「太極拳」「ヨガ」で糖尿病と肥満を改善 お腹周りを引き締める効果はウォーキングと同じ

2021年06月14日
 太極拳に、ウォーキングなどの有酸素運動と同じように、お腹周りの脂肪を落とし、肥満を改善する効果があることが分かった。
 ヨガに、慢性炎症を軽減し、肥満やメタボを改善する効果があるという研究も発表されている。
 「どんなものであれ運動を習慣として続けることは健康のために必要です。ご自分の取り組みやすい運動を早くみつけることが重要です」と、研究者はアドバイスしている。
太極拳が中高年者の過剰な体脂肪を減少

 太極拳は、ゆったりとした動きと深い呼吸が特徴となる、中国武術のひとつ。その太極拳に、ウォーキングなどの有酸素運動と同じように、お腹周りの脂肪を落とす効果があるという研究が発表された。

 研究は、カリフォルニア大学、香港大学、香港中文大学によって行われたもので、研究成果は、米国内科学会が発行している医学誌「アナルズ オブ インターナル メディスン」に発表された。

 「太極拳は、あまり運動をしたことがない人や、高齢者にも勧められる運動と言われていますが、これまで健康上のメリットを科学的に検証した研究はほとんどありませんでした」と、香港大学公衆衛生学部のパルコ シウ氏は言う。

 「今回の研究では、太極拳はバランスや筋力アップにも効果的であることが示されました。太極拳が中高年者の過剰な体脂肪を減少させる効果があることが示されたのは、おそらく今回がはじめてです」としている。


太極拳の横ステップ
Tai Chi for Healthが公開しているビデオ

太極拳に12週間取り組むとウエスト周囲径が減少

 「中心性肥満」は、文字通り体の中心が肥満している状態で、内臓脂肪型の肥満をさす。中心性肥満は、メタボリックシンドロームや2型糖尿病のリスクを高めることが知られている。

 中心性肥満により、脂質異常症、高血糖、高血圧、善玉のHDLコレステロールの低下などが引き起こされ、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患の危険性が上昇する。

 研究グループは、中心性肥満があると判定された50歳以上の543人の参加者が、運動介入なしの対照グループ(181人)、従来の有酸素運動と筋力トレーニングを行うグループ(181人)、太極拳を行うグループにランダムに割り当てた。運動をするグループは、運動インストラクターによるワークアウトを、週に3回、1 時間ずつ受けた。

 12週間後、太極拳に取り組んだグループは、運動しなかったグループに比べ、ウエスト周囲径が1.8cm多く減少しており、その効果は有酸素運動や筋力トレーニングと同等だった。太極拳には、体重の減少や、HDLコレステロールを改善する効果があることも示された。

太極拳は簡単に取り組むことができる

 ゆったりとした動きと呼吸をともなうエクササイズである太極拳は、「動きをともなう瞑想」と表現されることもある。アジア諸国を中心に人気があり、米国などの西欧でも約200万人が実践しているという。

 「太極拳は、中心性肥満をコントロールするために、従来の運動と同等の効果的な方法になりうることが示されました。運動をしたことがなかったり、苦手に感じている中高年者にとっては朗報です」と、シウ氏は言う。

 「太極拳は、コミュニティセンターやスポーツ・フィットネスクラブなどで簡単に取り組むことができます。転倒予防、変形性関節症の管理、ストレス低下などに効果的であることも指摘されています」。

 ただし、これまで運動について調査した研究では、心肺や心血管の健康改善、有酸素フィットネスを向上するためには、ウォーキングなどの有酸素運動が有利であることが示されていた。

 今回の研究でも、太極拳に取り組んでいる人は、運動や身体活動以外でも、食事の栄養改善など、健康的な生活スタイルを実行している傾向があることも指摘されている。

 「太極拳の健康への影響やメカニズムの詳細について、多くはまだ解明されていません。太極拳の健康上のベネフィトを解明するために、さらなる研究が必要です」と、シウ氏は付け加えている。

ヨガにもメタボや高血圧を改善する効果が
炎症性アディポカインが減少

 香港大学などの過去の研究では、ヨガにもメタボや高血圧を改善する効果があることが明らかになっている。

 ヨガに取り組むことが、慢性炎症を軽減し、メタボの管理を改善する、効果的な生活スタイルになる可能性がある。

 これまでの研究でも、ヨガは脳の健康と認知力を高め、うつ病の症状を緩和し、糖尿病患者の症状をコントロールするのにも役立つことが示されている。

 研究グループは、メタボと判定された97人の参加者を、ヨガに取り組むグループと運動をしない対照グループに無作為に割り当てた。

 週3回の1時間のヨガセッションに1年間取り組んだグループは、メタボや血圧値が改善した。さらに炎症性アディポカインが減少し、抗炎症性アディポカインが増加していた。

 アディポカインは、脂肪組織から放出されるシグナル伝達タンパク質で、肥満にともない増加し、多くは代謝に悪影響をもたらす。

 「研究結果は、ヨガのエクササイズが慢性炎症を軽減し、メタボを管理するために、効果的なライフスタイル介入として役立つ可能性があることを示しています。どんなものであれ運動を習慣として続けることは健康にとって必要です。ご自分にとってやりやすい運動を早くみつけることが重要です」と、シウ氏は指摘している。

Study Suggests Tai Chi Can Mirror Healthy Benefits Of Conventional Exercise(カリフォルニア大学ロサンゼルス校 2021年6月1日)
Effects of Tai Chi or Conventional Exercise on Central Obesity in Middle-Aged and Older Adults: A Three-Group Randomized Controlled Trial(Annals of Internal Medicine 2021年6月1日)
Yoga Benefits Patients With Metabolic Syndrome(Wiley 2018年2月7日)
Yoga Training Modulates Adipokines In Adults With High-Normal Blood Pressure And Metabolic Syndrome(Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports 2017年12月5日)

[ Terahata ]