健康づくりに向けたインセンティブ提供の取組に係るガイドラインを公表
2016年05月25日
厚生労働省はこのほど、「個人の予防・健康づくりに向けたインセンティブを提供する取組に係るガイドライン」を取りまとめた。健康に無関心な層にインセンティブ(特典)を与えることで、より健康づくりに参加、継続しやすいきっかけや環境を作るのが目的。
健康長寿社会を構築するためには、国民一人ひとりが「自らの健康は自らがつくる」という自発的な意識を持ち、具体的に行動することが必要である。しかしこれまでの調査研究結果では、地域や職場で健康づくりの施策が行われていても、なかなか全体に浸透していない、という問題点が明らかになっている。中には"健康無関心"の層が、健康づくりの対象となる住民の約7割を占めている、という調査結果もある。
そのため、ICT(情報通信技術)を利活用して、楽しくて分かりやすい健康づくりを促していくのと同時に、さまざまなインセンティブ(特典)の提供も個人の自助努力を支援することにつながると考えられている。実際に平成27年6月に閣議決定された「経済財政運営とその改革の基本方針2015」(いわゆる骨太方針)では保健事業におけるインセンティブ改革が打ち出された。また同年7月の日本健康会議で採択された「健康なまち・職場づくり2020」の中でも、インセンティブを提供する取り組みの推進や分かりやすい情報提供が目標として掲げられている。
ガイドラインは、個人への分かりやすい情報提供のポイントや、個人へのインセンティブの評価・提供方法、取り組みを広げるための推進方策などについてまとめられた。インセンティブによって無関心層が健康づくりに参加・継続するきっかけを招いたとしても、本人が健康情報を適正に把握していなければ継続的に問題意識を持ち続けることは難しい。そのため特定健診の結果などを分かりやすく提示し、本人の気付きを促す情報提供のポイントを紹介している。
またインセンティブ提供にあたっては、疾病リスクではなく健康教室への参加や、体重・食事内容の継続的な記録、ウォーキングの実施など予防や健康づくりの取り組みについて重視して評価することが必要だとした。インセンティブの報酬の内容は健康グッズや商品券など魅力的なものにするべきだが、現金給付など金銭的な価値が高すぎる場合は報酬を得ることのみが目的化しやすいため慎重に考えなければならない、と述べている。
一方で実際にインセンティブ提供を行っている保険者などでは、事業への参加がそもそも健康に関心のある層に限られていて無関心層にまで広がっていない、との問題提起がある。そのため普及啓発を進め、口コミの誘発や勤務の日常動線の中に自然な形で健康プログラムを組み入れるなどの具体案も提示。ガイドラインと同時に公表された取り組み事例集でも、静岡県藤枝市や民間の健康保険組合で実施されているポイント制度の取り組み概要や、広く周知させるためのPR方法などについて紹介している。
個人の予防・健康づくりに向けたインセンティブを提供する取組に係るガイドライン(厚生労働省 2016年5月18日)
(yoshioka)