運動が強度はどれくらいが効果的か? 脈拍測定をしながら運動

2015年04月28日
 運動療法は、食事療法とともに車の両輪にたとえられ、糖尿病の基本治療として重要視されています。しかし、「どれくらいの強度の運動を、どれだけ行うと効果的なのか」という疑問をもつ人は少なくありません。運動の効果を高める方法があります。
せっかくなら効果の高い運動をしたい
 『糖尿病の運動療法 情報ファイル』では、そうした疑問に応えるために、慶應義塾大学スポーツ医学研究センターの勝川史憲先生に監修いただき、40〜70歳の男性5人に協力してもらい、実証実験を行いました。
運動の効果
 2型糖尿病や肥満などを改善するための運動療法の中心となるのは、適度な強度で行うウォーキングなどの有酸素運動です。ウォーキングで特に意識したいのが「脈拍数」。快適で効果的なペースで歩くための目安になります。

 ウォーキングを続けている方や、これからはじめるという方は、「せっかくなら効果の高い運動を実践したい」と考えるのでないでしょうか。「1分間あたりの脈拍数をはかること」で、効果的な運動の強度の基準を求めることができます。

 最大酸素摂取量の50%前後の運動が、運動療法として効果的とされています。運動時に脈拍数を測定すれば、運動の適切な強度を測定できます。

 運動をする患者さんの「楽である」または「ややきつい」といった体感が目安となりますが、この体感は人によって異なり、その日の体調によっても変わっていきます。

 心臓が血液を送り出す速さは運動の強さによって変化します。人にはそれぞれ適切な運動強度があり、それを知る目安になるのが脈拍数です。もっとも脂肪燃焼の効率がよい心拍数(目標心拍数)は「カルボーネン法」で割り出せます。計算式は以下の通りです。

目標心拍数=運動強度×(最大心拍数−安静時心拍数)+安静時心拍数
最大心拍数=220−自分の年齢
(心拍数と脈拍数はほぼ同じです)

 歩くことで上昇した心拍数が目標心拍数に近く、なおかつ越えない程度であれば、自分にあったペースでウォーキングができていることになります。

 脈拍数は、手首に指を当てて、1分間の脈拍を数えれば分かりますが、最近では、手首に巻くだけで手軽に脈拍数を持続して測れる便利な脈拍計も開発されています。

脈拍数の上がり方は日や体調によって変わる
◆ 50歳の「たけさん」の運動時の脈拍数の最適値
 たけさんの最大心拍数は「220−50=170」、安静時心拍数は78です。通常のウォーキングでの目標心拍数は「最大心拍数の50%前後」なので、目標心拍数は「(170−78)×0.5+78=124」となります。
 つまり、50歳のたけさんのウォーキングの最適心拍数は124拍であり、この脈拍数を維持できていれば、効果的なウォーキングになるということです。

 一般的には、運動時の脈拍数が、50歳未満では1分間100〜120拍以上、50歳以上では1分間100拍以上であると、効果的な運動になります。

 脈拍数は、運動中に常に変動しています。さらに、脈拍数の変動には個人差があることが、今回の試験で確かめられました。運動を習慣として続けている人がウォーキングをすると、脈拍は上昇しにくいことが分かりました。

 同じ運動でも体力がつけば脈拍数は上がりにくくなります。習慣的に運動を続ければ、一度により長い時間の運動を行えるようになります。

 運動はほぼ毎日行うのが理想的ですが、運動の種類や時間帯、年齢、体調によって、脈拍数の上がり方に差が出てきます。「継続は力なり」です。できることから運動をはじめてみましょう。

詳しくは『糖尿病の運動療法 情報ファイル』をご覧ください。

(TERA)