一晩の睡眠不足が体の老化を促進 毎日のウォーキングで睡眠を改善
2015年07月14日
たった一晩の睡眠不足が体の老化を促進することが明らかになった。睡眠を改善するために、ウォーキングなどを毎日行うと効果的だ。
睡眠を十分にとらないと体の老化が進む
質の良い睡眠を十分にとることが、老化を抑え、体を若々しく保つために必要であることが明らかになった。
カリフォルニア大学ロサンゼル校の研究チームによると、たった一晩の睡眠不足が、生物学的老化を促進するという。
この研究はカリフォルニア大学精神神経免疫学センターのジュディス キャロル氏らが、米国睡眠医学会の年次集会で発表したもの。
睡眠の不足や質の低下が続くと、糖尿病、心血管疾患、がん、認知症などの加齢に伴い発症が増える疾患のリスクが上昇することが知られている。
「一般的に一晩に7~8時間の睡眠をとることが勧められています。今回の研究は、生活習慣病の予防・改善に、睡眠を十分にとる必要がある理由を解明したものです」と、キャロル氏は言う。
たった一晩の睡眠不足で細胞がダメージを受ける
研究チームは、61~86歳の男女29人を対象に実験を行った。研究施設に4夜滞在してもらい、まず1日目、2日目は環境に慣れてもらうために通常の睡眠をとってもらった。そして、3日目は睡眠時間を午前3時~7時の4時間に制限し、4日目はまた通常の睡眠に戻した。
実験期間中は毎朝、参加者の血液を採取し、末梢血単核細胞(PBMC)を調べた。PBMCを献体とする検査で、生きた状態の細胞を調べることができる。
その結果、一晩の睡眠不足によって、細胞の老化が促されることが判明した。細胞が分裂し新たな細胞を産生するまでを示す細胞サイクルが阻害され、細胞の損傷が増えることが明らかになった。
また、PBMCは感染症を引き起こすウィルスを排除する免疫機能の中核を担っている。PBMCがダメージを受けることで病気にもかかりやすくなるとう。
過去の研究では、睡眠不足により、皮膚の細胞の染色体が不均等になり、肌の弾力性が失われることが確かめられている。
「人は誰もが老いますが、たった一晩の睡眠不足が細胞のダメージを引き起こし、老化スピードが加速するのに加え、病気にかかりやすくなることが生物学的に確かめられました」と、キャロル氏は言う。
睡眠の量と質を改善するために運動が必要
ウォーキングを毎日行い睡眠を改善 運動不足はリスク
ヒトの体には、「概日リズム」(サーカディアンリズム)と呼ばれる、ほぼ24時間のリズムで体内の環境を調整する機能が備わっている。体内時計の周期と24時間の周期との間のずれを修正できない状態が続くと、望ましい時刻に入眠し、覚醒することができなくなる。
運動や身体活動を毎日行うと、概日リズムが調整されやすくなり、夜の決まった時刻に自然に眠れるようになるという。
「交感神経が活発に働いている時間である夕方、特に夕食後に運動をすると、心拍数の増加と筋肉の血流量の増加により、体脂肪の燃焼率が活発になり効果的です。食後の血糖値の上昇も抑えられます」と、グランドナー氏は言う。
ウォーキング以外にも、サイクリングやランニング、筋力トレーニング、エアロビクス、ガーデニング、ヨガ、ピラティス、ゴルフなどの運動も効果があるという。
ただし、家事や育児に関連した身体活動が多過ぎると、睡眠不足のリスクが上昇することも分かった。仕事や家事で毎日が多忙で手一杯であると、概日リズムが乱れやすくなる可能性がある。
「ウォーキングを毎日行うだけでも、睡眠の量と質を改善できます。さらにランニングやヨガなどの目的のある運動を組み合わせると、より効果的であることが分かりました。逆に運動不足は睡眠の質を下げる要因になります。運動習慣をもたない人は、いますぐ運動をはじめるべきです」と、グランドナー氏はアドバイスしている。
Partial sleep deprivation linked to biological aging in older adults(米国睡眠医学会2015年6月10日)Yoga, Running, Weight Lifting, and Gardening: Penn Study Maps the Types of Physical Activity Associated with Better Sleep Habits(ペンシルベニア大学 2015年6月4日)
(TERA)