運動+認知機能トレーニング 有酸素運動を可視化するシステムを開発 東北大学と日立の共同ベンチャー
2019年07月11日
有酸素運動ができているかをスマートフォンのアプリでリアルタイムに知らせるシステムを開発したと「NeU」が発表した。NeUは東北大学と日立ハイテクノロジーズが共同で設立したベンチャーだ。
有酸素運動をスマホでコントロール
有酸素運動は、しっかり呼吸をしながら継続的に酸素を体に取り込む運動で、軽度から中程度の強度のウォーキング、ジョギング、サイクリング、リズム運動などがあてはまる。1回に20〜30分行うことが推奨されているが、人によって体力が異なるため、運動強度、種類、時間などを個々に合わせる必要がある。
有酸素運動の効果は、体脂肪の燃焼、呼吸循環器の機能向上などだが、加えて脳の健康にも良い。脳の健康に関しては、有酸素運動により「脳由来神経栄養因子(BDNF)」が脳で盛んに分泌され、脳の神経細胞や、神経細胞に栄養や酸素を送る血管が作られることが、脳科学の研究で明らかになっている。有酸素運動後に認知機能トレーニング(脳トレ)を行うとさらに効果的だと考えられている。
微弱な近赤外光で脳の血流量変化を計測
「XB-01」(重さ:30g、大きさ:80×40×13mm)は、微弱な近赤外光を用いて脳の血流量変化を計測することで、脳の活動状態を可視化する超小型デバイス。NeUの前身である日立ハイテクノロジーズからの技術を発展・改良することで、従来機器から大幅に小型化し、世界最小・最軽量クラスを実現した。
今回開発した「有酸素運動メーター」は、まず「XB-01」を専用のベルトで額にあてて装着し、スマートフォンの専用アプリを操作し、ウォーキング、ジョギング、サイクル運動、ステップ運動など運動モードを選択し、適当と考える時間設定や運動強度設定を行い、運動をするというもの。
前額部の血流量変化から心拍信号を算出し、有酸素運動ができているかをリアルタイムに表示し、音でも知らせる。たとえば、50歳の人が標準心拍が70の弱強度の有酸素運動を選んだ場合には、130〜142の心拍が設定ゾーンとなり、その設定ゾーンであるとき、またそれを超えたときは、それぞれ音で通知する。
脳の活動状態も可視化
終了後は、有酸素運動の結果を表示する。設定時間内での心拍変動を時系列に表示を行うことで、利用者は自分の心拍ペースを把握することができる。
ウォーキングやジョギングの運動モードを選択した場合には、スマートフォンで取得したGPS信号をもとに、移動した軌跡上に心拍変動を色で表示する。
XB-01は血流量の変化を計測するデバイスで、心拍数のモニターだけではなく、脳活動機能も測定できる。微弱な近赤外光を用いて脳の血流量変化を計測することで、脳の活動状態を可視化する。
有酸素運動時の運動負荷の定量化も可能で、この機能を活用し、適度な負荷の有酸素運動と認知機能トレーニングの組み合わせを調整するプログラムも考えられている。
認知機能トレーニング(脳トレ)もサポート
運動の終了後には、BDNFの分泌を増やす効果を狙い、終了後の6時間などに認知機能トレーニング(脳トレ)を推奨する。アプリでは同社のオリジナルニューロフィードバック型脳トレ「Active Brain CLUB」へ誘導し、体と脳の運動をシークエンスで行えるようになっている。
「NeU」は、東北大学加齢医学研究所の川島隆太教室の「認知脳科学知見」と、日立ハイテクノロジーズの「携帯型脳計測技術」を融合して、2017年に設立された。最新の知見と技術を軸に、脳科学の産業応用を目指している。「有酸素運動メーター」の正式販売開始は2019年9月末頃を予定している。
NeU(ニュー)超小型 脳機能計測装置「XB-01」
Active Brain CLUB
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