がんのリスクがウォーキングで低下 40歳を過ぎたら運動を始めよう

2015年10月19日
 ウォーキングなどの運動を習慣として続けると、身体能力が向上する。男性が40~50歳の頃に運動をはじめると体力が向上し、20~30年後にがんを発症するリスクが低下することが、米国のバーモント大学が1万3,000人以上の男性を対象に行った研究で明らかになった。
体力レベルが高い男性はがんの発症リスクが低い
 ウォーキングなどの運動を続け体力が高まると心筋梗塞や脳卒中を発症するリスクが低くなることが、さまざまな研究で確かめられているが、運動はがん予防の効果も高めることが、米国のバーモント大学のスーザン ラコスキー氏らの研究で明らかになった。

 「40歳を過ぎたらウォーキングなどの運動を習慣として行うべきです」と、ラコスキー氏は強調している。

 研究には、46~50歳(研究開始当時)の1万3,949人の男性が参加した。研究チームは1971~2009年に、参加者に体力測定テストを受けてもらった。トレッドミル(室内ランニグマシーン)で疲れるまで走ってもらい、心肺能力を測定し体力レベルを測った。

 その後、がん検診を毎年受けてもらい、運動習慣や体力との関連を調べた。1999~2009年に200人が肺がんと診断され、181人が大腸がんと診断された。

 体力テストを実施した結果、体力レベルが上位40%の男性は、下位20%の男性に比べ、肺がんの発症リスクが55%低下し、大腸がんの発症リスクが44%低下することが明らかになった。

 また、肺がんや大腸がんなどの診断を受けた男性でも、体力レベルが高いと、がんで死亡するリスクが32%低いことも明らかになった。

 時速8kmの速度でウォーキングを続けていると、体力レベルは向上するという。ウォーキングにランニング、水泳などを加えると、さらに効果的だ。

40歳を過ぎたらウォーキングなどの運動を始めよう
 今回の研究では、40歳を過ぎたら運動を習慣として続け、体力レベルを向上させることが、20年後、30年後の健康に影響することが示唆された。

 女性を対象とした過去の研究でも、運動を続けることで、乳がんや子宮がんの発症リスクが低下することが示されている。

 がんを発症する原因のひとつとして、体内で増える活性酸素によって遺伝子が傷つけられることが考えられている。運動を習慣として続けることで、その活性酸素から体を守る働きが高まることが知られている。

 また、運動をすることで、血糖を下げるインスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」が改善することも、がんの予防につながる。

 さらに、運動によって肥満が解消されると、体の炎症が抑えられ、がん細胞の発生や増殖を抑える免疫機能が高まると考えられている。

 「がんを予防するために、体力を大きく向上させる必要はありませんが、運動は続けなければ効果を得られません。ウォーキングなどの適度な運動を週に合計150分間以上(30分間の運動を週に5日以上)続けるべきです」と、ラコスキー氏は述べている。

Lakoski JAMA Oncology Study Links Mid-life Fitness with Cancer Incidence and Survival(バーモント大学 2015年3月27日)
Midlife Cardiorespiratory Fitness, Incident Cancer, and Survival After Cancer in Men(JAMA Oncology 2015年3月26日)

(TERA)