夕方や夜に脚の不快感がある? 「むずむず脚症候群」が原因かも

2015年11月10日
 「むずむず脚症候群」は、足の異常感覚により、足を動かさずにはいられないといった症状が現れ、不眠の原因にもなる病気だ。適切に治療すれば改善できることが分かっている。
夜眠れないのは「むずむず脚症候群」が原因かもしれない
 「むずむず脚症候群」は、その名の通り脚にむずむずするなど不快な症状があらわれ、脚を動かさずにはいられなくなる病気だ。「レストレスレッグス症候群」とも呼ばれ、つらい症状で夜に眠れなくなることが少なくない。

 脚の不快な感覚は、「かゆい」「ほてる」「痛い」「虫が這う」など患者によってさまざまだ。脚をこすり合わせたり、さする、たたく、足踏みをする、ひどい場合は歩き回るといった「脚を動かす」ことで、症状が軽くなったり消失する。その感覚は脚の表面ではなく、奥のほうに感じやすい。

 昼よりも夕方や夜に起こりやすく、じっとしているときに症状が出やすいのが特徴だ。就寝中に症状が出てきて眠れなくなり、日中に強い眠気に襲われるなど、生活の質が下がることが大きな問題となる。

 日本神経治療学会によると、むずむず脚症候群は日本では人口の約2~4%(25?50人に1人)が発症していると推定されており、加齢に伴い40歳代から増加する。

 発症の詳しい仕組みはまだ解明されていないが、特定の原因がない「一次性」と、病気や薬などが原因となる「二次性」に分類される。原因としては、「ドパミン(体の動きに関係する神経伝達物質)の機能が障害されている」「鉄(ドパミンの働きに欠かせない)が不足している」「体質(遺伝性)」などの問題が関係していることが分かっている。

 診察は問診が中心で、医師が症状の強さや頻度、起こる時間帯などを聞いていく。(1)脚に不快感や違和感があり、じっとしていられず脚を動かしたくなる、(2)じっとしている時に症状があらわれる、または強まる、(3)脚を動かすことで症状が軽くなる、(4)夕方から夜にかけて症状があらわれたり強くなる、という4つの特徴にあてはまると診断される。

 あまり知られていない病気だが、適切な治療を受ければ改善することが多い。気になる症状があるときは、睡眠障害を専門とする医師や神経内科医を受診しよう。

症状が改善しない場合は、医師の診断を受け適切な治療を
 米国のメイヨークリニックの神経学部のマイケル シルバー教授らが約1万8,000人の米国人を対象に行った調査によると、発症初期や軽症の人であれば次のような生活習慣の見直しや工夫を行うことで、症状が改善するという。

・ カフェインを含む飲料やアルコール、たばこは症状を悪化させ、睡眠にも悪影響を及ぼす。とくに夕方以降は、これらを避けるようにする。

・ 適度な運動(ウォーキングやストレッチなど)をする。ただし、就寝前の激しい運動は避けるようにし、運動後は筋肉をマッサージする。

・ 健康的なバランスのとれた食事で、体重を適正にコントロールする。

・ 睡眠障害が起きている場合は、睡眠日記をつけて就寝前後の状態を記録し医師に見せる。

・ 座っているときやじっとしている時には、会話やゲーム、趣味などの自分なりに集中できることを見つけ、症状から注意をそらす工夫をする。

 テネシー大学などが約3,700人の米国人の患者を対象とした調査で、むずむず脚症候を放置しておくと、心臓病や脳卒中、腎臓病の発症率が上昇することが明らかになった。

 研究チームによると、むずむず脚症候群を発症すると睡眠障害を併発することが多く、これが高血圧、糖尿病、心臓病などの発症リスクになっている可能性があるという。

 発症が疑われる場合は、医師の診断を受け、適切な治療を開始することが大切だ。日常生活の工夫で症状が十分改善しない場合、薬物治療によって症状改善を期待できる。

 現在、むずむず脚症候群の症状を和らげる薬はいくつかある。脳内の神経伝達物質であるドパミンを補う働きをする薬(飲み薬と貼り薬がある)や、脳内の痛みを抑える神経の働きを高める薬が治療に使われている。

 むずむず脚症候群の治療は、通常長期にわたる。治療について医師によく相談し、薬を飲みはじめたら薬の飲む量・回数を守り、服薬を勝手に中止しないことが重要だ。

Study ties restless legs syndrome to heart, kidney problems(米国退役軍人省 2015年10月8日)
Restless legs syndrome(メイヨークリニック 2014年12月10日)

(TERA)