肥満の若者は「自分は太っている」と思っていない 保健指導が必要

2015年08月20日
 米国の肥満や過体重の若者の多くは「自分は太っている」という自覚をもてないでいるという調査結果が発表された。「若者の行動変容を引き出すために、自己の体重を客観的にみる習慣を身に付けさせる必要がある」と研究者は指摘している。
"自分は太っている"と認識することが最初のステップ
 肥満や過体重の人が、自分の体重の変化について認識することは、体重コントロールを実行するための最初のステップとなる。

 しかし、肥満や過体重が増えている米国では、自身の体重に対して客観的な認識をもたない若者が増えているという調査結果が発表された。

 「自分で体重をはかり、標準体重であるか、それとも肥満であるか、正確な認識をもつことが、体重コントロールのための行動変容を起こすきっかけになります。"自分は太っている"と認識できる人には、食事や運動などの生活スタイルを見直すチャンスがあります」と、米国のジョージア サザン大学公衆衛生学部のジアン チャン氏は言う。

 しかし実際には、自己の体重管理について、客観的な指標をもとに正確に判定できない若者が増えているという調査結果が示された。米国の若者の肥満の割合は、過去20年間に2倍以上に上昇している。

 「自分の体重がどれくらいであれば標準体重なのか、適切に理解していない肥満や過体重の若者が増えています。そうした若者は、減量を望むことがより少ない傾向があり、食事を改善しようという意欲も薄いと考えられます」と、チャン氏は言う。

肥満や過体重に対する社会的な観念が変化
 研究チームは、米国健康・栄養調査(NHANES)の12~16歳の青年期の若者のデータを解析した。対象となったのは1988~1994年の調査の1,720人と、2007~2012年の調査の2,518人。

 対象者は、両方の調査で「自分の体重について、過体重、痩せ、適正のどれだと思いますか?」という質問を受けた。さらに、体格指数(BMI)スコアを用いて、肥満、過体重、適正体重にカテゴリー分けされた。

 その結果、肥満や過体重の若者のうち「自分は過体重だと思う」と回答した割合は、2007~2012の調査では1988~1994年の調査に比べ29%減少していた。

 「この20年間に若者の肥満は2倍に増えました。それに応じて、肥満や体重に対する社会的な観念も変化している可能性があります」と、チャン氏は指摘する。

 肥満や過体重の若者は、同世代の仲間を基準にして自分の体重について判断しており、客観的な指標であるBMIを気にしなくなっている傾向があるという。

 若者の多くは自己と他者を比較して、同世代の知人が肥満であると、自分が肥満であることを肯定的にとらえるようになる。若者は思春期を経て成長するにつれて、体格が大きく変化することも、この傾向に寄与している可能性がある。

肥満は40歳未満の若者でも問題に
 一方で、メディアや保健関連の産業、医療分野では、若者がほっそりとした体型を維持するのが理想的というイメージを広めている。理想と現実のギャップに挟まれて、過体重と肥満の若者は、自分が過体重であるという事実をますます認めたがらなくなっているという。

 「肥満の若者がやがて中年になり、高齢者になるにつれ、肥満は高血圧や糖尿病などのさまざまな生活習慣病の原因になります。自分の過剰な体重を意識することが、行動変容を引き出すための最初の一歩になります」と、チャン氏は言う。

 若者の自己の体重に対する認識を改め、体重を適切にコントロールするよう行動を変えることは、若者への社会的な圧力と精神的な苦痛をやわらげることにもつながる。

 「肥満に関しては、40歳以上の中高年で問題にされがちですが、もっと若い世代にも関心を向ける必要があります」と、チャン氏はまとめている。

Am I Fat? Many of Today's Adolescents Don't Think So(American Journal of Preventive Medicine 2015年7月14日)

(TERA)