルコペニア疑いであり、痩せや運動不足が原因となり、フレイルに傾いていることが分かりました。65歳からは通常の健診に加え、筋力や筋量を測定する検査が必要です。65歳以上では肥満のみならず、痩せにも注意し、バランスの良い食事や適切な運動を心がけることが大切です。とくに昨今、コロナ禍で外出する機会が減り自宅に居る時間が長くなっていますが、できるだけ散歩や体操を行うことが重要です」と指摘している。

神戸大学大学院医学研究科 内科学講座 糖尿病・内分泌内科学部門
Clinical features of 65-year-old individuals in Japan diagnosed with possible sarcopenia based on the Asian Working Group for Sarcopenia 2019 criteria(Geriatrics and Gerontology International 2021年6月23日)
フレイル診療ガイド(日本サルコペニア・フレイル学会)


[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所