【新型コロナ】コロナ禍で孤立する人が増えている 孤独は肥満やメタボのリスクを上昇 3つの方法でストレス解消

2021年06月14日
 新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、社会的孤立を感じている人が増えている。
 孤独は肥満やメタボのリスクも上昇させる。孤独感が長引くとストレスになりやすい。
 ストレスを解消する効果的な方法を、早く見つけることが必要だ。孤独によるストレスを解消するのに役立つ方法をご紹介する。
孤独を感じている人は3人に1人以上

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、社会的孤立を感じている人は増えている。ある調査によると、孤独を感じている米国人は3人に1人以上に上り、その数は増加している。

 すべての人がソーシャルディスタンシング(社会的距離をとること)を求められ、周囲の人と約2メートルの距離をとり、食料品店や美術館など、不特定多数の人が出入りする場所に足を運ぶ頻度も減らしている。

 このようなストレスが高まっている時期に、社会的に孤立した状況におかれると、多くの人は不安をつのらせ、メンタルヘルスにマイナスの影響があらわれるおそれがある。

 孤立していると感じる期間が長くなればなるほど、メンタルヘルスに及ぼす悪影響は大きくなる。孤独感は、不安やストレス、認知機能の低下を引き起こす。

 心の健康を保つためには、ビデオチャットなどのテクノロジーを利用して交流を保ったり、運動をしたり、できる限り外に出て自然にふれたり、マインドフルネスを試してみるのが効果的だ。

社会的孤立のなかで、心の健康を保つにはどうすれば良い?

 コロナ禍では、ビデオチャットなどのテクノロジーを利用して、親しい人たちと連絡をとり続けている人が多い。これは、社会的孤立から心の健康を守るのに役立つ重要な方法のひとつだ。

 「孤立は多くの場合、孤独感や不安、ときには抑うつ状態などのマイナスの影響をもたらします」と、米マサチューセッツ大学老年学部のジェフリー バー教授は言う。

 「孤立により、精神的に追い込まれるだけでなく、身体的にも悪影響があらわれます。心臓病や脳卒中、認知症のリスクが30%上昇するという調査報告もあります」。

 「孤独感が長引くと、毎日の生活でストレスになります。ストレスを解消する効果的な方法を、早く見つけることが必要です」と、バー教授は指摘している。

 79歳のバーバラ ストッパーさんは、6年前に夫を亡くした。以前は、カードゲームや昼食会の集まりで、コミュニティの人々とのつながりを維持していたが、コロナ禍でそれも難しくなった。

 ストッパーさんは、新型コロナが拡大した期間に、ビデオチャットを利用して子供たちと連絡をとり続けた。彼女は、インターネットを使用して、カードゲームのネットワークを広げ、オンラインで新しいプレーヤーと出会い、仮想トーナメントに参加することにも挑戦した。

 ストッパーさんは新型コロナの予防ワクチンの接種をすでに受けているが、対面での接触にはまだ制限がある。「大変な時期だと思いますが、子供たちのことを思い浮かべると、気持ちがやわらぎます」と話している。

運動にグループで参加すると孤独感は減少し、社会的つながりが改善する

 運動にストレスを軽減する効果があることは、多くの研究で裏付けられている。運動をすると、エンドルフィン(幸福感をもたらす化学物質)の分泌が促され、逆にコルチゾールやアドレナリンなどのストレスホルモンの分泌は少なくなる。

 米シダーズ サイナイ医療センターのアリソン メイズ氏らは、ロサンゼルス近郊の図書館やレクリエーション センターなど9ヵ所の施設で、地元のコミュニティ グループと提携し、50歳以上の人々を対象とした、運動と健康管理の教室を開催した。

 教室には52〜104歳の男女382人が参加し、2型糖尿病などの慢性疾患や、関節炎などを改善することに着目したエクササイズに取り組んだ。6ヵ月コースを終了したころには、参加者の孤独感は6.9%減少し、社会的つながりが3.3%改善していた。

 参加者のほとんどで、グループで運動に参加することは好評だった。運動教室は現在も継続されており、オンラインでの開催も計画しているという


グループで運動に取り組むと孤独や社会的孤立を減らすことができる
シダーズ サイナイ医療センターが公開しているビデオ

自然とふれあうことでストレス軽減を期待できる

 自然とふれあうこと、屋外に出て太陽の光を浴び、緑の多い場所を歩くことで、気分を改善でき、ストレスを軽減する効果を期待できるという研究が、相次いで発表されている。

 自然とふれあい、体を動かすことで、うつや不安、孤独感などのメンタルヘルスを改善できる。肥満やメタボにも対策でき、心身の健康増進を期待できる。

 自然にふれることで、リラックス時に高まる副交感神経活動が亢進し、不安との関連が指摘されている脳前頭前野活動が鎮静化する効果を得られることも分かってきた。

 自然の豊かな場所にいる時間は長いほど良く、ウォーキングなどの運動を含めるとさらに効果的だ。でも、その余裕がないときでも、たった20分間を静かに過ごすだけでも、ストレスを軽減する効果を期待できる。

森林浴など自然とのふれあいによりストレス対処力が向上

 筑波大学が働く人を対象に行った研究で、森林での散策や緑地での散歩の頻度が高いほど、ストレス対処力が向上することが明らかになった。

 筑波大学医学医療系の笹原信一朗准教授ら研究チームは、森林浴など自然とのふれあいがメンタルヘルスに良い影響を与えることに注目。

 森林浴をするとリフレッシュ効果を得られるが、勤労者が森林浴を習慣として行った場合のストレス対処力との関連についてはよく分かっていなかった。

 そこで、筑波研究学園都市内で働く人を対象に調査した。20〜59歳(平均年齢42.7歳)の男女6,466人を対象に、ハイキングや山歩き、山中でのキャンプなどの頻度と、ストレス対処力との関連を調べた。

 その結果、森林散策や緑地散歩の頻度が高いほど、ストレス対処力が有意に高いことが示された。ストレス対処力を示す指数が高くなる割合は、森林散策を週に1回以上行っている人では3倍に、緑地散歩を週に1回以上行っている人では2.7倍にそれぞれ上昇した。

「マインドフルネス」でメンタルトレーニングを

 「マインドフルネス」が、ストレス管理に役立つメンタルトレーニングとして期待されている。

 マインドフルネスを簡潔にあらわすと「今、ここで起きていることを、ありのまま感じて、受け止めること」。自分の体や心の状態を意識することで、ストレスがあっても、否定的な感情にとらわれることなく、平静を保てるようになると考えられている。

 マインドフルネスは、日本の禅や瞑想をベースにしたメンタルトレーニングとして米国で発達した。マインドフルネスを日本語に訳すと「気付くこと」「意識すること」という意味になる。

 米カーネギーメロン大学は、マインドフルネス瞑想が、高齢者の孤独感を軽減するという研究を発表した。研究には、マインドフルネス瞑想に興味をもっている、55〜85歳の成人40人が参加した。

 参加者は、8週間のマインドフルネスにもとづくストレス軽減プログラムに取り組み、毎週2時間のミーティングで呼吸法など、日常にマインドフルネスを取入れる方法を学び、自宅でも毎日30分間の瞑想をした。

 その結果、マインドフルネスに取り組んだ人は、炎症を誘発する遺伝子の発現が減少し、体内で炎症が起きたときなどに上昇するC反応性タンパク(CRP)が低下していた。

 「スポーツジムで筋肉を鍛えられるのと同じように、心を鍛えることは可能です。瞑想のトレーニングが高齢者の心の健康を改善するための効果的である可能性があります」と、同大学の心理学部のデビッド クレスウェル氏は述べている。

How Social Isolation Can Harm Health as You Age - and How to Prevent It(米国心臓学会 2021年5月7日)
Exercise classes can reduce loneliness, social isolation in seniors(シダーズ サイナイ医療センター 2020年11月12日)
The Leveraging Exercise to Age in Place (LEAP) Study: Engaging Older Adults in Community-Based Exercise Classes to Impact Loneliness and Social Isolation(The American Journal of Geriatric Psychiatry 2020年10月15日)
A room with a green view: the importance of nearby nature for mental health during the COVID‐19 pandemic(Ecological Applications 2020年11月17日)
Association between forest and greenspace walking and stress-coping skills among workers of Tsukuba Science City, Japan: a cross-sectional study(Public Health in Practice 2021年1月3日)
Association between forest and greenspace walking and stress-coping skills among workers of Tsukuba Science City, Japan: A cross-sectional study(Public Healthin Practice 2021年1月3日)
A regular dose of nature may improve mental health during the COVID-19 pandemic(Wiley 2020年11月18日)
Mindfulness Meditation Reduces Loneliness in Older Adults, Carnegie Mellon Study Shows(カーネギーメロン大学 2012年7月24日)
Mindfulness-Based Stress Reduction Training Reduces Loneliness and Pro-Inflammatory Gene Expression in Older Adults: A Small Randomized Controlled Trial(Brain, Behavior, and Immunity 2012年10月)

[ Terahata ]