自宅や職場でメタボ判定 アディポネクチン値を測定できる簡易キットを開発 徳島大
2019年09月09日
徳島大学病院糖尿病対策センターは、指先採血で得られる微量の血液でアディポネクチン値を測定し、メタボリックシンドロームのリスクを判定する簡易検査キットを開発した。自宅や職場などで自分で採血できるのが特長。徳島県内のフィットネスクラブと組み、運動プログラムとセットにして、企業や団体向けに販売する。
指先採血でアディポネクチンを測定
アディポネクチンは、脂肪細胞が分泌するホルモンで、脂肪を燃焼してインスリンの働きを助けて高血糖を改善する作用がある。最近の研究では、血管を修復したり、脳に作用し、食欲やエネルギー代謝を調節するメカニズムがあることも解明されている。
開発した簡易検査キットは、自分で指先に細い針を刺して微量の血液をろ紙に採取し、検査機関に送付するというもの。アディポネクチンを測定することで、将来にメタボになる可能性を判定する。
「アディポネクチン値を正常に保つよう生活習慣の改善を心がけることで、動脈硬化や2型糖尿病などの生活習慣病のリスクを減らせる」と、徳島大学病院糖尿病対策センターセンター長・特任教授の船木真理特任教授は言う。
キットは、文部科学省地域イノベーション戦略支援プログラムの支援により、徳島文理大学の橋田誠一元教授がシスメックスが行った共同研究の成果をもとに開発した。
徳島大学発ベンチャーであるメカノジェニックが、アディポネクチン検査を担当する。
これまで静脈注射による採血で測定する方法はあったが、開発した技術は、従来より約1,000倍の感度で測定できるようになった。
アディポネクチン低値は危険信号
アディポネクチン値は、食事や運動、仕事などの影響を受けないので、どの時間帯の指先採血でも測定できる。
メタボになっていく過程で、血糖値、コレステロール、中性脂肪の値や血圧の異常などがあらわれる前に、血液中のアディポネクチンの量が減少することが分かっている。
同センターは、約1,400人を10年以上かけて追跡した研究をもとに判定基準を設けた。
アディポネクチン値が、男性で9.9μg/mL未満、女性で9.1μg/mL未満に減少すると、「メタボに向かっており、危険因子の数が増えている」状態にあるという。
また、アディポネクチン値が、男性で6.2μg/mL以下、女性で6.5μg/mL以下であると「すでにメタボか、4?5年以内にメタボになる危険性が高い」と判定される。
アディポネクチン値が低い場合には、適度な運動やバランスの良い食事を心がけるなど、生活習慣の見直しによって内臓脂肪が減少し、改善を期待できる。
アディポネクチンを改善する運動プログラムも開発
センターでは徳島県内でフィットネスクラブを展開するハッピーと提携し、アディポネクチン値を改善する運動プログラムも開発した。
検査キットは1回7,000円、筋トレを中心とした1時間程度の運動指導は週2回のペースで月額1万円を想定しており、セットにして9月から販売を始める。
「アディポネクチンの見える化と、メタボ対策の運動指導プログラムを同時に行うことで、自発的な生活習慣改善を促進できる」と、船木氏は言う。
徳島県民健康栄養調査によると、BMIが20より大きく25未満の適正体重を維持している県民の割合は年々減少し、2016年には54.1%だった。県の男性の51.3%がメタボの該当者か予備群で、2型糖尿病が疑われる人は3.8人に1人に上る。
簡易検査キットを県民のメタボ対策に役立てることも期待している。すでに徳島県上板町の主催による健康指導プログラムに採用されている。
徳島大学病院糖尿病対策センターとくしま健康づくりネット
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