たった2分間のウォーキングで運動不足の悪影響をリセット

2015年05月13日
 デスクワークが多く、運動不足が続いている人に朗報だ。1時間に2分、立ちあがって歩くことで、座りっぱなしでいることによる健康への悪影響を"リセット"できることが明らかになった。
1時間ごとに2分のウォーキングが寿命を延ばす
 健康寿命を延ばすために必要なことは、「座ったまま過ごす時間」をいかに減らすかということだ。平均的な米国人は、テレビを見る時間も含めて1日に平均7.7時間を「座ったまま過ごしている」という。

 「座っている時間が長いと、肥満や2型糖尿病、心臓病の発症リスクが増えるだけでなく、運動不足によりがんの発症リスクも増えます」と、米ユタ大学医学部のスリニバサン ベドゥ氏は言う。

 運動ガイドラインでは、活発なウォーキングなどの運動を週に150分行うか、水泳や自転車、ランニングなどの強めの運動を75分行うことが勧められている。

 しかし、そうした運動を毎日続けるのは難しいという人は少なくない。そんな人が無理なく運動を続けられるようにするため、ベドゥ氏らは「健康増進の効果のある運動の最小量はどれくらいか」という研究を行っている。

 研究チームは、全米健康栄養調査(NHANES)に参加した3,626人を対象に調査した。参加者のうち383人は慢性腎臓病(CKD)と診断された。運動の量と強度を測る機器を装着してもらい、軽いウォーキングなどの運動の頻度と、体を動かさないでいる時間を計測した。

 その結果、長時間座り過ぎていることで生じる健康リスクを打ち消すために、ウォーキングや掃除、ガーデニングなどの軽い運動を短時間行うと効果的であることが判明した。

 1時間あたり2分間、座っている時間を軽い運動に置き換えると、心筋梗塞や脳卒中の死亡リスクが33%低下し、寿命が延びるという。

 「たった2分間、体を動かすだけでも、1日の時間を合計すると運動量は相当なものになります。毎日の生活で活動している時間は16時間で、毎時間に2分のウォーキングなどの身体活動をすると、週に400kcalを多く消費することになります」と、ベドゥ氏は言う。

 特に慢性腎臓病のリスクが高く、1日を通して体を動かす時間が少ない運動不足の人で、この運動法のメリットは大きいという。

テレビの視聴時間が2時間延びると肥満リスクは25%上昇
 「もちろん1日にまとまった時間をとって運動をできれば、それに勝ることはありません。しかし、1時間に2分のウォーキングでも効果があることが分かったのは朗報です」と、ベドゥ氏は言う。

 米ペニントン生物医学研究センターの研究によると、「座ったまま過ごす時間」や「テレビを見ている時間」が長いことは健康上のダメージになるという。

 座ったまま過ごす時間を1日3時間未満に抑えれば、平均寿命を2.00年も延ばせ、また、テレビを見る時間を1日2時間未満に抑えれば、平均寿命を1.38年延ばせる可能性がある。

 また、ハーバード大学の調査では、テレビの視聴時間が2時間延びると、肥満になるリスクが25%上昇し、2型糖尿病を発症するリスクが15%上昇することが分かった。しかし、テレビを見る時間を30分削り、その時間にウォーキングをすると、肥満や糖尿病のリスクが減少するという。

 「少しの時間でも体を動かすようにし、余裕があれば勤め先や自宅の周りを歩いたり、カジュアルな運動をするべきです。くれぐれも冷蔵庫に歩いていき軽食をつまむといったことのないようにしましょう」と、研究者は付け加えている。

Walking an Extra Two Minutes Each Hour May Offset Hazards of Sitting Too Long(ユタ大学 2015年4月30日)
Light-Intensity Physical Activities and Mortality in the United States General Population and CKD Subpopulation(Clinical Journal of the American Society of Nephrology 2015年4月)

(TERA)