簡易に測定できる「フレイルチェック」を産官学協働で開始 九州大学など
2018年11月07日
九州大学は、「九州大学ヘルスケアシステムLABO糸島(ふれあいラボ)」で、フレイル(虚弱)を簡易に測定する「フレイルチェック」を開発したと発表した。同大と福岡県糸島市および住友理工との3者による連携協定の枠組みを活用している。
九州大学・糸島市・住友理工の連携協定
「ふれあいラボ」は、九州大学(山本元司・大学院工学研究院教授)と住友理工の共同研究をきっかけとして実現された。両者はこれまで、歩行アシストスーツや床ずれ防止マットレスの開発で、高齢者の介護予防などを目的とした共同研究を進めており、実証実験にあたり、糸島市がフィールドの提供や被験者の紹介などで協力してきた。産官学の3者のもてる資源を生かし、地域の社会課題の解決を目指している。
九州大学健康・運動疫学研究室(熊谷秋三教授)では、生活習慣病および介護予防に関する健康・運動疫学研究を展開中。生活習慣病関連では、同大が中心となって展開されている一般地域住民を対象とした久山町研究に参画し、死亡率、罹患率、認知症、およびメタボリックシンドロームなどをアウトカムとした運動疫学研究を展開している。
フレイル疫学研究をスタート 運動介入の効果を検証
フレイルとは、年齢を重ねるとともに心や身体の余力が衰え、ストレスに対して抵抗力が弱まっている状態のこと。日本ではフレイル予防を市区町村の支援事業のひとつとして位置づけ、フレイルの検査とその予防に取り組むことを推奨している。
フレイルの定義は、「体重減少」「疲労感」「歩行速度低下」「筋力低下」「活動性低下」の5つの判定項目のうち、3つ以上に当てはまること。
「ふれあいラボ」では、2017年から糸島市との共同研究として「糸島フレイル疫学研究(IFS)」をスタートさせた。2018年からは身体的フレイル改善のための運動介入研究を実施している。長期の運動および健康情報の提供といった介入研究を行うことで、要介護認定状況をアウトカムとした前向き研究を展開する予定。
これまでに、高齢者を対象とした身体トレーニングへの生理・心理・社会的適応可能性が報告されているものの、フレイルや身体活動・座位行動、体力そのものが健康寿命の延伸に影響するかどうかについては不明な点が多い。
そこで複数のコホート研究に参画している地域在住高齢者における客観的評価にもとづき、身体活動・座位行動、体力、運動機能、および身体的フレイルの実態評価と介護認定状況についての前向き研究および新規コホートを実施することで、運動介入の効果を検証している。効果的かつ効率的な介護予防システムの構築を目的に、地域でのフレイル予防対策を行うための基盤構築をめざしている。
「フレイルチェックシステム」を開発
職域でも縦断研究を実施、介護予防も
「ふれあいラボ」では、認知症に関しては、日本医療研究開発機構(AMED)の研究助成によって「1万人規模の大規模認知症コホート研究」を展開している。身体活動・座位行動および運動量について調査。
職域でも縦断研究を継続中で、身体活動量・座位行動調査や栄養調査に加え、職業性ストレス、うつ症状、睡眠障害、QOL調査などから、メンタルヘルスやメタボリックシンドロームに関する縦断研究を展開している。身体活動・座位行動の定量化を目的に、3軸加速度センサー内蔵活動量計(活動量計)を用いた疫学研究を行っている。
介護予防関連では、太宰府市および糟屋郡篠栗町在住の65歳以上の地域在住高齢者対象約3,500人に、曝露指標として体力・運動パフォーマンス、活動量計による身体活動・座位行動評価、および身体的フレイルを用いて、転倒、閉じこもり、認知機能、うつ症状、および要介護認定状況や介護費用などをアウトカムとした身体活動疫学研究を展開している。
九州大学ヘルスケアシステムLABO糸島(ふれあいラボ)フレイル研究(九州大学ヘルスケアシステムLABO糸島)
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