メタボと判定された人の7割がロコモ 下肢を強化するプログラムを開始

2016年04月01日
 神奈川県大磯町は、特定健診でロコモティブシンドローム」(ロコモ)と判定された人を対象に、下肢の運動機能に特化した運動プログラムを実施している。ロコモと判定される割合は、メタボと判定される割合を上回ることが判明した。
下肢の運動機能を高める「おおいそアンチロコモ教室」を開始
 神奈川県大磯町は特定健康診査の結果を使い、生活習慣病などのおそれがある住民に運動を促す重点指導を実施している。

 今年度、東海大学体育学部、東海大学体育学部と医療機器・材料メーカーのアルケアとの産官学連携事業として、町の特定健康診査(集団検診)の場で高齢者の脚力や歩行能力、下肢筋力などを測定する「おおいそアンチロコモ教室」を実施した。

 「ロコモティブシンドローム」(ロコモ)は日本整形外科学会が2007年に提唱した、運動器障害で移動機能が低下し、要介護に陥るリスクが高い状態をさす。

 同教室は町内の施設で1ヵ月に1回、計6回開催。加齢で衰えやすい下肢に特化した運動プログラムに取り組んでもらい、健康寿命を伸ばすことを目的としている。

 このほど参加者の脚力や歩行能力、アルケアが開発した測定器などを用いて下肢筋力などを測定する「ロコミル」を実施し、高齢者のロコモ状態を調査した。

 その結果、参加した513人(男性210人、女性303人、平均年齢66.5歳)の町民のうち、ロコモと判定された人は約6割の301人で、内臓脂肪型肥満に高血圧、高血糖などの症状が重なった「メタボリックシンドローム」(メタボ)と判定された107人を大きく上回った。

 さらに、メタボと判定された人のうち、7割にあたる77人はロコモにも該当した。ロコモと判定された人の4人に1人はメタボにも当てはまるなど、ロコモとメタボの関連性が明らかになった。
予防医学は高齢化対策 サルコペニア予防には運動が効果的
 「大磯町は高齢化率が30%を超えており、日本全体の高齢率25.5%と比べ高齢化が進行している。さらに団塊の世代の人口が多いことから、この先20年にわたり高齢化のさらなる進行は明らかです。町の高齢化対策として予防医学に注力する必要があります」と、町長の中?久雄氏は言う。

 大磯町ではロコモリスクが高いと診断された人を対象に、下肢の運動機能に特化した運動プログラムを1ヵ月に1回、計6回開催している。つま先立ちやスクワット、足踏みなど5種類の運動で下肢を鍛える「いけいけ体操」に参加してもらい、運動機能の向上に向けたサポートを行っている。

 参加者を対象に、初回と最終回に筋力やバランス感覚、骨密度を8項目のテストで測定したところ、「下肢の力は全体的に向上し、良好な結果を得ることができました。加齢性の筋肉減少症(サルコペニア)予防には運動が効果的です。運動を継続し、その成果を手帳の記録し目に見えて分かるようにすると、参加者のモチベーションを非常に高められることも判明しました」と、東海大学体育学部生涯スポーツ学科教授の中村豊氏は言う。

 これまで同教室に任意で参加した住民は健康志向の強い層が多かったため、「自宅に閉じこもりがちな高齢者の参加を促す」のが今後の課題だという。

おおいそアンチロコモ教室(神奈川県大磯町)
(Terahata)