働く女性の更年期 寝る前の10分間の「ヨガ」が症状と抑うつを改善

2016年09月07日
 働く女性を対象に行った研究で、寝る前に毎日10分間、ヨガを取り入れたストレッチを3週間行うことで、「更年期症状」と「抑うつ」を改善できることが世界ではじめて科学的に実証された。
10分間のヨガで更年期症状が改善 3週間で効果
 45~55歳くらいの更年期に、顔がほてる、眠れない、疲れやすいといった「更年期症状」を経験する女性は多い。更年期女性の4人に1人がうつ状態になるという調査もある。

 更年期症状を改善する方法の1つにホルモン補充療法がある。閉経前後に体の中で不足していく女性ホルモンを補う方法で、飲み薬や貼り薬、塗り薬が使われている。しかし、副作用を心配する女性も多く、日常生活の中で取り組める対策を求める声は多い。

 そんな中、明治安田厚生事業団体力医学研究所の甲斐裕子氏らが、寝る前に毎日10分間、ヨガを取り入れたストレッチを3週間行うと「更年期症状」と「抑うつ」が改善できることを、世界ではじめて科学的に実証した。詳細は、医学誌「Menopause」に発表された。

 ジョギングやエアロビクスなど、中程度以上の強度の運動を行うと「更年期症状」と「抑うつ」が改善するという報告がある。しかし、すでに顔のほてり(ホットフラッシュ)がある女性では、激しい運動を行うとホットフラッシュが出やすくなる可能性がある。

 また、更年期女性の多くは仕事や家事に忙しく、運動のための時間が取りづらいという問題もあった。

 しかし強度の低いストレッチであれば、ホットフラッシュが出にくく、夜寝る前に布団の上などで簡単に行なうことができ、忙しくても手軽に実行できる。
ヨガは仕事で忙しい女性でも気軽に取り組める
 研究チームは、何らかの更年期症状のある働く女性(平均年齢51歳)40人に協力してもらい、寝る前に10分間、ヨガの動きを取り入れたストレッチを3週間継続するストレッチ群と、ヨガを行わない比較群に分け、3週間後に両グループの症状の変化を調べた。症状の検査は、医療機関でよく使われる自己申告による「簡易更年期指数」と「抑うつ度指数」を用いた。

 行なったヨガのポーズは、「英雄のポーズ」「鶴のポーズ」「子どものポーズ」「バッタのポーズ」「全身の伸び」「死者のポーズ」の6つだ。この6つを組み合わせて全身をリラックスさせた。
 その結果、ストレッチ群では3週間後に更年期症状と抑うつ度が正常レベルまで改善した。一方、比較群では両方の数値とも変化はみられなかった。

 更年期症状は、女性ホルモン(エストロゲン)の減少によって自律神経のバランスが乱れることで生じる。「ヨガが交感神経の働きを抑え、副交感神経を活性化し、自律神経のバランスを回復させた」と、研究グループで推測している。

 さらに過去の研究で、寝る前のストレッチで寝つきが良くなることが分かっており、更年期女性の心身の健康づくりに役立つという。

 「更年期症状の緩和策として、さまざまな民間療法があるが、科学的根拠がしっかりあるものは少ないのが現実です。更年期症状の対応策として、ストレッチやヨガの効果を科学的に実証できた意義は大きい」と、甲斐氏らは今回の結果を評価している。

 さらに仕事で忙しい女性を対象としたことにふれ、「ストレッチ群は平均で1週間に5.4日はストレッチを行っていました。寝る前のストレッチは忙しい女性でも実施しやすく、働く女性の具体的な健康支援策になる可能性があります」と期待を寄せた。

明治安田厚生事業団体力医学研究所
Effects of stretching on menopausal and depressive symptoms in middle-aged women: A randomized controlled trial(Menopause 2016年)
(Terahata)