高齢者の体力が向上 女性の運動離れは深刻
【体力・運動能力調査】

2018年10月18日
スポーツ庁「体力・運動能力調査」
 スポーツ庁は、2017年度「体力・運動能力調査」の結果を公表した。高齢者の体力が向上している。運動・スポーツの実施頻度が高い人ほど、そのストレス解消効果について実感していることが分かった。
 一方で、10代後半〜40代後半の女性では体力が低下しており、運動・スポーツの習慣をもたない女性ほどその傾向が強いことも示された。
高齢者の体力は過去最高を更新
 スポーツ庁は、2017年度「体力・運動能力調査」の結果を公表した。調査は2017年5〜10月に実施。6〜79歳の男女6万4,648人のデータを得た。

 65〜79歳の運動能力は「握力」「上体起こし」「長座体前屈」「開眼片足立ち」「10m障害物歩行」「6分間歩行」など(各10点満点)で測定。

 体力テストの結果を点数化した合計点は、70歳以上の男性と65歳以上の女性が過去最高を記録した。合計点は75〜79歳の男性が36.28点、女性が36.03点で、いずれも1998年度を6点近く上回った。

 65〜79歳の男女の体力は多くの項目で向上傾向が続いている。高齢者の運動能力の向上が鮮明になった。高齢者の体力は1998年に比べ伸びており、約5歳程度、若い頃と同じ値を示した項目もあった。

 また、男女ともに、ほとんどの年齢で、運動・スポーツの実施頻度が高いほど、体力合計点が高くなっている。
運動・スポーツの実施頻度が高いほど、体力合計点が高い
長く歩ける高齢者ほどADLは向上 生活も充実
 体力テストと同時に、ADL(日常生活活動)テストの質問項目から、日常生活の基本となる歩行について着目し、運動習慣及び生活の充実度との関連性についても調査した。

 「休まないで1時間以上歩ける」と答えた男性で74%程度、女性では60%程度となっており、ほとんど運動しないと回答した人に比べて30ポイント程度高かった。男女とも運動習慣がある群ほど、長く歩くことができる者の割合が上昇する。

 さらに、「休まないで1時間以上歩ける」と答えた群は、「5〜10分程度」と答えた群よりも、生活が充実していると答える者の割合が男性で15ポイント、女性約8ポイント高くなっている。男女とも長く歩くことができる群ほど生活の充実度が高い者の割合が多い。
「休まないでどれくらい歩けますか」への回答別 生活の充実度
30〜40歳代女性の体力が低下 運動離れも進む
 男性の30代後半から40代前半と、女性の30代前半から40代後半では、体力が低下傾向にある。

 とくに35〜39歳の女性は、過去最低だった前回より上昇したものの低迷。週1日以上、運動すると答えた女性は、20歳代〜40歳代でそれぞれ32〜43%と、20年前のデータと比べても10ポイントほど下がっている。
運動・スポーツ実施状況が「週1日以上」と答えた者の割合
 日本の女性は先進国でもっとも痩せ傾向が進んでいる。日本の若年女性にみられる大きな特徴は、運動実施率の低迷と二極化だ。

 女性はスポーツ自体に消極的なわけではなく、仕事、子育てなど、ライフステージにおける制約を受けている。

 運動やスポーツが健康づくりに重要であることは理解しているものの、「仕事や家事が忙しくてスポーツをする時間がとれない」「いざスポーツをするとなると面倒くさい」と思う人も多い。

 加齢により、女性のスポーツに対する価値観にも大きな隔たりが生まれている。若年女性では「食べない」「運動をしない」「痩せている」という志向性が目立ち、結果として年齢が進んでからの肥満や2型糖尿病、骨粗鬆症、寝たきりにつながる骨折につながりかねない。
運動の実施率は40歳代がもっとも低い
 2017年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」によると、週1日以上運動・スポーツを実施する成人の割合は51.5%と半数を超えている。

 運動の実施率は、10歳代から年代が上がるにつれて徐々に下がり、40歳代がもっとも低く、男性が46.4%、女性が37.8%。50歳代から再び上昇するが、男性が45.5%、女性が45.4%と半数未満にとどまる。また、全世代の中で70歳代がもっとも運動の実施率が高く、男女ともに70%を超えている。

 この1年間に運動・スポーツを行った理由は、「健康のため」(75.2%)、「体力増進・維持のため」(50.1%)といったポジティブな理由が目立つ。
「週1日以上」の運動・スポーツを実施している割合
運動・スポーツをしている人ほど「生活が充実」
 多くの人は運動・スポーツのストレス解消効果を感じているが、世代によっては意識と行動に差がみられる。

 20〜79歳の各年代ごとに、運動・スポーツのストレス解消効果について調べたところ、運動・スポーツのストレス解消効果を肯定的に捉えている人の割合は、男女・年代問わず90〜95%に達する。

 運動を実施することで、運動のストレス解消効果を実感できるようになる可能性がある。

 運動・スポーツの実施頻度が「週1日以上」と答えた人では、運動・スポーツのストレス解消効果について「大いに感じる」と答えた割合も上昇する。

 しかし、「週1日以上」の運動をしている割合は、男性の30〜54歳、女性の20〜54歳の年代で50%を下回る。

 また、毎日の生活が「充実している」と答えた人の割合は、日常的に運動している人で高い。日常の運動習慣と生活の充実度が密接に関連していることがうかがえる。

 週1日以上運動・スポーツを実施している群は、週1日未満の群に比べ、毎日の生活が「充実している」と回答している人の割合が男女ともにすべての年代において、10ポイント程度上回っている。
運動・スポーツのストレス解消効果について「大いに感じる」「まあ感じる」と答えた者の割合
達成意欲が高いほど体力がアップ 10歳代の男子と女子
 「なんでも最後までやりとげたい」といった達成意欲の高い10歳代男女は、体力テストの点数も高い傾向があることも明らかになった。

 「何でも最後までやり遂げたいと思うか」の問いに対し、週に3日以上運動する15歳の男子の46.7%、女子は49.9%が「とてもそう思う」と回答した。一方、まったく運動しない男子は23.1%、女子が21.1%と低かった。

 このほか「とてもそう思う」と回答した15歳男女と18歳男子の平均点は、「あまりそう思わない」などと回答した同年齢の平均点より6〜8点高く、達成意欲が高いほど体力テストの点数も高くなる傾向が、顕著に明らかになった。

 また、10歳の男女は入学前に外遊びの回数が多いほど、現在も運動する頻度が高かった。「幼児期の外遊びの習慣の大切さ」が示された。
平成29年度体力・運動調査結果の概要及び報告書について(スポーツ庁 2018年10月8日)
[Terahata]