「身体的フレイルの簡易チェックシート」を作成 地域在住高齢者のフレイル予防事業に活用 九州大
2019年10月02日
九州大学が、6つの質問項目に回答するだけでフレイルを迅速に判定できる簡易フレイルチェックシートを作成した。市町村のチェック事業での活用を期待している。
高齢者の半数にフレイル危機 改善が必要
九州大学は「糸島フレイル研究」を展開している。長期の運動および健康情報の提供といった介入研究を行うことで、要介護認定状況をアウトカムとした前向き研究に取り組んでいる。
フレイルとは、年齢を重ねるとともに心や身体の余力が衰え、ストレスに対して抵抗力が弱まっている状態。フレイルは、将来の認知機能低下、認知症発症および要支援・介護認定のリスク因子であることが報告されている。
福岡県篠栗町の高齢者疫学調査では、フレイルの出現率は9%、プレフレイルは44%に上り、約半数に改善の必要性があることが判明した。
日本ではフレイル予防を市区町村の支援事業のひとつとして位置づけ、フレイルの検査とその予防に取り組むことを推奨している。そのため、簡易フレイルチェックシートの開発が課題となっていた。
簡易フレイルチェックシートを開発
フレイルの定義は、「体重減少」「握力低下」「倦怠感」「歩行速度低下」「活動量低下」の5つの判定項目が当てはまること。1?2項目が該当すると「プレフレイル」、3項目以上が該当すると「フレイル」と判定される。
この身体的フレイルの操作的定義は、1週間以上の調査が必要となり、市町村のチェック事業に用いるのは難しいという課題がある。
そこで、研究グループは簡易フレイルチェックシートを作成した。日本の介護予防の領域で広く利用されている既存項目を選んで、身体的フレイルの項目と一致性が高い質問項目を選び、妥当性・信頼性の高いチェックシートにしてある。
5項目・6つの質問項目に回答するだけで、身体的フレイルの操作的定義のもとづくフレイル評価と同等の精度でフレイルを迅速に判定することができる。市町村で今後行われるフレイルチェック介護予防支援事業での活用を期待している。
実証試験では、開発した簡易フレイルチェックシートは、良好な信頼性(再現性)を示し、各項目に対応する客観的な測定値とも相関し、高い構造的妥当性があることが示された。
産官学で高齢者の自立に向けた取り組み
チェック該当項目の数が3つの場合が、日本人の地域在住高齢者におけるフレイルスクリーニングのカットオフ値となることが実証され、身体的フレイル評価の診断精度が良好であることが示された。
「フレイル予防にとどまらず、高齢者の生活機能改善を通して高齢者の自立に向けた取り組みを産官学で取り組む」と、研究グループは述べている。
研究は、九州大学キャンパスライフ・健康支援センターおよび同大学大学院人間環境学府の熊谷秋三教授、陳斯氏らの研究グループによるもの。
この研究は、日本医療研究開発機構(AMED)IoT等活用行動変容研究事業および糸島市‐住友理工‐九州大学の社会連携事業の個別共同研究(住友理工、糸島市)などの支援を受けている。
九州大学キャンパスライフ・健康支援センターDevelopment of a Fried Frailty Phenotype Questionnaire for Use in Screening Community-Dwelling Older Adults(Journal of the American Medical Directors Association 2019年9月12日)
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