「グループ運動」は継続するのに効果的
「プラス・テン」で運動促進
2018年06月28日
慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科・スポーツ医学研究センターは、神奈川県藤沢市などと共同で、身近な場所に集まって行う「グループ運動」を促進する「グループで行う運動のすすめ方ガイド」(グループ運動ガイド)を作成した。
運動習慣のない人も無理なく続けられる
「グループ運動ガイド」は、グループ運動を「始める」「続ける」「広げる」の3段階で支援する内容になっている。グループ運動であれば、運動を定期的に行う習慣のない人であっても、無理なく運動を継続できるという。
慶應義塾大学では、藤沢市との連携を強化し、市内の200以上のグループに同ガイドを提供し、支援していくとしている。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動指針」(アクティブガイド)では、18〜64歳の成人は1日60分、65歳以上の高齢者は1日40分、身体を動かすことを推奨している。
同指針では、「プラス・テン」(健康づくりのために、毎日10分多く身体を動かすこと)をメッセージに、アクティブガイドを活用した地域全体のレベルアップをはかっている。
関連情報
「プラス・テン」毎日10分多く身体を動かそう
神奈川県藤沢市では、藤沢市健康増進課、藤沢市保健医療財団、慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科が主体となり、2013年4月より、身体活動促進のための地域介入研究「ふじさわプラス・テン」プロジェクトを展開している。
地域全体に情報を提供し、公開講座などの機会を増やし、身近な場所に主体的・定期的に集まって行う運動「グループ運動」をきっかけとした身体活動の促進を働きかけている。
体を日常的に動かすことで、2型糖尿病、心臓病、脳卒中、がん、ロコモ、うつ、認知症などになるリスクを下げることができる。
特に高齢者では、ロコモティブシンドローム(骨や関節の病気、筋肉の低下によって転倒・骨折をし、自立した生活ができなくなり介護が必要となること)のリスクを下げることができる。
対象となるのは、行政・医療・民間組織に加え、クラブや自治会、サークルなどの地域コミュニティ。
2015年6月までに、健康上特に課題のあった4地区に焦点をあて、体を動かすキャンペーンを特に高齢者向けに行い、成果を得てきた。
現在、藤沢市の自主的に運動するグループの登録制度である「からだ動かし隊」に66団体が登録しており、老人クラブ連合会には124クラブが登録されている。把握できていない運動グループも多数あるという。
グループ運動で身体・社会・精神をバランス良く改善
地域コミュニティの活動目標は、自主的に集まり、体操や運動を週1回以上行うことと、「プラス・テン」を毎日実践することだ。地域全体(ポピュレーション)に多面的な働きかけを行うことを目標としている。
「ふじさわプラス・テン体操」を運動ツールとして制作し、体操のCDやDVDを配布し、個人でも取り組めるように支援した。「プラス・テン」を実施した日を記録できるカレンダーの付いたチャレンジ応援カードも提供した。
グループ運動に参加して運動を行う人は要介護認定リスクが低下し、身体活動の継続、心理的要因や社会関係の改善を通じて、身体的にもメンタル面でも向上するという報告がある。
「ふじさわプラス・テン」プロジェクトで8つの地域コミュニティを調査したところ、グループ運動を1年間継続すると、身体的健康、社会的健康(社会的つながり)、精神的健康(活動的な気持ちや楽しみ)がそれぞれ向上し、バランスの良い改善効果を得られることが分かった。
今後は市全体に拡大 地域コミュニティを活性化
グループ運動を自主的に継続している参加者を対象としたインタビュー調査では、参加理由は、(1)仲間の存在や仲間との関わり、(2)自主活動の公平な運営、(3)運動による健康効果の期待、(4)簡単・気軽にできる運動、(5)運動参加に対する家族のサポートだった。
「ふじさわプラス・テン」の活動は、2014年度厚生労働科学研究、2015年度日本医療研究開発機構委託研究に採択され、「身体活動コミュニティ・ワイド・キャンペーンを通じた認知症予防介入方法の開発」として発展・展開している。
今後は対象範囲を藤沢市全体に拡大し、認知や意図の変化を介して身体活動量が増加するというロジックモデルにもとづき、集団として身体活動促進をはかるという。
個人レベルのグループ運動への参加・継続を促すためには、「ソーシャル・キャピタルの醸成も含めた地域コミュニティへの参加の促進と、より良いソーシャル・サポートの整備が必要」と、慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科では述べている。
プラス10分カラダを動かそう! ふじさわプラス・テン(慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科)ふじさわプラス・テン「グループ運動ガイド」
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