ウォーキングはジョギングより効果的 糖尿病予防の運動は難しくない
2016年07月20日
ウォーキングを無理なく続けることが、ジョギングなどの激しい運動をするよりも、糖尿病を予防するために効果的であることが、米国のデューク大学医療センターの研究で明らかになった。この研究は、欧州糖尿病学会(EASD)が発行する医学誌「ダイアベトロジア」に発表された。
毎日のウォーキングには多くのメリットがある
糖尿病の大半を占める2型糖尿病は、運動や食事との関係が深いため、治療の中心は運動療法や食事療法などの生活改善になる。過去1~2ヵ月の平均的な血糖の状態を表すHbA1cが7%を超えている場合は、合併症を予防するために、まずHbA1c7%以内にコントロールするのが目標になる。
運動をするとブドウ糖がすぐ消費され血糖値が下がる。それに加え、運動習慣を身に付けると、血中のブドウ糖の量をコントロールするインスリンが効きやすい体質に変わっていく。さらに、運動には「体重が減る」「血圧が下がる」「中性脂肪が減る」「筋力や心肺機能が向上する」など、さまざまなメリットがある。
糖尿病に打ち克つために、ジョギングなどの激しい運動をいきなり始める必要はない。週に12km、つまり1日およそ2kmのやや活発なウォーキングをはじめるだけでも、続けていれば体は変わっていく。2kmは駅ひとつ分の距離だ。それくらいのウォーキングであれば、毎日続けるのは苦ではないはずだ。
「生活スタイルを改善してより活発に運動することが、糖尿病を改善するために効果的であることは、これまでの研究で明らかにされています。しかし、患者に行動変容を求め、1つのことを始めるのが難しいのに、3つのことを同時に行うのはもっと難しいことを医療者の多くが知っています」と、デューク大学医療センターのウィリアム クラウス教授は言う。
「生活にウォーキングなどのシンプルな運動を加えるだけで、糖尿病を改善できるようにするのが望ましいのです。糖尿病のリスクの高い人にとって、エネルギー代謝を改善するために、運動の強度をどれくらいに調整すると効果的なのかを知る必要があります」と、クラウス教授は指摘する。
ウォーキングと、脂肪とカロリーを抑える食事療法がもっとも効果的
研究には、空腹時血糖値が95~125mg/dLと高く、糖尿病を発症する危険性が高い「糖尿病前症」と判定された45~75歳の男女150人が参加した。研究チームは参加者4つのグループに無作為に分けて、運動を6ヵ月間取り組んでもらった。
1つめのグループは、6ヵ月かけて7%の体重減少を目指す「糖尿病予防プログラム」(DPP)に取り組んでもらった。DPPは糖尿病を改善するためのゴールドスタンダードとされている。週に12kmのやや活発なウォーキングと、脂肪とカロリーを抑える食事療法を6ヵ月続けてもらった。
2つめのグループには速いペースのウォーキングを週に12km、3つめのグループには速いペースのウォーキングを週に18.4km、4つめのグループにはジョギングを週に12km行ってもらった。
研究チームは、参加者にブドウ糖負荷試験を行い血糖値を測定した。その結果、12kmの活発なウォーキングを含むDPPが推奨するプログラムを続けたグループが、空腹時血糖値が9%低下し耐糖能が改善しており、もっとも効果的であることが判明した。
ウォーキングのペースを速めて短い時間に集中的に運動したグループは空腹時血糖値が5%改善し、ウォーキングの距離を週に18.4kmに延ばしたグループの改善は7%にとどまった。もっとも効果が少なかったのは、週に12kmのジョギングをしたグループの2%だった。
糖尿病の治療を難しく考える必要はない
Effects of exercise training alone vs a combined exercise and nutritional lifestyle intervention on glucose homeostasis in prediabetic individuals: a randomised controlled trial(欧州糖尿病学会 2016年7月15日)
(Terahata)