年末年始は体重のコントロールを乱しやすい 簡単に実行できる8つの対策 この時期を上手に乗り切るために

2020年12月23日
この時期を上手に乗り切るために
 年末年始は、ふだんの生活スタイルを維持するのが難しく、体重のコントロールを乱しやすく、内臓脂肪が増えてメタボになりやすい時期だ。米国糖尿病学会(ADA)やハーバード大学は、この時期を上手に乗り切るために、簡単に実行できる8項目の対策をアドバイスしている。
食事の偏り、運動不足、ストレス・・・
年末年始は何に気を付ければ良いか

 年末年始は、ふだんの生活スタイルを維持するのが難しくなる。リラックスして過ごせる機会が増えるが、そのため食事に偏りが出たり、運動不足になり、余分なストレスをためこむおそれがある。

 「冬に休日が続くと、多くの人はそれまで続けていた健康的な習慣を守れなくなりがちになります。休日が続いた後の1月に、体重やウエスト周囲径を増やし、糖尿病のコントロール指標であるHbA1cを悪くする人が多いのです」と、ハーバード大学医学大学院の身体医学部のベス フレイツ氏は言う。

 「休日にはふだん通りの食事を続けるのが難しくなります。家族や知人との交流は心を満たしてくれますが、おいしい食べ物で胃を満たすときには注意が必要です。食事のときは食べるスピードを意識的に遅くし、一口一口をよく味わって食べることが大切です。重要なことは、食物をよく噛んで、味わって食べることです」と、フレイツ氏はアドバイスしている。

 「食事や運動の記録や、簡単な予定を書き込めるスマートフォンのアプリを活用するのも1つの方法です。ご自分の毎日の行動を追跡することで、健康的な生活をより意識できるようになります。失敗しているときには知らせてくれる機能が付いたアプリもあります」。

 「計画通りにいかない日もあり、ときには羽目を外すこともあるでしょう。肝心なのは、あきらめないで、毎日の生活で学び、成長し、新しい目標を設定し、進歩するためにやる気を維持することです」と、フレイツ氏は指摘している。

今年の年末年始はいつもと違う どう対策すれば良いか?

 今年は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行のため、いつもの年と異なる年末年始を迎えることになる。感染の危険性が高まることから、忘年会や新年会、会食やパーティーなど、換気の悪い狭い場所に集まるのを自粛することが求められている。そのため、少し憂鬱になっている人もいるかもしれない。

 「いつもの年であれば、家族や久しぶり会う知人などとの交流により、心が満たされることを期待できますが、今年の休日はコロナ禍のために、それも難しくなっています。しかし、感染対策をきちんとしていれば、家族や友人と会うのが不可能というわけではありません」と、ハーバード大学医学大学院の精神医学部のヒラリー コネリー氏は言う。

 「インターネット技術の発達により、今日では、オンラインでの交流や、遠隔診療まで行われるようになっています。仮想空間と現実空間の見分けが付きにくくなっていますが、まとまった時間のとれる連休を利用して、そうした新しいものに取り組んでみるのも一考です。新しい社会交流のあり方が生まれるかもしれません」。

 「大切なことは、感染対策をしながら、長い休日をどのように過ごすか、計画と準備をしておくことです」と、コネリー氏は指摘している。

年末年始をどう過ごす? 簡単に実行できる8つの対策

 米国糖尿病学会(ADA)やハーバード大学医学大学院などは、ホリデーシーズンを健康的に過ごすために、次の対策をするようアドバイスしている。


1 年末年始をどう過ごすか計画を練る

 年末年始は生活が不規則になりがちで、ふだん通りの食生活を続けるのが難しくなる。仕事の片付け、忘年会や新年会など、子供の相手をして過ごす時間が増えるなど、ストレスがたまりやすい時期でもある。

 事前に「いつ・どこで・何をするか」という予定を、カレンダーや手帳に書き留めておくと、健康的な食事や運動のための時間を確保できるようになる。


2 食事はシンプルに計画的に

 休日にいろいろな予定が入ると、食事が単調になりがちになり、外食や調理済み食品を利用する頻度も増える。

 食事の時間はなるべく通常の生活に合わせるようにするのが理想的だ。食事の時間が遅れるときは、通常の食事の時間に軽食を摂り、その後に食事を摂るときはなるべく軽く食べるなどして調整しよう。

 健康的な食事のためには、自宅で食事の支度をするのがベストだが、それが難しい場合は、台所に健康的な食品を買い置きしていこう。カット野菜や低脂肪の乳製品、玄米や全粒粉のパンなどであれば、手軽に準備できる。


3 運動を続ける

 運動や身体活動は自然なストレス解消法になる。血糖や血圧のコントロールにもつながり、多くの健康上のメリットがある。

 30分の適度な運動を週に5日行うのが理想だが、それが難しい場合は、1日に10〜15分のウォーキングなどの運動を1日に2〜3回とりいれても効果がある。

 ウォーキング以外でも、掃除などの家事、家族との散歩、フリスビーやサッカーなどの遊び、子供や孫と遊ぶなど、生活活動はすべて運動になる。

 運動を続けるために、一緒に運動する仲間をつくり励ましあったり、家族と一緒にウォーキングしたり、冬でも利用できる場所を確保するなどして対策しよう。


4 食べ過ぎたカロリーを燃焼するのは大変

 会食やパーティーが続くと、自分がどれだけ食べたかを把握するのが難しくなる。パーティーでは多くの料理が出るので、つい食べ過ぎてしまうという人は多い。

 1日の食事で脂肪の多い食品を500kcal分余計にとる生活が続くと、摂り過ぎたカロリーは1週間で3,500kcalになり、2週間で体重が1kg増える計算になる。

 増え過ぎたカロリーを運動で燃焼するのは大変だ。食べ過ぎを防ぐことが、肥満を避けるためのもっとも有効な手段となる。

 会食などの予定があるときは、食欲をコントロールしやすくするために、野菜サラダや低糖質の全粒粉パンなどを軽く食べてから出かけるようにし、空腹の状態では行かないようにしよう。


5 自分が何を食べたいのか考えよう

 脳が満腹であると感知するために、食べはじめてから20分以上の時間が必要だ。食事では、なるべくゆっくり食べよう。

 料理を皿に盛るときはなるべく小さいお皿を選ぼう。皿が小さいと食事の量を抑えられ、満足感も得やすいという研究結果がある。

 揚げ物やバターたっぷりの高カロリーの食品を避けて、肉や魚でも、できるだけシンプルに調理されたものを選ぼう。サラダはヘルシーと思いがちだが、油分たっぷりのドレッシングをかけると高カロリーになるので注意が必要だ。

 パーティーなどの目的は、食べることだけではなく、人との会話や交流だ。片手にお皿、もう片方に飲み物となると、人と話すのも大変になる。そう意識しておけば、食べ過ぎや飲み過ぎを防げる。


6 食物繊維を十分に摂る・炭水化物を摂り過ぎない

 食物繊維が豊富に含まれるカット野菜などを、台所のすぐ手が届く場所に置いておくと、野菜の不足を補うことができる。

 食物繊維は、食物が胃から小腸へ移動する時間を遅らせ、吸収を遅くする。炭水化物を含む食品がゆっくり吸収されるようになるので、インスリンの分泌が食べた分に追いつかない体質の人でも、食後の血糖値上昇をある程度抑えることができる。

 食物繊維が豊富に含まれる野菜を食べれば、満腹感を得やすくなり、食べ過ぎを抑えられる。100gの生の野菜に2〜3gの食物繊維が含まれている。茹でてかさを減らせば、野菜をたくさん食べられる。

 また、餅、カレー、ウスターソース、マッシュポテト、詰め物、ディナーロール、アップルパイ、デザートなどには多くの炭水化物が含まれるので、注意が必要だ。

 3大栄養素(炭水化物、タンパク質、脂肪)の中で、血糖を上昇させやすいのは炭水化物だ。食後の血糖値の上昇を抑えるために、玄米や全粒粉など食物繊維が豊富に含まれる精製されていない穀類を摂ったり、炭水化物をタンパク質や脂肪と同時に摂り、炭水化物の消化・吸収を遅くするなどの工夫が役立つ。


7 ストレスをためない

 ストレスによって、肥満やメタボに悪影響が出てくるおそれがある。ふだん通りの食事を続けられなくなったり、アルコールを飲み過ぎたり、運動不足が続くことも、ストレスの原因になる。

 年末年始の休暇には、想定外の用事が入り忙しくなり、さらに生活が乱れやすくなる。この時期に外せない予定を作り過ぎないようにし、余裕をもって計画をたてよう。

 たとえ計画通りに1日を過ごせないときでも、くよくよと悩まないようにし、家族や仲間とともに過ごす時間を楽しもう。次の日から、食事や運動、血糖自己測定などの日課を取り戻せば、休日を有意義に過ごせる。

 睡眠を十分にとることも大切だ。睡眠不足になると、高脂肪・高糖質の食品を食べたくなり、血糖コントロールを良好に保つのが難しくなる。7〜8時間の睡眠時間を目安に、余裕をもって1日を過ごそう。


8 体重を毎日はかる

 年末年始は、体重コントロールが難しい時期だ。「食べ過ぎ」がもっとも起きやすいのがこの時期であることが、ハーバード公衆衛生大学院の調査で明らかになっている。

 多くの人がこの時期に体重を平均1.5kg以上増やすという。体重を増やさない人でも、平日は食べ過ぎないようにしても、週末には食べ過ぎてしまい、食事のコントロールを相殺するというサイクルを繰り返すことが多い。

 「少なくとも、今よりも体重を増やさないようにしよう」という気持ちを強くもつことが大切だ。体重を決まった時間に毎日はかることを習慣にすれば、体重をコントロールしやすい。体重計を台所や冷蔵庫のそばに置いて体重を毎日はかり、減量に成功した人もいる。

おせち料理やお餅はカロリー・塩分が多い

 糖尿病の食事療法では、「食べてはいけないものはない」とされている。しかし、一般的なおせち料理の多くは味が濃く仕上げてあり、1食でカロリー1,000kcal、塩分10gを超えることもあるので注意が必要だ。

 おせち料理は保存性を高めるために味付けが濃く、糖分・塩分・酢などを多く使ってあるのが特徴。「栗きんとん」「伊達巻き」「黒豆」は特にカロリーが多い。「田作り」「数の子」「かまぼこ」「エビの煮物」も塩分が多いので、1回に全種類を無理に食べないことが大切だ。

 「紅白なます」「煮しめ」などの野菜料理を自分で作るときは、だしや柑橘類の香りを効かせて減塩しよう。

 おせち料理は、3日続けて食べなければいけないわけではない。お祝い膳を気持ち程度にとどめて、ふだんの食事に早く戻した方が無難だ。


餅は高カロリー

 餅は、もち米をふかして突き固めた保存食で、ご飯に比べると水分量が少なく密度が高いのが特徴。

 ご飯1杯(150g)のカロリーは252kcalなのに対して、切り餅1個(50g)のカロリーは117kcal。つまり餅2個とご飯1杯のカロリーは同じくらいになる。餅は2個までにとどめた方が無難だ。

 もちを使ったメニューのお勧めは、野菜をたっぷり使ったお雑煮だ。きなこもちやぜんざいなどは砂糖を多く使っているが、野菜を一緒に摂れるお雑煮は食物繊維も摂れるので、血糖値の上昇を抑えられる。


冬の鍋料理は栄養面でも優れている

 鍋料理は豆腐、魚、肉など、いろいろな食材を使ったものがあり、味付けも多彩にある。これに野菜類を加えれば、蛋白質、ビタミン、ミネラルなどをバランスよくとることができる。

 野菜をたっぷり入れ、きのこ、こんにゃく、昆布などを使った鍋料理を食べるのは、寒い冬には堪えられない。

 鍋料理は短い時間で調理でき、大勢で食べても、1人や2人で食べても楽しめる。水と昆布で野菜などを煮る「常夜鍋」は、いたって簡単に作れる。小ぶりの土鍋に昆布を引き、醤油で薄味にして日本酒を加え、ほうれん草や小松菜、白菜と、豚肉の薄切りをゆでながら、ゆったりとした時間を楽しめる。

Holiday Meal Planning(米国糖尿病学会)
Happy holidays? Here's how to cope when your usual traditions get uprooted(ハーバード大学医学大学院 2020年11月)
Keep your health habits on track during the holidays(ハーバード大学 2019年11月)
5 Healthy Eating Tips for the Holidays(米国疾病予防管理センター 2020年12月14日)


[Terahata]