ウォーキングに更年期障害を緩和する効果 女性のホットフラッシュを改善
女性は50歳ごろに閉経を迎え、閉経を挟んだ約10年間が更年期にあたる。更年期には体と心にさまざまな不調があらわれやすくなる。
そのひとつであるホットフラッシュには、急に顔が赤らんだり、熱くなったり、汗がとまらなくなるといった症状がある。自律神経の調節がうまくいかず、血管の収縮・拡張のコントロールができなくなることが影響している。
こうした症状の要因は主に女性ホルモンの変動・低下だ。女性ホルモンであるエストロゲンの分泌は40歳を境に低下し、それに伴い月経周期が乱れ、やがて閉経を迎える。
エストロゲンは月経周期に影響を与えるほか、脳、関節、筋肉、代謝など全身に作用しているので、分泌が急激に低下するとさまざまな症状があらわれる。
ウォーキングなどの運動を続けることでホットフラッシュを改善できることが、英国のリバプール ジョン ムアーズ大学の研究で明らかになった。
研究には平均年齢51歳の閉経を迎えた女性21人が参加した。研究チームは参加者を無作為に2つのクループに分け、14人にはジムでの運動プログラムを4ヵ月間続けてもらい、残りは対照群として通常通りの生活を続けてもらった。
運動を続けたグループは、トレッドミルによるウォーキングに加え、エアロバイクによる自転車漕ぎ、ボート漕ぎ、上半身と下半身を使うクロストレーニングなどに取り組んだ。
運動の強度は、話しながら続けられ、息が弾み発汗し、血流が増加する程度に調整した。1回30分の運動を週に3回行うことからはじめ、徐々に回数を増やして最終的に週に5回、1回45分に運動量を増やしていった。
その結果、運動に取り組んだ女性は、血圧と脳内血流が低下し、ホットフラッシュが改善したことが明らかになった。
ホットフラッシュは、心筋梗塞や脳卒中などの危険性を高めることが知られている。更年期の血圧は乱高下を繰り返しながら上昇し、やがて高止まりになることが多いが、これにホットフラッシュが関連している。
ホットフラッシュを発症すると、心拍数と血流量が増え動脈硬化が促され、血管内皮細胞がダメージを受けやすくなる。血管内皮細胞は血管の内側にあって、血管を広げる一酸化窒素(NO)をつくりだす。血管内皮がダメージを受けると、NOが減り血管のしなやかさが低下し、血圧が上がりやすくなる。
「運動を続ければ女性のホットフラッシュを量的にも質的にも緩和できることが分かりました。ホットフラッシュの治療には運動を取り入れるべきです」と、リバプール ジョン ムアーズ大学のヘレン ジョーンズ氏は言う。
更年期の女性がウォーキングなどの運動を習慣として続けることで得られるメリットはホットフラッシュの改善効果だけではない。
米国のメイヨークリニックによると、運動を続けることで以下のような治療効果を得られる。
<< 更年期を迎えた女性には運動が必要 >>
運動習慣のある女性だけでなく、これまで運動をしてこなかった女性に対しても、ウォーキングなどの運動はさまざまな恩恵をもたらす。
ウォーキングなどの有酸素運動を週に150分行い、週に2回の筋力トレーニングを行うと効果的だ。夕食後に30分のウォーキングをする習慣を身に付けよう。友人や隣人などいっしょに運動に取り組める仲間を作ると、運動は長続きしやすい。
・ 体重増加を防げる
更年期の女性は、筋肉が減少し内臓脂肪が増加しやすい。運動は筋肉の減少と体重の増加を防ぐ。
・ 心筋梗塞や脳卒中を防げる
運動によって体重を適正にコントロールすると、高血圧が改善し、動脈硬化の進行を抑えられる。心筋梗塞や脳卒中を予防するために効果的だ。
・ 乳がんリスクが低下
運動には体脂肪を減らし、がんの原因になるホルモンを減らしたり、免疫機能を改善する効果がある。運動を続けている女性では乳がんの発症が減少するという調査結果が発表されている。
・ 骨粗しょう症を予防できる
閉経を迎えた女性は、エストロゲンが減少し骨量が減りやすい。運動をすることで骨に刺激が伝わり、量と質が改善し丈夫になる。
・ ストレスを解消できる
更年期には体と心に不調があらわれやすくなるが、運動によってストレスを解消でき、心の健康を保ちやすくなり、睡眠障害の改善にもつながる。運動は人生のどの段階でも良い効果をもたらす。
Exercise eases hot flushes during menopause(国際生理学会 2015年12月15日)
Fitness tips for menopause: Why fitness counts(メイヨークリニック 2013年6月12日)