たばこが原因で103万人が病気に
医療費は1.5兆円 受動喫煙では3200億円
2018年01月22日
たばこが原因で103万人が、がんや脳卒中、心筋梗塞などを発症し、受動喫煙を合わせて1兆4,902億円の医療費が必要となっているという推計を、厚生労働省研究班がまとめた。国民医療費の3.7%を占めるという。
たばこが原因で103万人が、がんや脳卒中、心筋梗塞に
たばこが原因で2014年度に103万人が、がんや脳卒中、心筋梗塞などの病気になったことが、厚生労働省研究班がまとめた「受動喫煙防止等のたばこ対策の推進に関する研究」で明らかになった。2005年度の推計と比べると、喫煙率の減少に伴い1,000億円余り減少したが、受動喫煙に関しては、因果関係が判明した心筋梗塞や脳卒中の患者を新たに対象に加えた結果、医療費が倍以上の3,000億円超に膨らんだ。
国立がん研究センターによると、たばこの煙には約5,300種類の化学物質が、そのなかには約70種類の発がん性物質が含まれる。これらの物質は喉、肺などのたばこの煙に直接ふれる場所だけでなく、血液を通じて全身に運ばれ、がんの原因になる。受動喫煙で周囲の人が吸い込む副流煙にも有害物質が含まれている。がん以外にも慢性閉塞性肺疾患(COPD)、虚血性心疾患、脳卒中などの原因になる。
研究班の五十嵐中・東京大特任准教授によると、「受動喫煙・能動喫煙を問わず、たばこ政策を議論する際に最優先されるべきなのは公衆衛生上の課題」だという。「たばこの損失(医療費や生産性損失)」と「たばこの『利得』(たばこ税収など)」とを比較して、「禁煙政策によって得られる関連疾患の罹患減少・死亡減少」を明らかにすることが、医療経済的に正しく議論できるようになる。
そこで研究班は、たばこによる超過医療費について、2010年の医療経済研究機構の「喫煙のコスト推計」の手法を踏襲しつつ、可能な限り最新のデータを活用した推計を行った。
喫煙で必要になった医療費は1兆1,669億円 受動喫煙では3,233億円
それによると、2014年度の超過医療費は能動喫煙由来が1兆1,669億円、受動喫煙由来が3,233億円、合計1兆4,902億円になった。同年度の国民医療費は40兆8,171億円で、喫煙による超過医療費は国民医療費のうち3.7%を占めることが明らかになった。患者数は喫煙が79万人、受動喫煙が24万人だった。
喫煙者では、がんの超過医療費が多く、7,087億円を超えた。心筋梗塞をはじめとする虚血性心疾患の超過医療費は2,001億円を超え、脳卒中などの脳血管疾患の超過医療費は1,953億円を超えた。
受動喫煙では、肺がんによる超過医療費が335億円。虚血性心疾患は955億円、脳血管疾患は1,941億円をそれぞれ超えた。
超過罹患者数は、能動喫煙が原因となった患者数が79.2万人(男性68.8万人・女性10.4万人)、受動喫煙が原因になった患者数が24.2万人(男性9.5万人・女性14.8万人)となった。
報告書では超過生産性損失の推計も行った。超過生産性損失については、(1)超過罹患にともなう入院に起因する生産性損失、(2)勤務中に喫煙のために離席することにともなう生産性損失の2項目に分けて推計した。
生産性損失は入院増加が2,494億円(能動喫煙1,672億円・受動喫煙821億円)、喫煙離席が5,496億円、合計で7,990億円となった。
「今回の調査で、たばこによる『超過経済損失』『期待利得』『健康アウトカム改善効果』の三点を定量化して評価することができた。超過医療費のデータは喫煙対策の根幹をなすデータとなる。新たなデータが得られたことの意義は大きい」と、五十嵐氏は述べている。
喫煙と健康(国立がん研究センター)