40歳時の運動不足が脳の萎縮につながる 認知症予防のために運動が必要
2016年02月26日
自宅にいるときはソファーに寝そべりテレビを見ながら長時間を過ごし、体を動かさない。そんな生活を続けていると将来に認知症の発症リスクが高まるおそれがある――40歳時に運動不足の生活をおくっている人は、20年後に脳が早く老化するという調査結果が発表された。
40歳時に運動不足だと20年後に脳が萎縮
40歳時に運動能力が低下していると、20年後に脳が早く萎縮する傾向があるという調査結果を、米ボストン大学などの研究チームが発表した。
研究チームは、米国で1970年代から行われている心血管系疾患リスクに関する研究である「フラミンガム子孫研究」に参加した、認知症や心疾患のない平均年齢40歳の男女1,583人の男女を対象に調査した。
参加者にランニングマシンで運動をしてもらうテストを実施し、脳の状態を磁気共鳴断層撮影(MRI)装置で検査した。20年後に再度、同じテストを行って、脳がどれだけ変化したかを調べた。
「最大酸素摂取量」(VO2max)は、運動中に体に取り込まれる酸素の最大量を示し、全身持久力の指標となっている。研究チームは39歳の男女の最大酸素摂取量の平均を、体重あたりで39mL/kg/minと見積もった。
調査の結果、40歳の時点でランニングマシンの運動成績が良くなく、運動能力が低下していた人は、20年後に脳が早く萎縮していることが判明した。
運動能力がもっとも低かったグループでは、もっとも高かったグループに比べ、脳の容量がより減少しており、老化が2年分加速していることが判明した。
さらに心疾患の症状があったり、高血圧の治療薬であるベータ遮断薬を服用している人を除外して解析したところ、運動能力の低かった人では脳の老化が1年分加速していることが分かった。
ウォーキングをするとすぐに息切れする人は要注意
研究チームが2015年に発表した研究では、40歳代に受けた運動テストで、心拍数、拡張期血圧(最低血圧)が大幅に上昇していた、つまり体力のない人たちは、体力のある人たちに比べて、約20年後に大脳の容積が減少することも突き止められた。
今回の研究は、若い頃からの運動の継続が重要であることを裏付ける結果になった。40歳の頃にウォーキングやランニングをするとすぐに息切れするという人は注意が必要だ。
運動をすれば血流が増え、より多くの酸素が脳に運ばれる。過去の研究では、短い時間でもウォーキングなどの運動をすることで、脳の認知機能をコントロールする部位の活動が活発になることが確かめられている。
「加齢に伴い脳が萎縮し、認知機能が低下すると、認知症の発症リスクが高まります。運動を習慣として続けることで、脳の萎縮や認知機能の低下をくいとめられる可能性があります」と、ボストン大学医学部のニコール スパルターノ氏は述べている。
研究は米国神経学会(AAN)が発行する医学誌「Neurology」に発表された。
Couch Potatoes May Have Smaller Brains Later in Life(ボストン大学 2016年2月10日)Midlife exercise blood pressure, heart rate, and fitness relate to brain volume 2 decades later(Neurology 2016年2月10日)
(Terahata)