ウォーキングなどの運動は「魔法の薬」 座ったままの時間を減らすだけでも効果 室内運動もお勧め
2020年07月22日
ウォーキングなどの運動は「魔法の薬」。1日の歩数を2,000歩増やしただけでも、脳卒中や心筋梗塞のリスクは低下する。
一方、座ったままでいる時間が長い人は、腹囲、血糖値、中性脂肪、コレステロールなど、生活習慣病と関連の深い値が悪化しやすいことが分かっている。
座ったままの時間を減らし、立ち上がって軽い運動をしただけでも、血糖は低下することが明らかになった。
一方、座ったままでいる時間が長い人は、腹囲、血糖値、中性脂肪、コレステロールなど、生活習慣病と関連の深い値が悪化しやすいことが分かっている。
座ったままの時間を減らし、立ち上がって軽い運動をしただけでも、血糖は低下することが明らかになった。
運動は「魔法の薬」
運動は「マジック ピル(魔法の薬)」とも呼ばれ、2型糖尿病や高血圧、脂質異常症など、生活習慣病の予防・改善のために欠かせない。
ウォーキングなどの運動には「血糖が下がる」「血圧が下がる」「悪玉のLDLコレステロールが下がる」「中性脂肪が下がる」など、さまざまなメリットがある。また、運動をすると、善玉のHDLコレステロールが血液中に増える。HDLコレステロールは血管の壁にたまった悪玉コレステロールを回収して、動脈硬化の進展を抑えてくれる。
血糖値の高い人が運動を行うと、ブドウ糖がすぐに消費され血糖値が下がる。さらに運動を続けていると、血中のブドウ糖を調整するインスリンが効きやすい体質に変わっていく。
日本人約7万人を10年間追跡した研究でも、毎日1時間以上歩く人は30分歩く人に比べ、脳梗塞で死亡するリスクが3割近く減少し、心筋梗塞を含む心血管疾患で死亡するリスクが2割近く減少することが示されている。
まずはウォーキングの歩数を2,000歩増やしてみる
英国のレスター大学などの研究によると、血糖値の高い人は、ウォーキングで1日2,000歩多く歩けば、心血管疾患のリスクを下げることができる。1日の歩数を4,000歩増やせば、リスクはさらに低下する。
この研究には、世界40ヵ国の耐糖能異常(IGT)のある成人9,306人が参加した。耐糖能異常は、糖尿病と診断されるほどではないが、血糖値が高めの状態をさす。この段階でも動脈硬化は始まっており、心臓病や脳卒中のリスクが上昇することが知られている。
研究では、ウォーキングで毎日2,000歩多く歩いていた人では、実験開始から6年後に、心筋梗塞などの心血管疾患のリスクが8%減少したことが示された。ウォーキングは会話ができるくらいの通常の歩行と、やや活発な歩行を取り混ぜて、20分くらい行うと効果があるという。
歩数を4,000歩増やすとさらに効果が増す
さらに、1日に4,000歩多く歩いていた人では、心血管疾患のリスクは16〜20%減少した。脂質異常症の治療にスタチンという治療薬が広く使用されている。スタチンは心臓発作や脳卒中のリスクを低減することが知られているが、4,000歩のウォーキングはスタチンと同等の効果があるという。しかもウォーキングには、腰や膝などの運動器がしっかりしていれば、副作用もない。
1日に20分のウォーキングは、いつでもどこでも取り組みる運動だ。昼休みの食後の空いた時間を利用するなどして、毎日取り組めば、運動ガイドラインが推奨する"週に150分の運動"をクリアできる。慣れてきて体力がついてくれば、ウォーキングの時間を延ばすこともできる。
「血糖コントロールの不良は、心臓病や脳卒中のリスクを高めます。ウォーキングなどの運動は、血糖値を正常値に近づけるのに役立つだけでなく、心臓病や脳卒中などのリスクも下げます」と、英レスター大学糖尿病センターのトーマス イエーツ氏は言う。
座ったままの時間を減らすだけでも効果がある
レスター大学の別の研究では、座ったままでいる時間が長い人は、血糖値や腹囲、中性脂肪、コレステロールなど糖尿病と関連の深い値が悪化しやすいことも分かった。「座っている時間を短くする、あるいは中断するだけでも、糖尿病リスクを低減できる」という。
研究グループは、平均年齢33歳の人と、平均年齢64歳の人をそれぞれ対象とした2件の研究のデータを解析した。その結果、若年者から高齢者まで、座っている時間が長いほど、心血管代謝に関わる検査値が悪くなっていた。
「運動ガイドラインでは、週に150分の中強度から高強度の運動をすることが勧められていますが、それを実行するのが難しい場合には、座ったまま過ごす時間をなるべく減らすだけでも、効果を得られます。ほとんどの人にとって、そうした座っている時間が1日で多くを占めています」と、レスター大学糖尿病センターのジョセフ ヘンソン氏は言う。
座ったままの時間を減らし軽い運動をすると血糖が下がる
腎臓病の人でも運動は可能
レスター大学の過去の研究では、運動は腎臓の健康のためにも有用で、慢性腎臓病(CKD)の患者の症状を軽減することが明らかになっている。
これまで慢性腎臓病の患者は、運動をすると腎臓に負担がかかるので、運動が制限されることが多かった。しかし最近の研究では、適度な運動は腎臓の血管を改善し、腎臓への負担を軽減することが分かってきた。
研究チームは、36人のCKDの患者を2つのグループに分け、1つめのグループにはウォーキングやサイクリングなどの有酸素運動を行ってもらい、もう1つのグループには有酸素運動に加えて足を中心とした筋力トレーニングに取り組んでもらった。プログラムは12週間続けられた。
運動プログラムの結果、症状は全体に17%減少し、疲労は10〜16%減少した。有酸素運動だけだと、息切れが40%、かゆみが35%減少したが、筋力トレーニングを追加すると、さらに筋力が41%向上し、筋肉のけいれんやこわばりいった症状も軽減された。
「運動は腎臓の状態を良くし、生活の質にも有意なプラスの影響を与えます。運動は、体力の改善と症状の軽減に加えて、糖尿病の管理や、血圧やコレステロールなどの管理も改善します」と、レスター大学のトム ウィルキンソン氏は言う。
ただし、運動は慢性疾患の病態が安定している人に限り勧められるという。運動を開始するときには医師に相談し、自分の体の状態を知っておくことが大切だ。
An increase of just 2000 steps a day cuts cardiovascular disease risk by 8% in those with a high risk of type 2 diabetes(レスター大学 2013年12月20日)Association between change in daily ambulatory activity and cardiovascular events in people with impaired glucose tolerance (NAVIGATOR trial): a cohort analysis(Lancet 2014年3月22日)
Sitting less and moving about more could be more important than vigorous exercise to reduce your risk of type 2 diabetes(レスター大学 2013年2月28日)
Associations of objectively measured sedentary behaviour and physical activity with markers of cardiometabolic health(Diabetologia 2013年3月1日)
Predictors of the Acute Postprandial Response to Breaking Up Prolonged Sitting(Medicine & Science in Sports & Exercise 2020年6月)
Exercise shown to improve symptoms of patients with chronic kidney disease(レスター大学 2018年8月16日)
Twelve weeks of supervised exercise improves self-reported symptom burden and fatigue in chronic kidney disease: a secondary analysis of the 'ExTra CKD' trial(Clinical Kidney Journal 2018年8月14日)
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