20歳以降の「体重10kg以上増」は高血圧・脂質異常症・高尿酸血症・メタボと関連 日本人3万人超を調査
20歳以降の成人期の体重増加は、▼過去の喫煙歴、▼9時間以上の長い睡眠時間、▼朝食を抜くこと、▼日常生活での活動量が少ないことと関連していることが明らかになった。
成人期の体重増加は、ウエスト周囲長が大きく、高血圧、脂質異常症、高尿酸血症、メタボリックシンドロームの有病率が高いことと関連していることも分かった。
研究は、岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構(IMM)と、岩手医科大学内科学講座糖尿病・代謝・内分泌内科分野の武部典子講師と石垣泰教授を中心とした研究グループによるもの。研究成果は、国際科学誌「Diabetes, Metabolic Syndrome and Obesity: Targets and Therapy」にオンライン掲載された。
2010年「国民健康・栄養調査」によると、岩手県のBMI25以上の肥満者の割合は38.7%と全国で第7位であり、肥満を減らすことが重要な課題となっている。
これまで、日本人などの東アジア民族は欧米人に比べ軽度の肥満でも内臓脂肪が蓄積しやすく、代謝異常を合併しやすいことが報告されている。また、20歳まではやせ型体型であっても、成人後に体重が増加することは、現在の体重とは独立してメタボリックシンドローム、高血圧などと関連することも報告されている。
成人期の体重増加に関連するリスク因子を理解することは、それに連なる生活習慣病の予防の一助となることが期待される。しかし、アジア人での成人期の体重増加とそれに関連する生活習慣関連因子についての詳細な検討はない。
そこで研究グループは、IMMが実施した岩手県地域住民コホート調査に参加した3万2,675人のデータを用いて、20歳以降の成人期の10kg以上の体重増加と、それに関連する生活習慣および生活習慣病を解析した。
20歳時以降の体重増加が10kg以上の群3,601人(男性1,709人/女性1,892人)を体重増加群とし、この群と、性、年齢、現在の体格指数を傾向スコアでマッチさせた20歳以降の体重増加が10kg未満の群3,601人(男性1,636人/女性1,965人)を体重非増加群とした。
両群を比較した結果、現在の体格指数が同程度であっても、体重増加群のウエスト周囲長は非体重増加群よりも大きいことが分かった。また、体重増加群では非増加群に比べ、高血圧、脂質異常症、高尿酸血症の有病率が高く、メタボリックシンドロームの該当例が多いことも分かった。
なお、2型糖尿病、慢性腎臓病(CKD)については、有意差は認められなかった。
さらに、成人期体重増加に関連する生活習慣関連因子を、性、年齢のほか、肥満リスクと考えられる因子で解析したところ、喫煙歴(OR 21.163)、朝食の欠食(OR 1.252)、睡眠時間9時間以上(OR 1.613対5?7時間)が、それぞれ成人期肥満との関連が高いことが明らかになった。
それとは逆に、1日1時間以上の歩行時間は、成人期肥満との関連が低いことが示された。1日の歩行時間が1?3時間(OR 0.821)、3?5時間(OR 0.818)、5時間以上(OR 0.821)となり、いずれも1日1時間に比べ成人期肥満が減った。
次に、成人期体重増加と生活習慣病との関連について、性、年齢のほか、疾病リスクと考えられる因子で調整し解析した。
その結果、成人期体重増加は、高血圧(OR 1.260)、脂質異常症(OR 1.341)、高尿酸血症(OR 1.307)、メタボリックシンドローム(OR 1.460)と有意な関連があることが分かった。
ここでも、2型糖尿病(OR 1.100)、慢性腎臓病(CKD)(OR 1.087)については、有意差は認められなかった。
このように、20歳以降の成人期の体重増加は、▼過去の喫煙歴、▼9時間以上の長い睡眠時間、▼朝食の欠食、▼日常生活での活動量が少ないことと関連していた。
また成人期に体重が増加した群では、ウエスト周囲長が大きく、高血圧、脂質異常症、高尿酸血症、メタボリックシンドロームの有病率が高いことが分かった。
「規則正しい運動や食事、適切な睡眠時間などの生活習慣に留意し、成人期の体重増加を予防することが、生活習慣病の予防につながる可能性があります」と、研究者は述べている。
岩手県地域住民コホート
いわて東北メディカル・メガバンク機構(IMM)
岩手医科大学 内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌内科分野
Weight Gain after 20 Years of Age Is Associated with Unfavorable Lifestyle and Increased Prevalence of Metabolic Disorders(Diabetes, Metabolic Syndrome and Obesity: Targets and Therapy 2021年5月20日)