運動は「誰かといっしょ」だと効果的 日常生活動作のリスクを低下

2016年12月02日
 中高年が「日常生活動作」(ADL)の能力を保つために、運動やスポーツ、趣味が役立つ。そして運動は、誰かと一緒にやると効果はいっそう高まる――そんな研究結果を、筑波大学の研究グループが発表した。
運動が5年後の日常生活動作に影響
全国調査のビッグデータを分析
 筑波大学体育系武田文教授らの研究グループは、厚生労働省が全国で実施した「中高年者縦断調査」のデータを用いて、50~59歳の中年者の余暇活動や社会活動が5年後の日常生活動作に及ぼす影響を分析した。

 趣味や他人といっしょの運動・スポーツといった活動が、中年者のメンタルヘルスの保持に有効であることは、厚生労働省の「中高年者縦断調査」で確かめられていたが、身体機能についての研究は少なく、今回はじめて検証された。

 「日常生活活動」(ADL)は「歩く」「服を着る」といった日常生活で必要な基本的な動作を示し、将来に介護が必要になるかどうかを示す指標になる。

 スポーツ庁の調査では、週3~4日以上の運動を実施している高齢者は、そうでない高齢者に比べ、ADLの能力が高いことが示されている。

運動・スポーツ、趣味が日常生活活動の保持に効果的
 研究では、「中高年者縦断調査 第1回(2005年)」から、50~59歳の回答者2万9,181人のうち、「第6回(2010年)」の調査でも回答した2万2,770人のデータを分析。

 中高年者縦断調査では、「歩く」「ベッドや床から起き上がる」「いすに座ったり立ち上がったりする」「衣服を着たり脱いだりする」「手や顔を洗う」「食事をする」「排せつ」「入浴をする」「階段の上り下り」「買い物したものの持ち運び」の10項目で、日常生活動作を検証している。

 分析した結果、男女とも、日常生活動作の能力を保つのに効果的なのは、「運動・スポーツ」で、5年後の日常生活動作に支障が生じるリスクが男性で30%、女性で21%低下していた。「趣味・教養」も効果的で、男性で9%、女性で20%のリスク低下が確かめられた。

 一方で「子育て支援」や「高齢者支援」といった社会活動は、日常生活動作の保持には効果的でない傾向も示された。
他者の存在はやはり大切
 日常生活動作のリスク低下の効果は、男女とも他者と実施する場合で得られやすいことも分かった。運動・スポーツを「他者と実施」している場合は、男性で32%、女性で26%、リスクがそれぞれリスクが低下し、「1人で実施」している場合よりも効果が高かった。

 つまり、中年者が身体機能を良好に保つためには、運動・スポーツは有効で、他人と一緒に実施するとより効果が高いことが分かった。

 高齢期に入る前の中年者の心身両面の健康を良好に保ち、健康寿命を延ばすために、地域などで、仲間といっしょに運動・スポーツを実践できるプログラムを開発したり環境を整備することの必要性があらためて示されたといえる。

 研究は米国のオープンアクセス科学誌「PLOS ONE」に発表された。

筑波大学体育系
The Impact of Leisure and Social Activities on Activities of Daily Living of Middle-Aged Adults: Evidence from a National Longitudinal Survey in Japan(PLOS ONE 2016年10月27日)
(Terahata)