運動が女性の乳がんリスクを低下 がん細胞を抑えるホルモンが活発に

2015年06月25日
 女性の乳がんリスクは、運動をすることで低減できることが、418万人の女性を対象とした調査で確かめられた。ウォーキングなどの運動を習慣化することで、がん細胞が増えるのを抑えるホルモンを増やせるという研究も発表された。
週4~7時間の運動で乳がんリスクを31%低下
 フランスのリヨンに拠点がある国際予防研究所の研究チームは、1987~2014年に発表された計418万人の女性を対象とする38件の研究を解析した。

 期間中に約11万6,000人が乳がんを発症した。この研究は、シカゴで5月に開催された米国臨床腫瘍学会の年次集会で発表された。

 解析した結果、1週間の運動時間がもっとも多い群では、もっとも少ない群に比べて乳がんリスクが11~20%低下することが明らかになった。

 「運動をする習慣のない女性でも、週4~7時間の活発な運動をはじめれば、乳がんリスクを31%低減することができます」と、国際予防研究所のセシール ピゾット氏は言う。

 「運動を行うことで脂肪細胞が減少し、乳がんを進行させる女性ホルモンであるエストロゲンの産生も減ります」と説明している。

運動ががん細胞を抑えるホルモンの分泌を増やす
 乳がんの治療を受けている女性でも、運動を習慣として行うと、生存率が30~40%向上するという調査結果もある。

 「運動によって筋肉の活動が活発化すると分泌されるホルモンが、乳がんに対し予防的に働いている可能性があります」と、米国のニューメキシコ大学の研究チームは説明している。

 ギリシャ神話の伝令の女神イリスにちなんで名付けられたホルモン「イリシン」(irisin)は、脂肪組織に働きかけ、貯蔵された脂肪をエネルギーとして燃焼するのを促すと考えられている。

 ストロゲンが乳がん細胞の中にあるエストロゲン受容体と結びつき、がん細胞の増殖を促す。イリシンには、このがん細胞をアポトーシス(プログラム細胞死)へと導く作用をするという。

 イリシンをがん細胞に投与する実験を行ったところ、イリシンを投与されたが細胞では投与されなかったがん細胞に比べて、アポトーシスの量が22倍に増加することを確認した。

ウォーキングなどの軽い運動でも効果を得られる
 イリシンの分泌量を増やすには有酸素運動よりも筋力トレーニングが効果的だという。マウスを使った実験では、筋力トレーニングによってイリシンの分泌量が2倍に増えることが分かった。

 「乳がんを予防するために、ウォーキングなど軽い運動で良いので、運動を習慣として開始することをお勧めします」と、ニューメキシコ大学のニック ギャノン氏は言う。

 「がんのリスク要因の多くは遺伝子的なものではなく、生活習慣などの後天的なものです。運動をすることで、イリシン以外にも、体重の減少、体の免疫機能の向上、炎症の軽減など、さまざまな効果を得られます」とアドバイスしている。

Physical activity and breast cancer risk(国際予防研究所 2015年6月11日)
Exercise hormone may factor in breast cancer prevention(ニューメキシコ大学 2015年2月25日)

(TERA)