脳卒中のリハビリ効果を高める"やる気と頑張り"
2015年10月09日
脳卒中などの患者の"やる気や頑張り"といった心の状態によって、リハビリを効果に勧められ運動機能回復につながることが、脳科学的に解明された。「脳卒中などのリハビリでは心理的サポートが重要」と研究者は指摘している。
リハビリでは脳科学や心理学にもとづく心理的サポートが重要
脊髄損傷や脳梗塞の患者のリハビリテーションでは、意欲を高くもつと回復効果が高いことが、臨床の現場では経験的に知られている。逆に、うつ症状を発症するとリハビリに支障が出て、運動機能回復が遅れる傾向がある。
自然科学研究機構・生理学研究所の西村幸男准教授と京都大学、理化学研究所などの研究チームは、"やる気や頑張り"をつかさどる脳の領域が、運動機能をつかさどる領域の活動を活性化し、運動機能の回復を支えることを脳科学的に明らかにした。
研究チームは、"やる気や頑張り"をつかさどる脳の神経核である「側坐核」と運動機能をつかさどる「大脳皮質運動野」との神経活動の因果関係に注目した。
サルを使った実験で、やる気や頑張りを司る脳の神経核である「側坐核」を不活性化させることで、運動機能を司る「大脳皮質運動野」の神経活動がどのように変化するのかを調べた。
脊髄を損傷したサルは、最初は指が動かずエサをうまくつかめなく、何度もくり返すと1ヵ月ほどで器用に食べられるようになった。この間の脳の活動を調べると、手の動きをつかさどる大脳皮質運動野と側坐核が活発に働いていた。
次に、サルに側坐核の働きを抑える薬を注射したところ、運動野の活動が低下して器用に手を動かせなくなった。完全に回復した3ヶ月後に同じ実験をすると、手をうまく使ってエサを食べるようになった。
これらの結果から、脊髄損傷後の運動機能回復の初期では、側坐核による運動野の活性化がリハビリによる手の運動機能回復を支えていることが判明した。
「今回の実験結果から、リハビリテーションにおいては運動機能を回復させることばかりが重要なのではなく、"やる気や頑張り"を支える側坐核の働きが大切であることがわかりました。実際の患者においては、脳科学や心理学などにもとづく心理的サポートが重要であることが分かりました」と、西村准教授は話している。
研究成果は、科学誌「サイエンス」オンライン版に発表された。
(TERA)