座りっぱなしが続く場合は30分ごとに軽い運動を 運動ガイドライン

2016年12月27日
 デスクワークや会議、テレビの視聴など、1日を通じて座りっぱなしの生活をしている人は多い。体を動かさないでいる時間が長いと、2型糖尿病や高血圧、脂質異常症のリスクが高まることが、多くの研究で確かめられている。
 米国糖尿病学会(ADA)は10月に、運動や身体活動についての新しいガイドラインを発表した。
デスクワークの多い人は30分ごとに軽い運動が必要
 ADAの運動ガイドラインでは、2型糖尿病の人は、血糖コントロールを改善するために、1日の中で座ったまま過ごす時間をなるべく減らすべきだとしている。具体的には、「座ったまま過ごす時間が30分以上続く場合は、立ち上がって軽いウォーキングや体操を3分以上行うこと」を推奨している。

 ガイドラインは、ADAが発行する医学誌「Diabetes Care」に、「身体活動・運動と糖尿病:米国糖尿病学会の見解」(Physical Activity/Exercise and Diabetes: A Position Statement of the American Diabetes Association)と題して発表された。

 具体的には、座ったまま過ごす時間が30分以上続いた場合は、次のような軽い運動を3分以上行うことを推奨している。
 簡単な運動やストレッチで十分に効果があるという:
・ 軽いウォーキング
・ 足の上げ下げ(レッグ エクステンション)
・ 手を頭の上に上げてストレッチ(オーバーヘッド アーム ストレッチ)
・ 椅子に座ったまま上半身をひねる運動(デスクチェア スイベル)
・ 立ち上がって胴体をひねる運動
・ 片足に重心をかけてしゃがみ込む運動(サイド ランジ)

 これに加えて、週に150分以上の低強度?高強度の運動や身体活動を行うべきだとアドバイスしている。
有酸素運動と筋力トレーニングの組合せが理想的
 糖尿病を予防・改善するための運動は、1日に30分以上行うのが望ましい。1度に30分を行う必要はなく、細切れの運動の時間を足して30分以上を維持できていれば良いという。

 運動はウォーキングやサイクリング、軽いジョギング、水泳などの有酸素運動と、筋肉に負荷をかけて筋力を鍛える筋力トレーニングの両方を行うことが望ましい。

 さらに、高齢の糖尿病患者に対しては、ストレットとバランス運動を行うことを推奨している。ヨガや太極拳なども、体の柔軟性やバランスを良くする運動として、選択肢のひとつとなる。

 「糖尿病の人や、その予備群にとって、運動や身体活動の時間を過ごして、1日をアクティブに過ごすことが必要です。運動を通じて糖尿病の人は血糖コントロールやインスリン感受性が改善します。続ければ体や心がより良く変わっていくことを実感できます」と、論文著者のシェリ コールバーグ-オークス氏は言う。
糖尿病のタイプ別に推奨 糖尿病予備群も運動は必要
 米国糖尿病学会が、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病など、すべてのタイプの糖尿病患者のために、運動や身体活動の総合的なガイドラインを作成したのは今回がはじめてだ。

 ガイドラインは、米国、カナダ、オーストラリアの180件以上の研究をもとにしており、有酸素運動、筋力トレーニング、ストレッチ、バランス運動などに加えて、日常生活で身体活動を増やすための方法についても解説している。

 1型糖尿病と2型糖尿病について、それぞれ適切な運動のやり方を解説している。2型糖尿病の人にとって、有酸素運動とストレッチ、バランス運動を組み合わせることが、血糖コントロールを改善し、体重減少を促し、心疾患のリスクを減らすのに効果的だ。

 1型糖尿病の人にとっても、有酸素運動と筋力トレーニングを組みわせることで、インスリン感受性を改善し、心臓血管を健康に保ち、筋力を高める効果を得られる。

 妊娠して血糖値が高いと判明した女性や、妊娠糖尿病と診断された女性にとっても、血糖値を下げるインスリンの効果を改善し、血糖値を一定にコントロールすめために、運動をなるべく毎日行うことが勧められる。有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせると効果的であることが確かめられている。

 さらに、糖尿病と診断されるほどではないが、血糖値が高いと判定された糖尿病予備群にとっても、運動は糖尿病の発症を予防したり遅らせるために必要だ。ガイドラインでは生活スタイルに運動を取り入れるメリットについて解説している。
低血糖に備えて運動の前に準備を
 血糖降下薬やインスリンを使用している患者では、運動によって血糖値が下がり過ぎる低血糖を招くおそれがあるので、低血糖を起こさないように工夫して運動をすることが必要となる。

 「空腹感が強まる」「冷や汗が出る」「手や指が震える」などの低血糖の症状が現れたときに備えて、事前にブドウ糖や砂糖を含む食品を用意すると安全に運動ができる。

 また、糖尿病合併症を発症している患者にとっては、運動を始める前に医師によるチェックが必要だが、ウォーキングなどの低?中強度の運動であれば、多くの場合で安全に行えるという。ガイドラインでは、運動を安全に行うために、臨床医がチェックすべき項目について解説している。

American Diabetes Association Issues New Recommendations on Physical Activity and Exercise for People with Diabetes(米国糖尿病学会 2016年10月25日)
Physical Activity/Exercise and Diabetes: A Position Statement of the American Diabetes Association(Diabetes Care 2016年10月25日)
(Terahata)